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2026.03.17 20:00

アウトカムを生み出す方へ進め。AI駆動型のエンジニアに訪れる“自己変容”


400人超のエンジニアを擁する博報堂テクノロジーズが、全社横断のAI開発環境整備に乗り出した。その背景にあるのは、AI時代、エンジニアという職能自体も進化を問われているからだ。同プロジェクトのリーダーにして執行役員の並河祐貴と、同センターでAI駆動開発の設計・推進を担うエグゼクティブマネージャー、ケヴィン・クラッツァの対話から浮かび上がる、来るべきエンジニアの実像とは。


生成AIが「補助」から「自律」へと役割を変えた2025年。コードを書くのはAI、人はAIやコードを「監督」する立場になり、人が担ってきた単純作業は開発現場から姿を消しつつある。

AI導入が、単なる生産性向上という名の「道具の更新」ではなく、開発プロセスの「公理」そのものの書き換えを意味するようになるなかで、博報堂テクノロジーズでは全開発センターにAI前提の開発を促す「AI駆動開発推進プロジェクト」が進行中。AIと共に開発に挑む現場では、何が起きているのか。

「鉄砲伝来ぐらいの衝撃」。なぜ開発組織の“全面刷新”か

――2025年春に、タスク分解から実装・修正までを自律的に進める「AIエージェント」が実用域に入り始めたと言われています。当時、お二人はその変化をどのように捉えていましたか。

並河:それまでの生成AIは、人がコードを書き進める前提で、その続きを予測して支援するものでした。自律型エージェントなるものが出てきた時も、当初はその延長線上の進化だと思っていました。

けれども、実際にClaude CodeやDevinのような自律型エージェントに触れてみると、タスクを分解し、実行し、修正まで回していきます。人が逐一ハンドルを握らなくても開発が進むのを目の当たりにして「これは単なる道具の更新ではなく、戦い方そのものが変わる出来事」なんだと感じました。

私はこれまでメガベンチャーでのプロダクト開発や、スタートアップのCTOとして数々の開発現場を率いてきましたが、これはいわば「鉄砲伝来」に匹敵するインパクトだと。前提から開発プロセスを書き換えなければ、間に合わないと思いました。

ケヴィン:そうですね。私も使ってみて「想像以上に動く」という手応えがありました。特に新規プロジェクトでは既存コードの制約が少ないため、リードタイムが目に見えて短縮されます。

私自身も博報堂テクノロジーズに入社する以前にAIスタートアップで技術と経営の両面から組織をリードしてきた過去がありますが、これは局所的な効率化ではなく、開発プロセス全体に波及する変化だと感じました。これに組織として適応しなければ、数年で埋められない差が生まれると思いました。

並河:1、2年の遅れが、そのまま競争力とキャリアの差になります。だから私の管掌するセンター約40名の所属員で一気に試すことにしたのです。

評価制度にも一部反映して、自律型AIエージェントの使用を「半強制」する仕組みにしました。ところが、開始2週間で他のチームからも「自分たちも積極的に使いたい」という声が現場から上がりました。その前のめりな反応を見て、「AI駆動開発推進プロジェクト」として全社横断の活動へと規模を拡大したのです。

――約40名で始めた取り組みを、短期間で“自走する動き”に変えられたのは、どこに理由があったのでしょうか。

並河:判断の速度でしょう。私の管掌するセンターでは内製開発が主体なので、外部ベンダーの事情に左右されずに手法を詰められたのも大きいです。AIは進化が速いので、議論に時間をかけすぎると、結論が出た頃には前提が変わってしまいます。

ですから全社タスクフォースは8〜9名の少数精鋭にして、即断即決できる体制にしようと思いました。その領域は変化が激しいので、決める側が現場の最前線を直接グリップして、停滞のボトルネックをその場で外していく必要があると。そのうえで、現場のやり方までは細かく統制しない。中央は方向だけを示し、実装は各チームに委ねる設計です。

