経営・戦略

2026.03.04 23:29

危機対応コミュニケーションはPRではない──経営者のリスク管理である

ヨッヘン・シュヴェンク氏はCrisis Control Solutions LLCのCEO。リスクと危機管理の専門家で、ベストセラー作家でもある。

多くの経営幹部は危機対応コミュニケーションを理解していると思っているが、私の経験では、そうではない。知性や経験が足りないからではなく、誤った思考モデルを学んでしまったからだ。危機対応コミュニケーションはしばしば広報(PR)のように扱われる。ブランドを守り、受け手を落ち着かせ、適切な言葉を選び、話題を次へ進める。日常的なレピュテーション管理ならそのやり方でうまくいくかもしれないが、賭け金が本当に大きい場面では通用しない。真の危機において、コミュニケーションはマーケティング機能ではないのだ。

PRとリスク管理の違い

PRは認識を形づくることだ。リスク管理はエスカレーションを防ぐことだ。高圧的な状況での目標は、公の場で「ナラティブに勝つ」ことではない。外部のナラティブが加速するなかでも、組織を機能させ続けることが目標である。あなたを守り得る人々との信頼を維持し、あなたに害を及ぼし得る人々からの露出を減らさなければならない。

危機は、組織が自らのストーリーをコントロールできなくなった瞬間に始まる。引き金が明白なこともある。重大事故、安全上の事案、訴訟、規制当局からの想定外の動き、サイバー侵害などだ。だが近年は、引き金が「誰かの手の中のスマホ」であることのほうが多い。短い動画クリップ。スクリーンショット。社内の報告連鎖が反応するより速く広がる主張。経営チームが報告を受ける頃には、世間はすでに何が起き、なぜ重要なのかを決めてしまっている。そして一度意味づけが付与されると、事実は追いつくのに苦しむ。

だからこそ、多くの組織は最初の1時間で最初のミスを犯す。コントロールを得る前に発信してしまうのだ。カスタマーサービス担当者がコメント欄に返答する。現場のマネジャーが善意で説明する。部門が防御的な釈明を投稿する。法務が慎重な一文を送る一方で、人事は社内にまったく別のメッセージを流す。上級リーダーが共感を示したくて感情的な声明を書き、未確認のことをうっかり認めてしまう。その結果は透明性ではない。結果は矛盾であり、矛盾は元の事案以上の速さで信頼性を破壊する。

危機対応コミュニケーションをどう捉え直すか

コミュニケーションが断片化すると、単に段取りが悪く見えるだけではない。信用できない組織に見える。利害関係者が企業を罰するのは、まだすべてを把握していないことではない。傲慢、逃避的、あるいは一貫性がないように聞こえることだ。世間は不確実性を受け入れられる。しかし、リーダーシップがその場しのぎで動いているという感覚は受け入れられない。

ここで経営陣は、危機対応コミュニケーションを全面的に捉え直すべきである。最初に問うべきは言葉遣いではない。ガバナンスである。実務において、強い危機対応コミュニケーションは常に「意思決定のオーナー」を1人置くことから始まる。組織には、公式の姿勢を何にするかを決める権限を持つ単独の人物が必要だ。加えて、承認ルートも1本必要である。委員会でも、議論でも、皆で文言を出し合うグループチャットでもない。1つのルート。1つの基準。1つの声だ。

危機には、事実記録も1つ必要である。基本的な話に聞こえるが、多くの企業が崩れるのはここだ。初動の数時間、同じ状況が組織内で5通りに語られる。ある人は午前10時に起きたと言い、別の人は10時30分と言う。ある人は顧客が関与したと言い、別の人は請負業者が関与したと言う。内部で新たな「別バージョン」が現れるたびにリスクは増大する。世間が社内の混乱を目にしなくても、利害関係者はそれを感じ取る。従業員は即座に感じる。パートナーはためらいを察知する。メディアの圧力は強まる。規制当局は疑い深くなる。混乱は伝染する。

経営者としてのリスク管理には、「分かっていること」と「推測していること」を切り分けることが求められる。今後12時間、新しい事実が出ても崩れない規律ある姿勢が必要だ。だから最も効果的な初動の声明は、短く落ち着いたものになることが多い。認識していることを示し、深刻さを伝え、検証済みの事実に基づいて伝えると約束する。憶測しない。誰かを責めない。防御に回らない。隠すことで時間を稼ぐのではない。能力を示すことで時間を稼ぐのだ。

そして危機における真の通貨は「能力」である。利害関係者が、圧力下でも有能だと信じれば、余地を与えてくれる。混乱していると信じれば、事態をエスカレートさせる。皮肉なことに、多くのリーダーは強く、早く話すことで「自信」を伝えようとする。スピードは強さだと考えるのだ。しかし、コントロールを伴わないスピードはパニックに見える。そしてパニックは、さらなる精査を招く。

経営陣が次に行うべき転換は、危機対応コミュニケーションが主として公の場のものではないと理解することだ。最も重要な会話は、しばしば非公開の場で行われる。最も危険な瞬間は、必ずしもSNS上ではない。主要パートナーが静かに距離を取り始めるとき。規制当局が明確化を求めて電話してくるとき。取締役が「何が起きているのか」と尋ねるとき。優秀な従業員が職を失うことを恐れ、履歴書の更新を始めるとき。危機が安定するかエスカレートするかは、そこで決まる。

強い経営判断は、利害関係者を意図的な順序で優先する。こう問うのだ。誰にこの状況を加速させる力があるのか、誰に沈静化させる力があるのか、うわさが組織的信念になる前に誰を安心させるべきなのか。ときには、公の声明を出す前に主要パートナーへ電話し、「私たちから直接お伝えしたかったのです。状況を認識しており、事実を検証中で、対応をコントロールしています」と伝えるのが最善の一手になる。この一文を、落ち着いた権威とともに届けるだけで、不信の連鎖反応を防げることがある。

ここで多くの組織は、可視性と有効性を取り違える。公に反応すれば「何かをしている」と信じるのだ。しかし、内部でそれを支える構造がないまま公に動けば、しばしば第2の危機を生む。抑え込めるはずの事案を、リーダーシップの信頼性を問う事態へと変えてしまう。

経営者が受け入れるべきもう1つの現実は、コミュニケーションがメッセージだけの問題ではないということだ。メッセージが次に何を約束するかの問題でもある。即座に全面調査を約束すれば、実現できない期待を生むかもしれない。事実が検証される前に処分を約束すれば、法的なリスクと社内の不安定さを招く。思いやりがあるように聞かせても是正措置を取らなければ、パフォーマンスに見える。是正措置を取っても適切に説明できなければ、罪を認めたように見える。あらゆる声明は意思決定であり、あらゆる意思決定はリスクのプロファイルを生む。だからこそ、危機対応コミュニケーションは経営者のリスク管理なのである。

forbes.com 原文

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事