経営・戦略

2026.03.05 14:21

ゴールドマン・サックスのDEI撤退が映し出す、企業の多様性推進の限界

StockMarketVisuals - stock.adobe.com

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ゴールドマン・サックスが取締役会に関するDEI基準要件を停止することが発表された。Wall Street Journal報道によれば、同社は取締役候補者を評価する際に、人種、性自認、性的指向などの属性を考慮する基準を廃止するという。2020年初頭、同社は「多様性のある」取締役が少なくとも1人いない企業については上場を引き受けないと発表し、大きな話題となった。他のDEI関連施策を継続しているゴールドマン・サックスは、金融業界の先駆者と見なす向きも多かった。同社のDEIからの後退は、ここ数年見られてきた同様のパターンを映し出している。ゴールドマン・サックスはコメント要請に応じなかった。

この発表には様々な解釈がある。良い判断だと主張する人もいるだろう。取締役の選任において人口統計学的な属性を考慮すると、トークン化につながる可能性がある。これは、マイノリティ集団に属する人物が見せかけのために担ぎ上げられる現象だ。DEIへのコミットメントとは、十分に代表されていないマイノリティコミュニティから有能な人材を採用することを支援するだけでなく、そうした人々が力を発揮し成長できるよう、必要なツールやリソースを提供することも同様に含まれなければならない。取締役の多様性基準を撤廃したからといって、歴史的に排除されてきた人々を支援するための社内の取り組みをしていないとは限らない。

一方で、ゴールドマン・サックスが多様性基準を外したことは、複数の大企業(TargetGoogleAmazonなど)で見られたのと同じく、DEIからの静かな撤退を示すシグナルかもしれない。多くの企業は、DEIに対して悪名高い政権に屈してきた。だが、もともとは競争条件をならし、すべての従業員が活躍するためのツールを確保する目的でつくられたものが、いとも簡単に着脱できるものになってしまったら、どうなるのか。DEIが、流行しているときに企業が試着するコートにすぎず、もはや利益にならないように見えると脱ぎ捨てられるだけのものになったら、どうなるのか。

企業が約束を守らず、CEOが責任を回避し、説明責任が欠如する世界であっても、企業は人々に対して責任を果たさなければならない。企業が存在する限り、将来どのような形を取ろうとも、DEIプログラムは常に必要である。従業員には公正で公平な方針と慣行がなお求められ、顧客もまた、安全で害のない環境を求め続ける。DEIの方針や慣行を取り除いても、それを求める声は消えない。

敵対的な風土を踏まえれば、企業が公平性への取り組みにおいて、より慎重になり、目立たない形で、秘匿性を高めるのは理にかなう。だが、持続可能性を目標とするなら、決して理にかなわず、今後も理にかなわないのは、従業員への投資を拒み、活躍を妨げている障壁への対処を避けることだ。従業員の違い、歴史的な排除、周縁化、そしてそれらが従業員の経験に与える影響に向き合わなければ、企業はゆっくりと(時により急速に)崩壊へ向かう。DEIから後退したゴールドマン・サックスをはじめとする企業は、自らの決定と向き合わなければならない。そして、それが「流行」ではない時期であっても、事業の存続に不可欠である以上、不公平にどう対処するかを考え続ける必要がある。

forbes.com 原文

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