ケヴィン:現場に落とすうえで大きかったのは、「AIエバンジェリスト」の存在です。各チームに配置し、そのチーム固有の「プロトコル」に合わせて、AIの使い方をチューニングしていきました。共通ルールを押し付けるのではなく、チームの作法に合わせて最適化する形です。結果として、導入は“やらされ感”よりも“試したい”に近い空気になりました。

並河:情報はすべてオープンにしました。2週に1回の共有会、誰でも参加できる定例、Slackもパブリック運用です。成功事例も失敗事例も隠さない。そうすると、立ち上げの取り組みが、やがて自発的な学習の場に変わっていきます。文化を更新するには、閉じないことが最短距離だと考えました。

並河 祐貴。博報堂テクノロジーズ 執行役員。開発第3センター長
並河 祐貴。博報堂テクノロジーズ 執行役員。開発第3センター長

「Vibe × Agentic」のハイブリッドへ。AI前提で再定義される開発プロトコル

――AIを前提にするとは、開発の進め方をどう変えることだったのですか。

ケヴィン:私たちは大きく二つの使い方を整理しました。一つは「Vibe Coding」。人がAIと対話しながら、指示やフィードバックを通じて創造的に開発するやり方です。もう一つが「Agentic Coding」。タスクを切り出してAIに委ね、GitHubなどを通じて自律的に実行させる。後者は、人が逐一コードを書く感覚とはまったく違います。

並河:重要なのは、どちらが優れているかではありません。仕事の性質で分けることです。たとえば、ライブラリ更新、ドキュメント作成、テストコードの生成のような作業も含めて「重要だけど正直やりたくない作業」はAIに任せます。

その一方で、設計思想や例外処理、セキュリティの最終判断は人が握る。人が「書く」のではなく、「監督する」側に回る設計です。

ケヴィン: AI駆動開発の導入前・後のモニタリングで見えてきたのは、時間の使い方そのものが変わるということでした。単純作業が減ると、コード量を競うのではなく、どれだけ早くリリースできたかを見るようになります。私たちが重視しているのは生成されたコードの割合ではなく、リリース間隔やサイクルタイムです。AIは出力を増やしますが、価値を決めるのは依然として人間です。

ケヴィン・クラッツァ。博報堂テクノロジーズ開発第3センターのエグゼクティブマネージャー。
ケヴィン・クラッツァ。博報堂テクノロジーズ開発第3センターのエグゼクティブマネージャー。

並河:開発プロセスそのものを「AIファースト」で再設計するとは、AIに何を任せるかを決めることです。

すべてを委ねるのでも、従来の延長で使うのでもない。人がやるべきことを削ぎ落とし、アウトカムを生むための「判断」に集中する。その切り分けができるかどうかが、これからのエンジニアの差になると思います。

――AIを前提に開発を加速させるほど、品質やセキュリティの扱いは難しくなります。現場では、どこが最初の難所になりましたか。

ケヴィン:スピードが上がるほど、品質の揺れも増幅されます。特に広告運用の予算管理のように、金銭的な損失に直結する領域は緊張感が違います。判断のミスが損失に直結する以上、「守りのアーキテクチャ」をどこに置くかが焦点になります。速く作れるようになったからこそ、「どこで止めるか」「どこまでを自動化し、どこからを人が握るか」が問われるのです。

並河:自動的なチェックを強め、スピードを落とさずに品質を底上げしようともしていますが、この仕組みを導入してみると、既存のコードについて、改善余地が想定以上に見えてきました。現場から見れば「余計な仕事を増やされた」と感じる局面もあります。ここは痛みを伴いました。

ケヴィン:一方で、隠れていた問題が可視化されたということでもあります。AIという光を当てると、これまで見過ごされてきた粗が一気に表に出ます。最初は摩擦が起きますが、長期的には健全化の入口だと思っています。

並河:だから二段構えにしたのです。チェックはAIで徹底する。ただし最終的なレビューや監督は人が担う。いきなり理想形に振り切るのではなく、技術の進化と現場の準備度を同期させるための「中間地点」を設計しました。スピードと品質を二者択一にしないための現実的な落としどころです。

