サルバドール・オルドリカは、The Spanish Group LLCのCEOである。同社は90以上の言語を翻訳する、最高水準の国際翻訳サービスだ。
いま私たちは、国境を越えた会話が日々交わされる現代に生きている。グローバルなマーケティングキャンペーンを書くときも、カスタマーサポートのメールを書くときも、あるいは法的文書を作成するときも、言語は橋渡し役となる。とりわけ映画・テレビの領域では、AIはその橋を迅速に架け、しかも本質的にスケール可能なものにするうえで、大きな助けになっている。
しかし、機械翻訳を一度でも見たことがある人なら誰でも言うように、コミュニケーションと誤解の間には非常に細い境界線がある。AIは速いが完璧ではない。だからこそ、ニュアンスや文脈、文化が関わる場面では、とりわけ人間がなお役に立つ。
本稿では、機械学習、AI、人間の言語スキルの組み合わせを取り上げ、なぜ両方の能力を併用する必要があるのかを考える。
言語サービスにおけるAIの台頭
翻訳と多言語コミュニケーションにおいて、AIはゲームチェンジャーである。さまざまなツール、音声認識(speech-to-text)システム、リアルタイム翻訳アプリが、情報共有の在り方をすでに変えつつある。企業は今や、10年前よりも速く、安く、異なる国のオーディエンスにリーチできる。
機械学習もまた、時間の経過とともに学習し変化するツールを活用し、好まれる言い回しやLOINC言語(論理観察識別子、名称、コード)を学習して、精度を高め、パターンを識別する。端的に言えば、AIは書かれたものをそのまま訳す段階から、言語が実際にどのように使われているかへと進化したのである。
AIは、商品説明、社内メモ、FAQのような大量かつ低リスクのコンテンツにも非常に強力だ。時間を節約し、コストを削減し、必要な仕事をやり遂げられる。
AIが不足し始めるところ
AIがどれほど高度であっても、人間のように言語を真に「理解」しているわけではない。そもそも言語とは、規則や論理以上のものだ。感情、意図、タイミング、ユーモア、文化であり、そして実際には言葉にしないまま表現する事柄でもある。
例えば、英国のイディオムである「cheap as chips」は、機械が別の言語にかなり文字どおりに訳してしまい、その結果まったく意味を成さないことがある。
さらに、気に障るかどうかという問題もある。AIには直感がない。ある言い回しが異なる文化の人にとって侮辱的になり得ることも、あるいは冗談が行き過ぎるタイミングも判断できない。そうした判断はいまだ人間の領域であり、どれほどコードを書いても変えられない。
人間の手触り:ニュアンス、文化、文脈
では、人間はAIにまったくない何を提供できるのか。
まずニュアンスである。行間を読めるのは、人間の翻訳者や書き手だけだ。人間はトーンを理解するため、真剣に言いたいのか、軽やかに伝えたいのか、説得したいのか、安心させたいのかを把握できる。調整すべきとき、翻訳すべきとき、そして直訳では足りないときも分かる。
文化もまた非常に大きな要素だ。言語は単なる言葉ではなく、アイデンティティと結びついている。人間の言語専門家は、地域の慣習、タブー、ユーモア、参照関係を理解している。技術的観点から「機能するはず」のものだけでなく、実際の人々がどう動くのかを把握している。
そして文脈がある。人は、文脈の中でパターンを認識し、何が起きているのかを理解する点で極めて優れている。オーディエンス、目的、そして何が懸かっているのか。AIには、ときにそうした判断ができない。
別のたとえで言えば、AIはターボブースト付きのアシスタントである。人間は編集者であり、ガイドであり、品質管理だ。
AIを使うべきとき、人間を呼ぶべきとき
では、どうすれば中間点を見いだせるのか。どちらか一方しか選べないと言われることもあるが、必ずしもそうではない。要は、両者のバランスを取ることだ。
以下に大まかな指針を示す。
AIは、社内メモやレポートのように、低リスクまたは社内向けのコンテンツで、スピードと量が求められる場合に活用できる。特定の機能に関するサポートチケットが他よりも圧倒的に多い場合には、カスタマーレビューにAIを導入してもよい。あるいは、どの機能が最も需要を生むかが分かっているなら、商品リスティングにAIを使うこともできる。
品質、感情、文化的配慮が不可欠な場合、人間が重要になる。マーケティング、法的文書、人事方針、対外的なあらゆるもの、そしてクリエイティブやブランドのトーンが関わるものすべてだ。
多くの場合、組み合わせが最善となる。誰かが初稿を書き、文章のチェックにAIを使うという方法もある。あるいは、よくある質問への対応にAIを活用し、会話が複雑になった段階で人間が引き継ぐというやり方もある。
このハイブリッド方式は、一般に機械翻訳ポストエディット(MTPE)と呼ばれ、eコマース、メディア、法務サービスのような分野で、ますます一般的になりつつある。
AIだけに頼ることが危険な理由
AIに全面的に寄せたくなる魅力はある。手頃で、速く、いつでも使える。これがAIの力である一方で、リスクでもある。
誤訳された契約は訴訟を招きやすい。無神経さによって販売活動を損なう可能性もあるし、メッセージの伝え方が外れれば、クライアントの自尊心を傷つけることもある。多言語コミュニケーションという文脈では、誤りには金銭的な代償が伴う。
AIにはまだ学ぶべきことが多い。だからこそ、人間の手触りは置き換えられない。たとえAIがほとんどの重労働を担っていたとしても、である。
未来:協働
では、言語のプロフェッショナルはAIに置き換えられるのか。その可能性は低い。だが、仕事の仕方は変わり得るし、すでにある面では変わっている。
翻訳者、ライター、言語の専門家は、これまで以上に編集者、レビュー担当のコンサルタント、文化のガイドとしての立場を担っている。AIと連携し、その結論に影響を与え、人間の知性が最も重要となる部分を補っている。
多言語コミュニケーションの未来は、人間とAIが協働することだと私は考える。両者を組み合わせれば、1人だけの場合よりも速く、文化的により適切なメッセージを生み出せる。
最後に
言語は深く人間的なものだ。私たちが働き、慰め合い、関係を築くための方法である。AIは多くのオペレーション業務を担えるし、グローバル規模で物事を速くできる。しかし、メッセージが本当に重要で、オーディエンスが正確さ以上のものを求めるとき、人が不可欠になる。
だからこそ、AIにできることは受け入れたい。一方で、言語の人間的な側面を忘れてはならない。言語は適応し、理解し、意味を加える。
結局のところ、コミュニケーションとは、言葉が本当に意味するものを伝えることなのだ。



