コスト非対称性が真の脅威
問題の核心は技術力ではなく、経済性と拡張性の高さだ。AP通信は2025年4月、フーシ派が6週間足らずで米軍の無人偵察機MQ-9「リーパー」7機を撃墜し、イエメンでの米軍事作戦に2億ドル(約315億円)超の損害を与えたと報じた。ブライアン・P・フェントン米特殊作戦軍司令官(当時)はこれに先立ち、同年4月の米議会公聴会で「敵は1万ドルの使い捨てドローンを用い、われわれは200万ドルのミサイルでこれを撃墜している。費用対効果の曲線が逆さまだ」と証言している。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国も欧州で同様の勘定に直面している。2025年9月にロシアがドローンでポーランドの領空を侵犯しNATOを挑発した後、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相はこう明言した。「F35戦闘機で空対空ミサイル『サイドワインダー』を使ってドローンを撃墜するのは、非経済的かつ非現実的だ」
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリング研究員は2025年11月、ロシアがイランの技術移転を受けて国内生産しているシャヘド型ドローン「ゲラン」など、安価なドローンが高価な防空ミサイルを配備するほど重要でない標的を攻撃することで、防空状況は複雑化すると指摘した。安価なドローンをおとりにして防空システムを圧倒すれば、数に限りのあるミサイル備蓄を消耗させられる。低コストのドローンの大群が防衛網に突破口を開けば、巡航ミサイルや弾道ミサイルを目標まで確実に到達させることが可能になる。
RUSIが2025年12月に発表した研究論文によれば、ロシアの防空産業には、ウクライナがロシアの軍事・エネルギーインフラに対して展開しているドローン攻撃作戦に対抗できるほど迅速に対空ミサイルを補充する能力はない。ウクライナの代表的なネットメディア、ウクライナ・プラウダは2025年1月、ロシアが国境から1000km以上離れたエラブガにあるドローン工場1つを防衛するため、少なくとも11基の自走式防空システム「パーンツィリS1」を前線から引き離さざるを得なかったと伝えた。
ウクライナ軍の前総司令官バレリー・ザルジニーは2025年11月にウクライナメディアのリガ・ネットへの寄稿で、技術の進歩により、総合的な攻撃能力は増大し続ける一方で、戦争は次第に低コスト化しつつあると記した。
ウクライナの精鋭特殊部隊「アルファ」は、このコスト非対称性を活用して、安価な攻撃ドローンで高価なロシアの防空システムを攻撃し、2025年末までにパーンツィリS1の約半数を破壊した。ウクライナ保安庁は、破壊したロシア防空システムの総額を約40億ドル(約6300億円)と見積もっている。


