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2026.03.06 16:00

トランプ政権に立ち向かうAI企業アンソロピック、信念を貫くダリオ・アモデイCEOと共同創業者たち

アンソロピックのダリオ・アモデイCEO(Photo by Chesnot/Getty Images)

国防総省との対立が、迎合する他のテック系ビリオネアとの違いを際立たせる

Anthropicと国防総省との対立は、同社を連邦政府と真正面から対峙する立場に置いただけでなく、アモデイを他のテック系ビリオネアとは異なる存在として際立たせることにつながった。アモデイがトランプと距離を保ってきたのに対し、多くのテック業界の大物は、ホワイトハウスや英国のウィンザー城でのイベントで、「王に忠誠を誓う」ような行動を取ってきた。9月に開かれた政権の国家AI戦略の発表を祝う夕食会では、トランプとメラニア夫人の両脇にメタのマーク・ザッカーバーグCEO(彼はフロリダ州マールアラーゴでも何度かトランプと会食している)とマイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツが座った。また、黄色と白のバラで飾られたテーブルの向かい側には、グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンとアップルのティム・クックCEOがいた。

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アップルのクックCEOが特注プレートを贈り、アマゾンは約55億円を投じてドキュメンタリー映画を宣伝

同様の事例は、ほかにもある。アップルのクックCEOは、ホワイトハウスの大統領執務室を訪れ、24カラットの金の台座の上に載せた特注のアップル製プレートをトランプに贈った。アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、自身が所有するワシントン・ポスト紙で予定されていた、トランプの対立候補だったカマラ・ハリス元副大統領への支持表明を取りやめさせたと報じられている。また、アマゾン・プライム・ビデオは、メラニア夫人の自己顕示的なプロジェクトであるドキュメンタリー映画『MELANIA』を宣伝するため、3500万ドル(約55億円。1ドル=157円換算)を投じたとも伝えられている。

サム・アルトマンは大統領と同席し、約78.5兆円規模のインフラ構想を発表

かつては民主党の登録有権者だったサム・アルトマンは、数年前に党派登録を外したとみられている。アルトマンはOpenAIのCEOとして、大統領と公の場で何度も同席してきた。その中には、トランプが職務に復帰して最初の丸1日の公務日に、5000億ドル(約78.5兆円)規模のAIインフラ構想「プロジェクト・スターゲート」を発表した場にも姿を見せていたことが含まれる。「AIに関して、この大統領は非常に仕事がしやすい人物だと感じている」とアルトマンは2月、フォーブスに語った。「彼は国内でのインフラ整備の重要性やエネルギーの重要性を理解しており、多くのことを成し遂げてきた」と彼は述べていた(アモデイが国防総省の要求を拒否した翌日の2月27日夜、アルトマンはOpenAIが国防総省と独自の契約を結んだことを発表した)。

「反OpenAI」のような立場で人気を高めつつあるAnthropic

Anthropicと国防総省との対立は、同社とOpenAIの溝を深めることにもなっている。そもそもAnthropicは、AIの安全性をめぐる意見の対立によってOpenAIから分裂する形で生まれた企業だ。ダリオとダニエラ・アモデイは、ジャック・クラーク、サム・マッキャンドリッシュ、クリス・オラー、トム・ブラウン、ジャレッド・カプランとともにOpenAIを離れ、独自のAI企業を立ち上げた。Anthropicは、最近ではスーパーボウルの広告でChatGPTに広告を掲載するOpenAIの方針を皮肉るような内容を打ち出し、間接的にOpenAIを批判したとも受け取られている。2026年2月にインドで開かれたサミットでは、写真撮影の際に他の経営者が手をつないで並ぶ中、ダリオ・アモデイとアルトマンだけが手をつなぐことを拒んだ。

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こうしてAnthropicは、いわば「反OpenAI」のような立場を取り、人気を高めつつある。もっとも、政府との大きな対立が企業にとって好意的な広報効果を生むのは、今回が初めてではない。2016年、アップルはカリフォルニア州サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の犯人が使用していたiPhoneのロック解除をFBIから求められたが、これを拒否した。プライバシー重視の企業として知られていたアップルは、この対応によって「ユーザーの権利を守る企業」というイメージを強め、マーケティングでもその姿勢を前面に打ち出した。ただし、最近のクックCEOは同様の立場を取ってはいない。

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翻訳=上田裕資

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