教育

2026.03.05 06:44

なぜ強い企業文化が従業員を引き留めるのか

Dana KellermanはOnPoint Groupの最高人事責任者である。

評価されず、権限も与えられず、考えを口にするのが怖いと感じる職場で働いたことがあるなら、いずれ「ここを去ろう」と決めた瞬間があったはずだ。同僚も、やがてあなたの後を追ったかもしれない。

私は企業社会で過ごした年月のなかで、その光景を幾度も見てきた。企業文化には大きな力がある。私はそれを、組織の人格、あるいは社会的なオペレーティングシステムだと捉えている。企業文化――すなわち組織に共有された価値観、信念、態度、行動、慣行の集合――は、従業員の定着と結びついていると感じてきた。強い文化が欠けると、従業員は軽んじられている、報われない、そして恐れている、と感じ始めることがある。

実際、Gallupが2025年2月に発表した「データ分析」では、自社の文化とつながっていると強く同意する従業員は、求人情報をチェックしたり積極的に転職活動をしたりする可能性が47%低いことが示された。さらに、2022年にMIT Sloan Management Reviewに掲載された研究は、有害な企業文化が「業界と比較した企業の離職率を予測するうえで、報酬の10.4倍強い影響力を持つ」ことを明らかにした。これらの結果は、私にとって驚きではない。強い企業文化はエンゲージメントを促し、その結果、従業員はチームで取り組む仕事に当事者意識を持ちやすくなる。

企業文化が定着に及ぼす影響力を踏まえるなら、リーダーは、従業員が評価され、力を与えられ、考えを安心して口にできる強い文化の構築を優先すべきである。

文化の弱さがもたらす影響と定着率

企業文化が乏しい会社では、従業員のモチベーションが低下し、エンゲージメントが失われ、組織から心理的に距離を置くリスクが高まり、士気の沈んだ職場を招きうる。

士気の沈んだ職場は、企業に壊滅的な結果をもたらしかねない。例えば、製品設計の段階で、従業員が安全上の懸念を口にするだけの心理的安全性を感じられない場合がある。その結果、会社は安全上の脆弱性を抱えた製品を市場に出してしまい、顧客の生命を危険にさらし、評判の毀損や法的措置のリスクにさらされる可能性がある。

時間が経つにつれ、士気が下がった従業員は社外に新たな機会を求め始めやすい。従業員が去れば、組織固有の知識も一緒に失われる。さらに、欠員の穴埋めは残った従業員にのしかかり、燃え尽きにつながり、士気や生産性、そして最終的には収益をいっそう蝕むことになる。その一方で、会社のリーダーは生産性の混乱への対応に加え、採用活動の再開と選考・雇用プロセスにも取り組まねばならず、これは時間も費用もかかる。McKinseyの調査が明らかにしたように、「従業員のディスエンゲージメントと離職は、S&P 500企業の中央値規模の会社において、生産性損失として年間2億2800万〜3億5500万ドルのコストになりうる」という。

強い企業文化に共通する5つの特徴

強い企業文化を築き、維持するために、リーダーはそれを構成する要素を理解すべきである。私の経験では、強い企業文化には5つの主要な特徴がある。

1つ目は、組織に明確で共有された目的、ビジョン、そして中核となる価値観があることだ。チームの全員が、その組織の「なぜ」を理解している――なぜ存在し、なぜ日々出社するのか。こうした理解は共通の土台と方向性の一致を生み、人々を導き、行動の一貫性の形成にも寄与する。

2つ目の特徴は、組織に高い信頼、尊重、そして心理的安全性があることだ。信頼は経営側と従業員の間で双方向に流れる。相互の尊重がある。人々は安心して発言でき、発言すれば耳を傾けてもらえる。

強い文化を持つ企業は、オープンで透明性の高いコミュニケーションも備えている。情報は閉じられず、組織全体に行き渡る。

加えて、強い文化を持つ企業は、従業員の成長、能力開発、ウェルビーイングを重視し、その礎として「承認」を位置づける。人々には知識やスキルを広げる機会があり、仕事と生活のバランスを取るための個人的な時間も確保できる。リーダーは従業員を単なる労働力ではなく一人の人間として扱い、真に評価する。

5つ目にして最後の特徴は、帰属意識、協働、相互支援の感覚があることだ。人々は互いにつながっていると感じ、貢献を認められ、対立するのではなく協力して働こうという動機づけが働く。

リーダーが強い企業文化を築き、維持する方法

強い企業文化を築くには、リーダーは前述した5つの特徴の醸成に注力すべきである。私は、小さく始めることを勧める。例えば、ある会社のリーダーが自社の文化を見直したところ、目的・ビジョン・中核価値観は明確で共有されている一方で、心理的安全性と透明性のあるコミュニケーションが揺らいでいると気づくかもしれない。その場合、まずチームの心理的安全性の改善を決め、その後にコミュニケーションを強化する、といった進め方が考えられる。

ただし、5つの特徴がすべて整っているように見えても、リーダーが掲げる価値観を本当に体現していなければ、強い文化の形成には至らない。リーダーが、チームに求める行動と価値観を自ら示すことが不可欠である。私がリーダーに勧めたいのは、高い効果が見込める行動を1つ選び、それを60日間、目に見える形で徹底することだ。例えば、あるリーダーは2カ月間、毎日、別の従業員の貢献を公の場で称賛する、と決めるかもしれない。この実践を通じて、リーダーはチームに波及効果を生み出せる。従業員は、経営が自分たちの努力を重視していることを目にする。プロセスは、時間をかけて文化になっていく。

リーダーはまた、従業員から定期的にフィードバックを集め(私見では、多くの場合、従業員が本音を安心して言えるよう匿名が望ましい)、必要に応じてそのフィードバックに基づいて行動すべきである。そうすることで心理的安全性と信頼が築かれ、従業員は「見てもらえた」「聞いてもらえた」と感じ、結果として発言を続ける可能性が高まる。

文化づくりが定着率の改善につながっているかを測る方法

完璧な定着率を実現できる会社はない。人生と仕事の性質を考えれば、それは非現実的である。しかし、リーダーは自らの文化づくりの取り組みが、定着率の改善につながっているかどうかを測定できる。

リーダーは、「惜しまれる離職」と「惜しまれない離職」を比較し、根本原因を特定することで取り組みを分析できる。私はこのデータを部門別、またはリーダー別に切り分けるのを好むが、企業の構造によっては、より広い切り口を選ぶ場合もあるだろう。

また、リーダーは定着に関するKPIを設定し、エンゲージメントサーベイやカルチャー監査といったツールを活用して、リーダーへの信頼、心理的安全性の水準、帰属意識、承認されている感覚といった要素を追跡すべきである。

リーダーは、出社する毎日、文化を他の事業上の優先事項と同じように扱うべきだ。継続的な努力、測定、改善の反復を通じてこそ、リーダーは従業員にとって意味のある職場環境をつくり出せる。リーダーは文化を形づくる。しかし、それを担うのは全員である。

forbes.com 原文

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