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2026.03.10 12:00

仕事における「感情のコントロール」は隠れた負荷に、燃え尽きを防ぐ対策は?

Shutterstock.com

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感情労働(対人サービス業において、自分自身の感情をコントロールする必要性がある労働)の本当の負担は、会話やタスクが展開されるずっと前にすでに始まっていることが多い。調整や予測、そして社会的モニタリングはすべて、ストレスの多い仕事のメールに返信する前や重要な会議に入る前、あるいは大変な1日の後にパートナーにあいさつする前から心に重くのしかかっている。

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実際、多くの人は「その時」が訪れる前に、すでに少なくとも1回は感情的な労働を行っている。相手の口調を評価し、自分の表情を調整している。また、相手の反応を予測し、先んじて自分の接し方を和らげ、これから起こるであろう状況に合わせて自分のエネルギーを調整している。この目に見えない努力こそが、心理学者が感情労働と呼ぶものだ。そしてその大半はひと言目を発する前に起こっている。

感情労働という言葉は、社会学者アーリー・ホックシールドが職業上の期待に沿うために気持ちや感情表現を管理するプロセスを説明しようと最初に用いた。その後、心理学者たちはこの概念を広げ、職場だけでなく人間関係にも適用するようになった。

感情労働は通常、社会的規範に従って感情表現を調整することと定義される。これらの「表示に関する規則」は特定の環境でどの感情を表すことが適切かを定めるものだ。例えば、サービス業の従業員は内心がどうであれ好意的な態度を取ることが期待される。リーダーは自信を示すこと、介護職の人は温もりを伝えることが期待される。

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しかし感情労働には目に見える表現だけではなく、予測的な調整も含まれる。人は交流する前から感情の調整を行うことが多い。これには再評価や抑制、気持ちの昂りの調整が含まれる。言い換えると、感情労働の多くは言葉を発する前に行われている。

だが、私が作成した科学的知見に基づく「Emotional Labor Index(感情労働指数)」を使えば、見えにくいことが多い感情労働との関係の概要を把握することができる。

感情労働の身体的コスト

心理学者ジェームズ・グロスの研究チームは、感情調整に関する最も影響力のあるモデルの1つを開発した。グロスらの研究は、感情反応が完全に起こる前に行われる先行焦点型の戦略と、感情がすでに表された後に行われる反応焦点型の戦略を区別している。

先行型の戦略には状況の選択や注意の配分、認知的再評価が含まれる。そしてこれらのプロセスは自動的に展開されることが多い。例えば、難しい会話を頭の中でリハーサルしたり、誰かの批判に反応する前にその意味を解釈し直したりする。

神経科学の研究では、これらの調整プロセスには前頭前皮質の活性化が伴うことが示されている。前頭前皮質は扁桃体などの領域で生成される感情反応を調整する。この調整は認知リソースを消費する。そしてそれが1日中繰り返されると、累積的な負荷は相当なものになる。

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翻訳=溝口慈子

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