企業がたいてい行う「3つの対応」
では、ここで目線を「企業側」に変えましょう。企業が特許訴訟を仕掛けられたときの対応には大きく以下3つがあります。
1.逃げる:設計変更。特許に引っかからないように、自分の製品の仕様を変える。
2.ゴネる:値切る、交渉する、「うちだけ独占ライセンスにしてくれないか」「うちだけ安くしてくれないか」などと交渉する。
3.つぶす:特許そのものを無きものにしようとする。無効審判や、無効確認訴訟などによって無効化してしまうのです。
3.について、そもそも、特許は特許庁が審査して認めたものとはいえ、完璧ではありません。後から別の証拠を持ってきて、「この特許、実は進歩性がありませんでした」としてつぶすこともできます。人間が審査している以上、見落としはあり得るのです。世界のどこかから、特許庁が見つけられなかった思いがけない資料が出てくるかもしれません。
僕が特許を取った2011年前後は、一度通った特許が無効となる「無効審判」の成立率は約35%。つまり、実に3割以上は特許がつぶされていました。そして、大企業にとって、無効審判はいわば「挨拶代わり」。訴えたら100%、無効審判を仕掛けてくるでしょう。
何千万円もかけて訴訟して、結局、特許がつぶれて、借金だけが残るということも珍しくないのです。また、資金が尽きてしまえば、白黒つく前にそこで終了です。だからこそ大企業は、「勝たなくてもいい。相手をつぶせばいい」という戦略を取ります。大変常識的なやり方だと思います。
実際、ユニクロと中小企業の特許訴訟でも、訴訟を抱え続けることができず、中小企業側が特許を手放してしまった例があります。
一方、個人の特許権者が大企業と戦って勝訴した例もあります。iPodに使用されている操作盤「クリックホイール」を発明した斎藤憲彦氏はアップルを訴えましたが、このケースでは知財高等裁判所がアップル側の特許権侵害を認めたので、斎藤氏は3.3億円の賠償金を得ました。
しかし、実は訴訟費用も多額にかかっているはずです。斎藤氏が請求した額は100億円でしたので、「勝訴」といっても複雑です。6年戦って勝ったけれど、黒字なのか赤字なのか。斎藤氏はその後、金額が不服として控訴しています。こういうことも、普通にあるのです。


