──2026年、スタートアップシーンや投資環境はどう変化していくとお考えですか。
石倉:まず、強いところに資金が集まり、そうでないところには集まりづらいという選別の構図は、より顕著になります。加えて、2026年は、金利や地政学リスクなどのマクロ環境の変化が、スタートアップの資金調達や事業計画に直接影響しやすい年になると見ています。特に製造業や物流などのリアルな産業に関わる企業は、原材料価格や設備投資、為替の影響を受けやすくなります。
そして再編の加速です。スタートアップに限らず上場企業も含めて、M&Aや経営統合が増えていくでしょう。SaaSやコンサル系の企業は「AIがあればこのサービスは要るのか」という目にさらされ始めていて、トップラインが伸びていない会社は調達がますます厳しくなる。想定以上にバリュエーションがつかないという局面が増えるはずです。資本効率、収益の再現性、統合戦略の三つが問われる1年になると思います。
北米モデルではもう勝てない
──投資対象として2026年に注目している領域はありますか。
石倉:もちろんAIやディープテック領域にも注目していますが、日本のIP・カルチャーを武器にしたビジネスには大きな可能性を感じています。ソニーグループがゲーム・音楽・映画を軸にしたIP戦略で過去最高業績を記録し、政府もコンテンツ産業を基幹産業と位置づけて海外売り上げ20兆円の目標を掲げるなど、官民で盛り上がっています。
私たちアカツキもゲームやコミックのIP事業を手がけてきましたが、業界全体でもアニメやゲームのIPとコラボしたグッズやアパレルが好調ですし、VTuberやトレーディングカードの領域で成長するスタートアップも出てきた。投資先のBrave groupはM&Aを駆使してIPを軸にエコシステムを構築し、海外展開も進めている好例です。
個人的に最も興味があるのは「人の感情が動くもの」です。AIの普及で世の中は効率化に向かっていますが、人の生活習慣や感情は昔からそんなに変わっていない。朝起きて、ご飯を食べて、仲間と過ごして、楽しく過ごす。テクノロジーが進化しても、人の根っこにある感情は変わらない。変わっているのは、テクノロジーを通じた体験や感じ方です。
そう考えると今後、AIで徹底的に効率化される世界と、人が感情で楽しむ世界と、事業の方向性が二極化していくのではないでしょうか。そのとき、本当に人が面白いと思えるもの、ワクワクできるものは何なのか。効率の対極にあるこの領域のほうが、私はずっと惹かれます。2010年代は北米のモデルを参考にしたビジネスが多かったですが、もうそれだけでは勝てなくなっている。日本独自のカルチャーやIPをベースに、勇気を持って世界に挑む起業家にこそ期待しています。
Forbes JAPANは4月16日に、創業3年以内の起業家によるピッチイベントを開催する。本ピッチは「日本の起業家ランキング」への登竜門として、次世代を担う有力起業家を発掘・支援するプロジェクトで、3月12日までピッチ登壇希望者を募集している。エントリーはこちらから。


