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2026.03.05 13:57

リビングを制覇したYouTube、それでもブランドが活用しきれない理由

AdobeStock

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マーケティング予算は、TikTokやInstagramといったショート動画の縦型プラットフォームへと、ますます移りつつある。スピード、アルゴリズムによる配信、パフォーマンス測定という点で明確な利点があるからだ。その一方でYouTubeは、長尺コンテンツ、コネクテッドTV視聴、そして継続的な視聴者エンゲージメントの領域で、静かにその地位を強化してきた。

業界データによれば、YouTubeは米国におけるテレビ画面の視聴時間で最大のシェアを占めるようになった。Nielsenの月次レポート「Gauge」によると、総日次TV利用の約12%に相当する。米国のコネクテッドTV広告は2025年に300億ドル(約4兆5000億円)を超え、ストリーミング環境における持続的な成長を反映している。こうした動向によりYouTubeは、モバイルとリビングの双方の文脈で機能する中核的な動画配信プラットフォームとして位置づけられる。

しかし、クリエイター・エコノミーの幹部の間では、Fortune 500の広告主の多くが、YouTubeを主として有料メディアのチャネルとして捉え、文化や物語のエコシステムとしては見ていないとの主張が増えている。

認識のギャップ「文化はYouTubeでは起きない」

クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)のタレントエージェント、Andrew Grahamは、一部のマーケティングリーダーがプラットフォームの重要性を評価する際に、構造的な誤解があると見ている。

最近のホリデーイベントで、彼はある最高マーケティング責任者(CMO)とYouTubeの立ち位置について話し合った。「そのCMOの見立ては、TikTokやInstagramで起きるような形で文化はYouTubeでは起きない、というものだった」と、Grahamは筆者とのポッドキャストで語った。

会話が進むにつれ、Grahamはその認識が可視性に結びついていると結論づけた。「TikTokやInstagramには、従来型のセレブがより多くいる」と彼は言う。

ショート動画プラットフォームには、俳優やミュージシャンなどの著名人が、軽い内容のコンテンツを作っている様子が頻繁に見られる。その可視性が、取締役会レベルで文化的な関連性がどう認識されるかを左右しうる。

だがGrahamは、その結論は不十分だと捉えている。「視野が狭い考え方だと思う」と彼はインタビューで述べた。

言いたかったのは、TikTokやInstagramに文化的影響力がないということではない。むしろ彼は、YouTube上の文化は、繰り返し視聴されるフォーマット、より長い物語、そして持続的な視聴者の注意によって育まれると主張した。そうした力学はトレンドのダッシュボードでは見えにくいが、影響力としてはより持続的である可能性がある。

有料メディアはクリエイター戦略ではない

Grahamが指摘した2つ目の問題は、ブランドがYouTube戦略をどう定義しているかに関わる。

マーケターは、YouTube上の有料メディア枠に多額の予算を投じる一方で、クリエイターとのカスタム統合を減らす傾向が強まっている。Grahamはこの2つのアプローチを明確に区別する。

「YouTubeで有料メディアを買うことは、YouTubeのクリエイター戦略ではない」と彼はインタビューで述べた。

彼の見立てでは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を発注し、それを純粋に有料広告として配信するやり方は、クリエイターを制作ベンダーとして扱うことになり、忠実な視聴者を抱えた配信エコシステムとして扱っていない。

その含意は、バイラルな瞬間がどのように生まれるかを見ればより明確になる。Grahamは、あるブランドがショート動画の統合を優先したものの、プラットフォーム横断でのバイラル化を生んだ元ネタは、クリエイターの長尺YouTubeシリーズだったという事例を説明した。

彼のチームが、その長尺シリーズ内での統合を提案したところ、ブランドは断った。「最初ははっきりとノーと言われた」とGrahamは語る。「それから、予算を半分にしなければならないと言われた」

