問題はまさにその点にある。スーザンの懸念は、ハードウェアそのものとはほとんど関係がなく、むしろ信頼や社会規範に根ざしている。私たちはいくつかのシナリオを想定してみた。もしその人物が機密情報を録画して売ろうとすれば訴追の対象となり、おそらく簡単に捕まるだろう。果たして、そのようなリスクを冒す者がいるだろうか。または、ただオフィスで同僚の写真を撮っただけで、違法性も悪意もないのであれば、それほど深刻な問題なのだろうか。もしかすると、装着者は名前を覚えるのが苦手だったり、顔認識障害を抱えていて、全員の顔と名前を一致させるために写真を利用したいだけなのかもしれない。
私たちは、職場でスマートグラスを着用する潜在的なメリットについても掘り下げてみた。例えば、他の言語が母国語である人のためのリアルタイム翻訳、聴覚障害者のためのリアルタイム字幕、視覚障害者のためのオプトイン方式の顔認識、あるいは会議中にスマートフォンを手に取らずに通知を確認できるといった利点を検討していくうちに、スーザンの考えも変わり始めた。それでも、彼女が最初に抱いた違和感は正当なものであり、今年スマートグラス市場に参入するすべての企業にとって、克服すべき課題となるだろう。
スマートグラスには、録画や写真撮影を行っていることがわかるライトが不可欠であり、そのライトは容易に隠せないものでなければならない。しかし、それ以上に重要なのは、特定の状況下におけるスマートグラス利用の社会規範を醸成することである。プライベートな場での撮影時には事前に周囲へ知らせ、他者のプライバシーの境界線を尊重しなければならない。また、スマートフォンの使用が制限されている場所では、スマートグラスの使用も制限されるべきだ。その一方で、日常的な着用、とりわけ公共の場における使用については、許容されるべきである。
最近、男性が女性に近づき、スマートグラスを使って無断で撮影したという事案がいくつか報告されている。これは明らかに許しがたい行為だが、問題の本質はテクノロジーではなく、それを用いる側の男性にある。もし女性側もグラスを着用していれば、即座に撮り返し、例えば、料理を待っている間に迷惑な行為をしてきた男性がいたら、それを皮肉る動画を投稿できるはずだ。オフィスであれレストランであれ、解決策は同じである。それはハラスメントや、撮影に対する本人の同意に関する社会的規範を築き上げることだ。スマートグラスメーカーは、こうした規範を自ら発信することから始めるべきだろう。製品が普及するにつれて人々は適応し、状況は是正されていくはずだ。現時点においては、新しい技術を禁止・制限することよりも、チームや企業内での信頼関係を築くことの方が、はるかに大きな前進となるだろう。


