AI

2026.03.06 16:00

トランプ政権に立ち向かうAI企業アンソロピック、信念を貫くダリオ・アモデイCEOと共同創業者たち

アンソロピックのダリオ・アモデイCEO(Photo by Chesnot/Getty Images)

トランプ批判派からも支持を得て、ClaudeがApp Storeランキングの首位に

Anthropicの姿勢をメディアが大きく取り上げたことは、同社がトランプの批判派から一定の支持を得ることにもつながった。2月28日から3月1日にClaudeは、アップルのApp Storeランキングの首位に立ち、初めてChatGPTを上回った(もっとも、このアプリの人気はスーパーボウルの開催以降や高評価を得たモデルのアップデート以降にすでに高まりつつあった)。

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ポップスターがSNSに好意的な投稿、同社ファンが応援メッセージを歩道に書き込む

ポップスターのケイティ・ペリーは、Claude Proの登録ページの画像にハートマークを描いてXに投稿した。サンフランシスコにあるAnthropicのオフィスの外では、同社のファンが、「YOU DO NOT STAND ALONE(あなたたちは孤立していない)」や「GOD LOVES ANTHROPIC(神はアンソロピックを愛している)」などの応援メッセージを、歩道にチョークで書き込んだ。同社は最近の人気の急上昇に対応するためシステム拡張を進めているが、米国時間3月2日にClaudeで発生したサービス障害については、ユーザー数の急増ではなく技術的な問題が原因だったと広報担当者は説明した。

トランプの目玉法案に反対するロビー活動を展開、AI規制を抑え込む条項を削除させる

Anthropicは、アモデイの姿勢やそれによって生じ得る政治的な影響についてのコメントを控えた。しかし、設立5年の同社の歩みを追ってきた人々にとって、このスタンスはそれほど意外なものではない。

その理由は、Anthropicが政権と衝突するのはこれが初めてではないからだ。アモデイは、後に削除したフェイスブックの投稿で、トランプを「封建時代の軍閥のような存在」と表現し、周囲のユーザーにカマラ・ハリスへの投票を呼びかけたと報じられている。2025年、Anthropicは、トランプの目玉法案「ワン・ビッグ・ビューティフル法」に州レベルのAI関連法を10年間停止してAI規制を抑え込むことを目論む条項が含まれているとして、反対するロビー活動を展開した。その結果、この条項は法案から削除された。

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ホワイトハウスのAI担当責任者、共同創業者のエッセーが「恐怖をあおっている」と主張

Anthropicの共同創業者ジャック・クラークは2025年10月、「テクノロジーへの楽観と適度な恐怖」と題したエッセーを発表した。元テクノロジー記者で、ブルームバーグに2年間在籍した経歴を持つ彼は、AIの未来に希望を抱いているとしながらも、「同時に強い恐れも感じている」と語り、「我々は、自分たちでも完全には理解していない極めて強力なシステムを生み出しつつある」と述べていた。

これを受け、ホワイトハウスのAI担当責任者で、「ペイパル・マフィア」の一員として知られるベンチャーキャピタリストのデービッド・サックスは、Anthropicが「ウォーク」だと述べ、「恐怖をあおっている」と主張した。

妹のダニエラなど共同創業者たちは、政策に関連する社会問題についても発言

Anthropicの共同創業者は、トランプ政権の政策に関連する社会問題についても発言している。ミネソタ州で、看護師アレックス・プレッティが移民当局のエージェントに撃たれて死亡した事件について、ダリオは「恐ろしい出来事だ」と表現していた。Anthropicの社長でダリオの妹でもあるダニエラ・アモデイは、「ここ数日我々が目にしてきた出来事は、アメリカが掲げる価値とは相いれない」とリンクトインの投稿で述べていた。また共同創業者のクリス・オラーも、この出来事は「良心を揺さぶるものだ」と語った(OpenSecretsのデータによれば、ダリオとダニエラはいずれも民主党の登録有権者と見られ、共和党ではなく民主党や無所属の政治候補者に数千ドル(数十万円)を寄付している。ほかの共同創業者3人も民主党の登録有権者と見られる。別の共同創業者1人は米国市民ではない可能性があり、残る1人については記録から確認できなかった)。

看護師が殺害されてから2日後、ダリオはAIのリスクを論じた約2万語のエッセー「テクノロジーの思春期」を公開した。彼は、この中で米国政府を名指しで批判したわけではないが、民主主義国家によるAI技術の乱用の可能性に言及した。「民主主義国家には通常、軍や情報機関が自国民に向けて使われないようにするための安全装置がある。しかしAIツールはごく少人数で運用できるため、こうした安全装置を回避できてしまう可能性がある」。

また、他のテック企業が米国政府を批判することに消極的であることや、AIに対する極端な規制緩和政策を支持していることにも言及した。

「多くのAI政策の課題について真実を語り、実際に誠実さをもって越えてはならない一線を守り抜いてきた」

ジ・インフォメーション(The Information)の報道によると、アモデイは2月27日、従業員宛てのメモの中でトランプとの関係について単刀直入に語ったという。「(国防総省と)トランプ政権が我々を気に入らない本当の理由は、我々がトランプに献金していないことだ(OpenAIやグレッグは多額の献金をしている)」。アモデイは、トランプの大口献金者であるOpenAIのプレジデント、グレッグ・ブロックマンを引き合いに出してそう綴った。「我々はトランプに(サムがしているような)独裁者に対するような称賛を送っていないし、トランプ政権のアジェンダに反するAI規制を支持してきた。我々は(雇用喪失など)多くのAI政策の課題について真実を語ってきたし、実際に誠実さをもって越えてはならない一線を守り抜いてきた」。

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翻訳=上田裕資

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