何世紀もの間、人間の脳はその秘密を固く隠してきた。現代でも、脳の電気的なささやきを聞き取るには、侵襲的な探針や大がかりな装置が必要になるのが普通である。だが新たな発明は、脳技術の未来が、これまで想像されていたよりも、もっと柔らかく、もっと薄く、はるかに繊細なものになる可能性を示している。
このほど、Nature Electronics(ネイチャー・エレクトロニクス)に掲載された論文で、研究者らは機械というより半透明のパッチのように見える装置を発表した。これは人間の髪の毛よりも薄く、脳の動きに合わせて曲がるほど柔軟で、6万5536個の微小な電極で覆われている。脳の表面にそっと置けば、体内に配線や電池を入れなくても、驚くほど細かく神経活動を聞き取れる。研究者らはこの装置をBISC(bioelectronic interface system to the cortex[大脳皮質への生体電子インターフェースシステム])と名付けた。その狙いは、脳への負担を抑えながら、脳をより深く理解することにある。
脳に刺し込まずに聞く
現在の高性能な脳インターフェースの多くは、脳組織を貫く電極に頼っている。こうした電極は、個々のニューロンから鋭い信号を捉えられる一方で、リスクも伴う。時間の経過とともに、脳が異物の侵入に反応を起こす可能性がある。
これとは反対に、頭蓋骨の外側から脳活動を記録する方法もある。こちらは安全で痛みもないが、信号は弱く不正確だ。フットボール競技場の屋根の上に置いたマイクで会話を追いかけるようなものだ。
この新しい装置は、その中間を狙う。使っているのはelectrocorticography(皮質脳波記録法)と呼ばれる手法で、頭蓋骨の下に置きながらも脳組織そのものには刺し込まず、脳の表面にセンサーを直接載せる。この方法は以前から、貫通型の電極より脳にやさしく、それでいてより明瞭な信号を得られることで知られていた。だが、これまで足りなかったのは規模だった。従来の表面アレイに載るセンサーは数十個から数百個だったのに対し、この新しいチップには6万5千個超が載っている。
センサーの都市地図
この装置の中核は、郵便切手ほどの大きさの小さな正方形のシリコンチップである。その表面には高密度の電極格子が広がり、それぞれの電極は砂粒よりも小さい。これらが一体となって、脳の都市地図のようなものを形づくり、隣り合う領域にまたがって広がる微細な電気パターンを捉える。
このチップはきわめて薄く柔らかいため、脳を覆う保護膜の下に滑り込ませ、湾曲した脳の表面に自然になじませることができる。いったん所定の位置に収まると、脳にこすれ続けるのではなく、脳の動きに合わせて一緒に動く。これは長期的な安定性にとって重要だ。
この装置は、6万5536個すべての電極から同時に記録するわけではない。そうすると、データ量も発熱も大きくなりすぎるためである。代わりに、一度に最大1024個の電極を選び、必要に応じて記録する場所を切り替えられる。研究者らはこれを、大きなカメラセンサーを持ちながら、画像のどの部分を拡大して見るかを選ぶことにたとえている。電力とデータは、体外に装着する小型の中継器と無線でやり取りする。皮膚を貫くケーブルがないため、感染のリスクが下がり、長期使用の現実味も増す。