週次リリース速度41%向上。その先にある、エンジニアの“自己変容”

――プロジェクトの成果として何が見えてきましたか。

ケヴィン:当センターのプロダクトの10ヶ月のモニタリング(導入前26週間、導入後14週間)で、週次リリース速度の平均が41%向上し(p < 0.01、効果量 0.95:大、統計的に高度に有意)、コミット数の底値も約2.4倍に上がる傾向が見えて、不調な週でも生産性が安定したことがわかりました。

私たちが見ているのは「生成量」ではありません。コードの行数が増えたかどうかより、リリース間隔がどう変わったか。バリューを届けるリリースのサイクルが短く安定して回るようになったことが本質的な変化です。こうした傾向を分析して、現在は2026年4月からプロジェクトの本格活動に向けたロードマップを描いている、というのが現時点の進捗です。

並河:重要なのは、成果の定義を変えることです。「どれだけ書いたか」ではなく、「どれだけ速く価値に変えたか」。AIを前提にすると、エンジニアの仕事は“書く”から“判断する”へ寄っていきます。What/Why、つまり価値の設計にどれだけ踏み込めるかが問われます。その意味で、求められる能力は確実に変わります。

ケヴィン:ただ、良いことばかりではありません。単純作業が減ると、これまでクールダウンになっていた時間が消えてしまいます。判断の連続になると、常にレビューをし続けているような状態になり、精神的な疲労が増える可能性もあるでしょう。生産性の向上とバーンアウトのリスクはセットで見ておく必要がありますね。

並河:だからこそ、AIで何を自動化し、どこを人が握るかを設計しなければなりません。AIに職を奪われるかどうかではなく、AIを武器にして、ビジネスのインパクトをどこまで与えられるか。より本質的なアウトカムを生み出す側へ進化できるか。そこに踏み出せる人と組織が、これからの主役になるのだと思います。

私たちはいま、エポックメイキングなタイミングにいます。トレンドが常に変わり続け、勉強ばかりでしんどいと感じることも多いですが、逆に言えば全く退屈しません。10年後の想像がつかない。不確実だからこそ楽しいんです。

ケヴィン:AIは人を減らすための技術ではなく、人の可能性を「拡張」するための技術ですから。

(記事は2026年2月12日時点の情報です)

博報堂テクノロジーズ
https://recruit.hakuhodo-technologies.co.jp/


なみかわ・ゆうき◎ 博報堂テクノロジーズ 執行役員。大手SIerのR&D、ベンチャー企業を経て、メガベンチャーにて、エンジニアとして大規模アバターサービスやスマートフォンプラットフォームのインフラ統括、メディア・ゲーム事業のインフラ組織責任者としてマネジメントに従事。その後、スタートアップ企業2社にて、複数の自社サービスの開発および運用、執行役員や取締役CTOとして経営への参画、開発部門の組織運営、プロダクトおよびデータ基盤の計画立案と開発推進を行う。2021年4月より SO Technologies (ソウルドアウトのソフトウェアカンパニー) 執行役員CTO、2025年4月より博報堂テクノロジーズ執行役員を兼務。

ケヴィン・クラッツァ(Kevin Kratzer)◎ 広告技術(AdTech)や複雑なシステム開発に精通した開発第3センターのエグゼクティブマネージャー。AIスタートアップにてマネージャー兼プリンシパルエンジニアとして従事した後、2023年から現職。5つのフルスタック開発チームを率いながら、センターでのAI駆動開発導入をリードし、全社プロジェクトに参画中。ミュンヘン工科大学 情報科学修士(優等)、米大学にてエグゼクティブMBA取得(優等)。技術と経営の両面からエンジニアリング組織をリードしAI活用を推進。

Promoted by 博報堂テクノロジーズ | text by Ichiro Watanabe | photographs by Shuichi Oda | edited by Asahi Ezure