ロシアはもはやイランに依存していない
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡はプーチン大統領にとって打撃となったと報じられている。ロシアにとって、イランとの関係はシリアとの関係より相互に有益だった。ウクライナ侵攻の初期段階で、イランはロシアに計り知れない価値をもたらすことが判明した。ロシア軍は当初、イラン製無人機「シャヘド」に大きく依存していた。同無人機はウクライナの民間人や社会基盤に対する攻撃の主な手段だったが、ロシアは2023年以降、国内のタタルスタン共和国経済特区内にある工場で、シャヘドとほぼ同一の無人機を大量生産できるようになった。
イランはまた、制裁下でもエネルギー産業を機能させ続ける方法について、ロシアに助言した。しかし、ロシアはもはや経済制裁を回避する方法について、イランの指導を必要としていない。制裁を逃れて原油を輸出する「影の船団」を運用するなど、独自の代替法を見いだしたからだ。このように、ロシアはあらゆる点でイランへの依存から脱却しつつあるのだ。
米国のイラン攻撃がロシアにもたらす利益
米国とイスラエルによるイランへの攻撃は、ロシアに利益をもたらす可能性がある。まず、原油価格が上昇している。米イスラエル両軍による攻撃を受け、イラン当局はホルムズ海峡を封鎖したと宣言し、船舶に引き返すよう命じた。同海峡は世界の石油・天然ガス取引の20%以上が通過する海上輸送の要衝だ。同海峡の事実上の封鎖は市場に衝撃を与え、原油価格が急騰する可能性があるが、これはロシアにとっては朗報だ。エネルギー収入はロシア連邦予算の約45%を占めており、原油価格の急騰は同国の低迷する経済に一定の救済をもたらし、ウクライナ侵攻の資金にもなるからだ。
第二に、イランは空爆から自国を守るため、ロシア製携帯式防空ミサイルシステム「ベルバ」500基をはじめとする武器の購入契約を結んだ。ベルバは低高度の航空機のみを標的とすることができ、米軍やイスラエル軍の攻撃に対しては無力だが、イランは今後もロシア製兵器の調達を続けるだろう。ロシアはイランの主要な武器供給国で、1979年以降、同国の武器輸入の約3分の1を占めている。イランへの武器輸出は、ロシア政府の重要な収入源となっている。
第三に、米国とイランの対立が長期化すれば、米国の重要な兵器備蓄が枯渇する恐れがある。こうした兵器の消耗は、ウクライナへの軍事支援を継続する米国の能力を損なうことになり、ロシア側に有利な結果をもたらすだろう。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、中東情勢がロシアとの和平交渉に直接的な影響を与えることを認めている。
トランプ大統領のイラン攻撃でロシアは得るものより失うものの方が多いように見えるかもしれないが、同国は世界の不安定化を最大限に利用する方法を見いだしている。ロシアは脇に追いやられるより再び適応し、複数の選択肢に賭けを分散させ、混乱を自らの戦略目標達成に利用する可能性がある。


