米AI企業が知的財産侵害を警告する一方、中国のAI関連株は過熱し億万長者を輩出
米国のAIラボが知的財産侵害を警告する一方で、中国のAI関連株は過熱している。MiniMaxとZ.ai(旧称Zhipu。米企業の主張では名指しされていない)は1月に香港で新規株式公開(IPO)し、新たな億万長者を生んだ。株価の急騰により、MiniMaxの会長兼CEOであるヤン・ジュンジエと、Z.aiの会長リウ・ドゥビンの純資産は、それぞれ71億ドル(約1.1兆円。1ドル=157円)、87億ドル(約1.4兆円)へと跳ね上がった。いずれも、Anthropicの7人の億万長者共同創業者(現在はいずれも約70億ドル[約1.1兆円])の範囲におおむね入る。
ほかにもいる。Z.aiの上昇で、リウの共同創業者で清華大学教授のタン・ジエも新たな億万長者となり、資産は19億ドル(約2983億円)とされる。DeepSeek創業者のリャン・ウェンフォンは2025年11月、Forbes Asia「China’s 100 Richest(中国の富豪100)」リストで最も裕福な新顔として登場し、推定資産は115億ドル(約1.8兆円)とされた。さらに、Moonshot AIの創業者兼CEOのヤン・ジーリンは、AIモデル「Kimi」を手がける同社の現在の資金調達ラウンドが、報じられている100億ドル(約1.6兆円)の評価額で成立すれば、億万長者になる見通しだ。比較可能な評価指標に基づけば、Baichuan(バイチュアン)のワン・シャオチュアンとStepful(ステップフル)のジアン・ダーシンも、億万長者クラブ入りした可能性がある。
米国側では、民間投資家がAnthropicとOpenAIを、それぞれ3800億ドル(約59.7兆円)、8400億ドル(約131.9兆円)と評価している。両社はいずれもまだ上場していないが、上場すれば、まだ現金化されていない「帳簿(計算)上の資産価値」は市場による評価にさらされる。
蒸留モデルは運用コストを下げ、実質的に価格戦争を加速
この巨額資金の下でくすぶる緊張の源はこうだ。蒸留により、圧倒的に小さなモデルが、より大きなモデルから迅速かつ効率的に学べる。結果として、蒸留モデルは、はるかに少ない計算需要で、最先端モデル(フロンティア・モデル)の性能の80〜90%に到達しうる。これは運用コストを下げ、実質的に価格戦争を加速させる。たとえば、2月に公開されたZ.aiの「GLM-5」は、Anthropicの「Claude Opus 4.6」に比べ、入力トークン(文章を処理単位に分割したもの)当たりのコストが概ね5分の1、出力トークン当たりでは10分の1程度だという。
蒸留だけで優れたモデルができるわけではない。強力なベースモデルと、高度なエンジニアリング人材も必要である。しかし、蒸留が競争の場をならす効果を持つことは間違いない。
トップのオープンウェイトモデルは中国勢、米国スタートアップは中国のモデルに依存
蒸留の有無にかかわらず、中国のAIラボはシェアを伸ばしているように見える。トップのオープンモデルは中国勢であり、オープンモデルを使う米国スタートアップのうち80%は中国のモデルに依存していると、アンドリーセン・ホロウィッツのゼネラル・パートナー、マーティン・カサドは先月Forbesに語った。乗り換えコストは最小限である。開発者は主要クラウド事業者や、OpenRouter(オープンルーター)のようなプラットフォームを通じ、ほとんど苦労なくモデルを切り替えられる。
D.A. Davidsonのアナリスト、アレクサンダー・プラットは「いずれにせよ、投資家が、こうしたAIラボが将来どんな価値をもたらすのかを考え直すきっかけになっています」と語る。「米国のAIラボの価格決定力は、今後どうなるのでしょうか」。


