映画

2026.03.06 18:15

映画「しあわせな選択」イ・ビョンホンのコミカルな演技が光る「殺人」劇

主人公のマンス(イ・ビョンホン)は、このときをきっかけに「No Other Choice(他に選択がない)」と悟る ⓒ2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED

窮地に陥ったマンスは、新たな製紙会社に履歴書を持ち込み就職をはかるが、幹部社員のソンチュル(パク・ヒスン)から冷たい仕打ちを受ける。自分のキャリアからして彼の役職こそが自分には相応しいと考えたマンスは、ある突飛な考えにたどり着く。

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それはライバルさえいなくなれば、自分の就活も成就するのではないかというものだった。マンスは強力なライバルとなりそうな3人の人間をピックアップして、彼らを亡き者にしようとするのだったが……。

マンスは就職活動のライバルとなる人物をピックアップする ⓒ2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
マンスは就職活動のライバルとなる人物をピックアップする ⓒ2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED

映画「しあわせな選択」では、この後、マンスのいくつかの「犯行」が描かれていくのだが、そこはパク・チャヌク監督らしく、ブラックな場面ではコミカルな味わいを混じえながら、没入感たっぷりに観客を誘(いざな)う。

このあたり、奇抜な設定ながらもエンタテインメントへの振り幅も忘れることのない見事な演出だ。パク監督は「観客に、哀れみとおかしさを同時に感じてほしい」と語っている。

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また予期せぬ展開にも満ちており、場面の各所に隠された演出も散りばめられていて、前出の「別れる決心」と同じく、再観賞することでさらに楽しめる作品ともなっている。

主人公のマンスを演じるイ・ビョンホンの演技も秀逸だ。殺人者というシリアスな役柄にもかかわらず、オフビートな味わいを添加することで、観客にシンパシーを抱かせる絶妙な演技を披露している。主人公の複雑な内面を繊細に表現し、作品のなかへと観客を引き込む。

かつて若かりし頃に見せていたヒーロー的な振る舞いは見られず、リストラに遭遇した情けない中年男になり切っている。「極端な状況をどうすれば説得力を持って見せられるか。その点に最もこだわって演じようと努めた」とイ・ビョンホンは語る。

また妻のミリを演じるソン・イェジンは、人気ドラマ「愛の不時着」で演じた主人公役さながらに、情けない夫を支える強い意志を感じさせる逞しさを振り撒いている。パートに出て働く若い歯科医との関係も微妙に匂わせながら、作品にミステリアスな色合いを与えている。この韓国の人気俳優2人を配したキャスティングも見事だ。

「しあわせな選択」では「イカゲーム」のイ・ビョンホンと「愛の不時着」のソン・イェジンが夫婦役を演じる ⓒ2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
「しあわせな選択」では「イカゲーム」のイ・ビョンホンと「愛の不時着」のソン・イェジンが夫婦役を演じる ⓒ2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
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文=稲垣伸寿

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