欧州

2026.03.06 07:00

「プーチンの毒」は誰に盛られるのか? 毒殺国家ロシアの暗殺法

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2025年12月19日撮影(Sefa Karacan/Anadolu via Getty Images)

先述のナワリヌイの暗殺に関しては、ロシアからひそかに持ち出された生体サンプルを通じて調査した欧州諸国が次のように発表した。「英国、スウェーデン、フランス、ドイツ、オランダは、ナワリヌイが致死性の毒物により毒殺されたと確信している。ナワリヌイは収監中に死亡した。これは、ロシア政府がナワリヌイにこの毒物を投与する手段、動機、機会を有していたことを意味する。ロシアが国際法と化学兵器禁止条約を無視し続けていることは明らかだ。最新の調査結果は、ロシアが化学兵器禁止条約に繰り返し違反していることについて、同国に責任を問う必要性を改めて強調するものだ。われわれはロシアに責任を問い続けるため、あらゆる政策手段を駆使する」。

advertisement

2020年、クレムリンがノビチョクを用いてナワリヌイに対して初めて行った暗殺が未遂に終わったのは、当時のアンゲラ・メルケル独首相がプーチン大統領に直訴し、昏睡状態で死の淵にあったナワリヌイを自らロシアに派遣した特別機でドイツの病院に搬送したからに他ならない。一命を取りとめたナワリヌイは後に独誌シュピーゲルに対し、首都ベルリンのシャリテ大学病院でメルケル首相と面会したことを明かし、感謝の意を表明した。

ドイツでの療養中にもかかわらず、ナワリヌイは暗殺を企てた者たちへの逆襲に出た。ロシア連邦保安庁(FSB)の暗殺班の一員に、偽装したモスクワの電話番号から電話をかけ、事実上の自白を引き出したのだ。その内容は、衣服への化学物質の仕掛け方から、ホテル室内から毒素の痕跡を取り除く方法に至るまで、毒殺計画の詳細な経緯を含んでいた。ナワリヌイの衝撃的な潜入捜査は、映画監督ダニエル・ロアーによって記録された。同監督の映画『ナワリヌイ』は、プーチン大統領の毒にまみれた国家運営の実態を暴き、2023年アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した。

ナワリヌイがロシア北極圏の刑務所での拘禁中に、クレムリンが2度目の暗殺作戦を組織したとする欧州裁判所の判決が出されたことについて、グロスフェルド博士は「暗殺計画の立案と実行を担当した工作員の名を公表し、制裁を科すべきだ」と述べた。他方で同博士は、プーチン大統領に対する訴追はロシアの政権交代次第だと説明する。

advertisement

ナワリヌイの妻であり、現在は亡命中のロシア民主化運動の指導者ユリヤ・ナワリナヤは、動画の中で次のように訴えた。「ロシアの変革のために、私は全力を尽くす。盗賊と殺し屋の支配を終わらせねばならない。アレクセイ(・ナワリヌイ)はこれに生涯をささげた。彼は真実のために戦いながら命を落とした。私は彼の戦いを続けると約束した。真実を明らかにすると約束した。そして私は、プーチンと関与した者全員が責任を問われるよう、あらゆる手段を講じる」

オランダに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は、ウクライナ侵攻を巡る戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に対する逮捕状を出している。戦争犯罪に関する米国の専門家は、筆者の取材に対しこう語った。「もしロシアで長らく迫害されてきた民主派、恐らくナワリナヤ率いる自由主義連合が何らかの形で権力を握ることができれば、クレムリンの新指導部はプーチン大統領と側近たちをICCに引き渡すだろう」

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事