経営・戦略

2026.03.18 10:15

マイクロソフトに『フリック入力』を売った発明家の「ビッグテックを本気にさせた」特許戦略

AdobeStock

「フリック入力」iPhoneにいつのまにか搭載されていた

さて、iPhoneがついに日本に上陸したのは、僕の特許出願より1年以上後の2008年7月でした。当時は「iPhoneが来るぞ」「どこのキャリアから出るんだ?」と、みんな興味しんしんでしたね。

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その頃、僕は 「iPhoneが日本に来たら、ぜひ自分の考えた入力方法を搭載してほしい」と思い、ドコモとソフトバンクの人にプレゼンすることにしました。東工大(当時)に社会人入学していたので、ドコモ、ソフトバンクの人たちが同級生にいて、紹介してもらったのです。

「こういう入力方法を考えています。iPhoneにぜひ入れてください」と説明したのですが、各社の反応は 「うーん」「検討します」といった感じのものでした。結局、僕のところには何の連絡もありませんでした。

ところで、特許は出願から1年半後に特許庁サイトに公開されます。それまでは誰にも見えません。なので、メーカー側も、僕が特許出願をしていることを知らないのです。

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そういう状況下、フリック入力が日本で発売されたiPhoneに搭載され、ニュースになりました。友だちから「これ、おまえのアイディアじゃん」と連絡が来て、自分でも、「え、僕のがもう入ってるじゃないか……」とそれはもうびっくりしました。

たとえメーカー側が僕の特許出願について知らず後から同様の特許出願をしていても、特許の制度は最初に特許出願を行った者が特許権を得る「先願主義」なので、先に出願していた者に特許を受ける権利があります。

iPhone、Android、Windows Phone、扇形フリック入力、カーブフリック入力─僕はすべてを最初の出願に含めていました。「こんなのあったらいいな」を全部書いてたんです。これらを分割し特許化しました。だから、全部僕の特許に「引っかかり」ます。

特許の審査には時間がかかります。結局、最初の特許が成立したのは2011年のことでした。

じゃあ、どうする?

さて、携帯電話メーカーにどう申し立てたか。

こういった際、特許の「活用方法」はいくつかあります。

A.差し止め
 → 「全部販売停止してください」と使用者に言う。

B.ライセンス
 → 「販売を続けるなら、1台あたり◯円をください」と使用者に言う。

A.の「売るな」という差し止めは、かなり大きなインパクトになります。もしiPhoneが完全に販売停止になったらどうでしょう。日本市場ではiPhoneがまったく売り出せない、となるわけで、企業にとっては大損害です。

B. は、Aとセットで行います。つまり、お金を払わないなら差し止めするよ、というわけです。

では、僕がA.B.の要求をしたらどうなるか。これは、だいたい予想がつきます。

実は大企業には、毎日のように「御社、うちの特許を使っていませんか?」といった手紙が山ほど来るのです。そんなことはすなわち日常茶飯事なので、基本は企業側は「無視」します。

僕も弁理士として企業の顧問をすることがありますが、こういう場合はまず「無視してください」とアドバイスします。

では、無視されたら、特許を持っている側は次にどうするか。自分の特許を使っている企業に対して訴訟を起こすことになりますが、訴訟には大変なお金がかかる。しかも、複数社を相手に訴訟するとなれば、大きなコストになります。

逆にいうと、企業側は、相手が小さければ「訴訟を起こされてから考えればいい」というスタンスといってよいのです。

次ページ > 企業がたいてい行う「3つの対応」

書き起こし・構成・編集=石井節子

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