人生の大きな転機を迎えたとき、日常生活は問題なくこなせていても、感情的には空虚さを感じることが多い。離婚、子どもの巣立ち、キャリアチェンジといった経験は、悲しみや喪失感を伴い、アイデンティティの大きな変化をもたらす。「多くの人が、転機に伴うさまざまなタスクに集中するあまり、喜びの感覚が薄れていく。喜びが消えたわけではなく、優先順位が下がってしまうのだ」と、マクナルティ・カウンセリング・アンド・ウェルネスの認定メンタルヘルスカウンセラー、ニコール・ウィルソン氏は語る。「大きな転機を乗り越えた後、人は安堵感を期待しがちだ。しかし実際には、長期間のストレスで神経系が疲弊し、疲労困憊して心が閉ざされた状態に陥ることが少なくない」
こうした時期に自由や喜びの感覚を取り戻す方法の1つが、意図的な旅である。新しい環境に身を置くことは、慣れたルーティンやパターンを断ち切り、窮屈になっていたり責任によって過度に規定されていたりする役割から、心理的な距離を生む。「特に一人旅は、人生のある段階でおろそかになっていた自分自身の一面を探求する機会を与えてくれる」とウィルソン氏は言う。
人間関係や仕事上の役割においては、意思決定が義務感によって動かされがちだ。旅の中で得られる自律性は、主体性の感覚との再接続を促す。1日の組み立て方、ペース、食事場所を自分で決める。こうした小さな選択は、転機の後に自律性が損なわれたように感じるときほど、いっそう意味を持つ。
旅はまた、新しい習慣や視点をもたらし、異なる人々と交流し、ユニークな体験に身を投じる機会を提供する。新しい文化に浸ることで、より広い視野から人生を見つめ直すことができる。「これによって視点の転換が起こり、好奇心や可能性、そして人生がこれから何をもたらしてくれるかという、より広がりのある感覚が生まれる」とウィルソン氏は説明する。旅は視点を回復させ、変化の渦中にあっても喜びを再び身近なものにしてくれるのだ。
旅がもたらす「呼吸する余裕」
「私の臨床では、旅が回復的に作用した患者がいる。何かを『修復』するからではなく、切実に必要とされる呼吸する余裕と内省を促すからだ。中断が起きるのである」と、ビクトリー・ベイの臨床ディレクターで認定臨床ソーシャルワーカーのメリッサ・ギャラガー氏は語る。離婚や子どもの巣立ち、介護疲れといった人生の転機において、人はルーティンと責任の中で自分自身を見失いがちだと彼女は説明する。「そのパターンが旅によって穏やかに中断される」とギャラガー氏は言う。「旅は自分の決断を見つめ直し、自分がどう感じているかに気づき、何年も背負ってきた役割から一歩外に出ることを促してくれる」
新しい章を始める
「旅は、人生の転機を最大限に活かす絶好の方法だ。1つの章を儀式的に閉じ、次の章を迎え入れることができるからだ」と、ボストン・イブニング・セラピー・アソシエイツの創設者で認定臨床ソーシャルワーカーのアーロン・ギルバート氏は言う。旅は世界を開き、これまで何を経験してきたとしても、まだまだ生きるべき人生がたくさんあることを思い出させてくれる。
旅は、異なる生き方、異なる価値観、異なる人生哲学に触れさせ、それが自分自身をより良い方向へと導くこともある。ギルバート氏はこう述べる。「旅は、ひと息つき、日々のルーティンを断ち切り、新たな人生の季節に照らして自分の価値観を見直し、これから先の人生に何を求めるのかを探る機会を与えてくれる」