この結果は、予算の枠組みが表面的な露出を優先し、視聴者の投資を生む物語環境を過小評価しうることを示している。

プラットフォームを横断して見え始めたパターン

Grahamはさらに、ブランドが新しいプラットフォームを採用する際に繰り返される可能性のあるパターンについても述べた。

「ブランドはYouTubeでカスタムコンテンツの統合を買っていた。それが結局、YouTubeではメディアを買うだけになった。いまはTikTokがカスタム統合を取り込み、UGCの人気が出始めている」と彼はインタビューで語った。

彼は、TikTokやInstagramもまた、徐々に有料メディアへの依存を強めるかもしれないと示唆した。「TikTokやInstagramも、ただ有料メディアを買う方向に動き始めているように感じる」と彼は言う。

このサイクルが続けば、プラットフォーム間でパフォーマンス戦略が収れんし、ブランドの差別化は薄れていく可能性がある。その環境では、確立されたクリエイターのエコシステム内での長尺統合が、戦略的重要性を取り戻すかもしれない。

コミュニティの深さとブランドの整合

Larrayとして10年以上にわたり複数のデジタルプラットフォームでキャリアを築いてきたLarryは、YouTubeの環境が異なるタイプの視聴者反応を生みうる理由を語った。

長尺コンテンツに投じられる物語構築や編集のレベルを念頭に、「YouTubeは、ただただクリエイティブのセンスがずっといいように思える」と彼はインタビューで述べた。

YouTubeの制作には、しばしば長い開発時間が伴うとも説明する。「YouTubeは何時間も座って編集して、アイデアを考える」と彼は言う。

そうした投資は、ブランド統合がどう受け止められるかを左右する。スポンサーの実行について語る際、彼は意図性の重要性を強調した。

「最大の間違いは、クリエイターにフォロワーがいるというだけで人が買うと思ってしまうことだ」とLarryはインタビューで述べた。

視聴者規模は購買行動に自動的には結びつかない。統合は、クリエイターのフォーマットやトーンと整合していなければならない。

初めての大型スポンサー契約を振り返り、彼は当時の取り組みを語った。「最初にCurologyのブランド案件を取ったとき、スキットを作った。エネルギーを注いだ」と彼は言う。

さらに、「自分のブランド統合を見るといつも、スーツとネクタイを着て、必ず演じ切るようにしている」と付け加えた。

ブランドの視点から見れば、こうしたディテールは、長尺環境が中断ではなく物語への組み込みを可能にすることを示している。

テレビ効果

コネクテッドTVでのYouTube視聴が拡大し続けるにつれ、制作スタイルもそれに応じて適応している。

Larryは最近、動画をエピソード番組のように構成することを試した。「テレビ番組みたいに感じさせた」と彼はインタビューで語った。

これは、CTV消費と広告投資の増加を示す、より広範な業界データとも整合する。YouTubeがリビングの画面を占めるようになるほど、統合は、孤立したモバイルのフィード内ではなく、家庭内で共有される視聴文脈の中で機能する可能性が高い。

CMOにとってこの動きは、クリエイティブ基準、ブランドセーフティの考慮、そして長尺のストーリーテリング投資に影響を与える。

ブランドが見落としているかもしれないこと

Grahamは、戦略上の核となる違いをシンプルな言葉で要約した。

「YouTubeで得られるのは取引だけではなく、コミュニティだ」と彼はインタビューで語った。

配分の意思決定を検討するマーケターにとって、論点は、パフォーマンスマーケティングの効率性と、文化への埋め込み、物語の文脈をいかに両立させるかである。

ショート動画プラットフォームはスピードと反復を提供する。YouTubeは、規模、テレビ級のリーチ、そしてクリエイター主導の環境における継続的な視聴者エンゲージメントを提供する。メディアの断片化が進み、各プラットフォームで有料メディアの飽和が強まるなか、統合された長尺のブランドストーリーテリングの相対的価値は、改めて検討するに値するかもしれない。

YouTubeを広告配信の終着点としてだけでなく、文化のインフラとして捉えるブランドは、競争が激化するアテンション・エコノミーにおいて、追加的なレバレッジを見いだす可能性がある。

本記事は、筆者のポッドキャストThe Business of CreatorsでAndrew GrahamとLarrayに行ったインタビューに基づいている。

forbes.com 原文

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