経営・戦略

2026.03.06 11:21

スケールを妨げずに支えるコンプライアンスのつくり方

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私はフィンテックの現場で、コンプライアンスがゴールのテープのように扱われるケースをしばしば目にしてきた。テープを切ったら、あとは置き去りにできるという発想だ。今なお多くの企業が、ライセンスを取得し、コンプライアンス担当者のチームを雇い、適切な監査を通過すれば、それで終わりだと考えている。

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しかし、適切な規制下で事業を実際にスケールさせたことがある人なら、それが都合のよい話ではないと知っているはずだ。ライセンス取得は数あるステップの1つにすぎず、むしろ容易な部類とさえ言える。本当の課題は社内にある。規制要件は日々の業務と整合させる必要があり、会社の動きを鈍らせることなく「デフォルト」で組織に組み込まれなければならない。

多くのフィンテック企業がつまずくのは、コンプライアンスをプロダクト開発や商業面から切り離された独立機能として、最初から別建てで構築してしまうからだ。そうなると、コンプライアンスは本来きちんと設計していれば避けられたはずのボトルネックになってしまう。

一方で、思慮深く設計されていれば、コンプライアンスは事業成長の強力な推進力になり得る。本稿で論じたいのは、その点である。

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コンプライアンスが本当に時間を失う場所

私自身の経験から言えば、実務におけるコンプライアンスの非効率は、ほとんどの場合、同じ原因から生じる。

第一に、手作業によるチェックである。システムがファイルを適切に読み取れない、あるいは本人確認のルールが硬直的すぎて顧客データの単純な表記ゆれに対応できないと、すべてが手動レビューの待ち行列で滞留する。コンプライアンス担当者は、本来なら自動承認されるべき書類のPDFやスクリーンショットを、1日の大半を費やして確認することになる。

非効率のもう1つの大きな要因は、誤検知(フォルス・ポジティブ)だ。質の悪い自動化は、まったく自動化がないのと同じくらいリソースを圧迫し得る。システムがあらゆるものを「疑わしい」とフラグ付けしてしまえば、結局、担当者は再び手作業での確認に追われる。この状況では、自動化はコンプライアンスチームを支援するどころか、努力を積極的に損なってしまう。

第三の重大な問題は、営業チームやプロダクトチームとのコミュニケーションギャップである。あまりにも頻繁に、コンプライアンスが関与するのは最後の最後で、機能がすでに作り込まれた段階だ。その結果、コンプライアンスは論理的な支援ではなく、厄介な障害物のように感じられてしまう。口座のブロックや承認の遅延を経験する営業チームは、それを失われた売上と捉え、コンプライアンス部門を責めがちだ。責められた側は、さらに防御的になっていく。

最終的な結末はどうなるか。成長がじわじわと殺されていく。

では、どう修正すべきか

コンプライアンス担当者に関する、あまり心地よくない真実がある。置かれた文脈を理解していなければ、迅速でありながら公平な判断を下すことを期待できない。だからこそ、コンプライアンス部門には適切な説明が必要であり、会社全体と足並みをそろえる必要がある。

全チームが事業の向かう先を十分に理解し、その文脈で整合していなければならない。そうでなければ、各者が相手の立場を理解しないまま自分のポジションを守ろうとし続け、摩擦は必ず生じる。

公平を期すなら、これは相当な調整であり、当初はスピードも落ちる。この種の移行には忍耐が必要で、法務・技術・商業という異なる「言語」の間を行き来する多くの翻訳も求められる。私の実務上の経験では、リーダーシップ層の誰かが通訳役を担い、これらの世界をつなぐために能動的に動くことが不可欠である。

しかし、その見返りは十分に大きい。意思決定は、コンプライアンスに限らずプロダクトにおいても、より迅速で明快になる。アイデアがブロックされるのではなく、リリース可能な形へと積極的に練り上げられるようになる。

資格だけでなく、スケールを見据えて採用する

コンプライアンスの採用は、伝統的に規制当局での経験など、規制領域のバックグラウンドを強く重視してきた。それは必要である。だが、それだけでは十分ではない。本当に必要なのは、規制に関する専門性、テクノロジーへの抵抗のなさ、そして何よりオペレーション思考のバランスである。

採用する人材は柔軟で、他チームと関わる意思がなければならない。エンジニアと対話できず、基本的なシステムのロジックを理解できないなら、常に手動の統制に頼ることになる。それではスケールしない。時間がたつにつれて人員とコストは増え、効果は低下していく。

同様に、コンプライアンスが営業やプロダクトと同じ言語で話せなければ、意思決定は全社的な事業目標から切り離されたものに感じられるだろう。そうなると、地域をまたいでソリューションを展開することも難しくなる。原因は規制ではなく、社内の整合性の欠如である。

採用で向き合うべき本質的な課題は、そこにある。

自動化は仕事を減らすべきであり、増やすべきではない

自動化の目的は手作業の負荷を減らすことだが、それは思慮深く実装された場合に限る。前述の通り、質の悪い自動化は負担を軽くするどころか、負担を生み、人の専門家を果てしないレビュー工程へと追い込んでしまいがちである。

AIは近ごろ流行語だが、トレンドに乗り遅れまいとして、とにかく統合を急ぐ企業を多く見てきた。しかし彼らはしばしば、そこから実際に何を必要としているのかを十分に考えていない。

ワークフローを自動化する目的は、人を排除することではない。人を解放し、優先順位の順序を適切に組み立て、人の注意をより価値の高い領域へ向けることで、全体の成果を底上げすることにある。コンプライアンスのプロフェッショナルが時間を使うべきは、書類の仕分けではなく、判断とリスク分析である。

コンプライアンスのスケーリングは、採用を慎重に行うだけで成り立つものではない。事業とともにスケールできるシステムを構築することでもある。

成長機能としてのコンプライアンス

最も重要なのは、正しいマインドセットの転換を根付かせることだ。コンプライアンスは「ノー」と言うためにあるのではない。機能する道を見つけるためにある。単純に聞こえるかもしれないが、その変化がもたらす影響は大きい。

コンプライアンスチームがプロダクトを理解すれば、統一された枠組みの一部として意思決定をより的確に支えられる。こうしてコンプライアンスは、多くの人が考えるようなブロッカーではなく、真に持続可能な成長を可能にする推進役へと変わる。

forbes.com 原文

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