ジェイソン・フードマンは、投資・コンサルティング・テクノロジーサービス企業Archetypeのマネージングディレクター(テクノロジー担当)である。
私はテック系スタートアップを志す起業家たちのピッチ資料を数多く見て、プレゼンテーションを多く聞いている。予想どおり、品質、構成、プレゼンテーション、実行力には大きな幅がある。とはいえ、若い起業家が犯しがちな最も一般的な誤りの1つは、「フォーカス」をめぐるものだ。
創業初期の創業者はしばしば、善意ある助言者、初期投資家、そして数人の初期顧客からの助言の奔流に反応している。課題が現実的であることも、誰もが満足するようにしたいという欲求が強いことも理解できる。しかし、フォーカスを保つ答えはシンプルでありながら、多くの人にとって信じがたいほど難しい。それは「ノー」と言うことだ。ときには、それが驚くほど素晴らしいアイデアや提案であっても、単にそれが自分のフォーカスではないという理由で「ノー」と言わなければならない。
落とし穴:フォーカスが失われる典型的な場面
フォーカスをどう保つかを説明する前に、ミッションが際限なく膨らみ、プロダクトとビジョンが散漫になりかねない典型的な場面を見ておこう。
• 投資家のビジョン:会社は立ち上げたばかりで、おそらくMVP(実用最小限の製品)の段階にある。そこに、1人または複数の投資家が、暗にあるいは明示的に、アイデアの拡張、ピボット、別方向へ向かう新機能の追加を求めてくる。彼らの主張は力強く説得力もあるが、現実には、彼らが求めることはあなたのフォーカスを損なうものだ。
• 「クジラ級」顧客:初期の顧客、あるいはもっと悪い場合には特定の大口顧客1社が、自社の個別ニーズに固有の機能を強く求めてくる。その作業は、真の広いターゲット市場の利益に資さない可能性があり、プロダクトを「1社向けの受託ソフトウェア」に変えてしまう。
• 熱心な助言者:誰でも「アドバイザー」になれる一方で、初期段階の企業に助言したがる自称エキスパートの幅は広い。私は、関連経験がほとんどない初期アドバイザーが、善意でひどい助言をするのをよく目にする。誰の話を聞くかに注意すべきだし、その助言が客観的に素晴らしくても、フォーカスを曇らせるなら「ノー」と言うべきである。
フォーカスを保つ方法:中核となる一文
多くの創業者は、出だしからこれを間違える。コードを1行も書く前(あるいはプロンプトする前)に、自分が解決している問題が何なのかを正確に定義し、言葉にせよ。その問題を、揺るぎない1つの文章で要約できるようにしておこう。
私が解決している問題は、<ここに記入>である。
それがフォーカスである。
創業初期の会社は、万人にとっての何かにはなれない。おそらく、多くの人にとっての多くのものにすらなれない。問題を1つ選び、その問題に集中し、誰よりも先に(あるいは誰よりもはるかにうまく)解決し、そのフォーカスを徹底的に守り抜け。
明確さを保つためのシンプルな習慣
私のおすすめは、解決している問題を表すその一文──つまり自分のフォーカス──を紙に印刷し、デスクの目立つ場所に置くことだ。新機能、新たなスコープ変更、方向転換、新モジュール、あるいは信じられないほど素晴らしい新アイデアが出てくるたびに、その紙を見て自問する。
• 「これは私のフォーカスに完全に当てはまるか?」
• 「それとも、どれほど良いアイデアであっても、そのフォーカスの外にあるか?」
些細に聞こえるかもしれないが、創業者が会社のフォーカスを保てなかったせいで、散漫で混乱したピッチ資料を目にする頻度の高さには驚かされる。フォーカス不足を指摘されると、起業家はしばしば言い訳をする。
• 「アドバイザーたちが、私のソリューションはグレーゾーンにあると言い続けるんです」
• 「私たちは1つの具体的な何かではなく、いくつもの問題を解決しているんです」
• 「X、Y、Zのマッシュアップなんです」
フォーカス喪失の隠れたコスト
混乱したピッチ資料にとどまらず、フォーカスを失うことは、時間と資金の両面でスタートアップに大きな代償をもたらす。市場適合がある状態で始めたはずが、フォーカスの喪失によって、文字どおり市場適合のないままローンチしてしまうことすらある。特定顧客のために機能を追いかけたり、誰かのためにサイドプロジェクトを作ったりするたびに、コアの問題に向けた努力が薄まる。フォーカスと100%関係しないものを作るたびに、フォーカスは希薄化する。こうした寄り道は、本当に重要な1つのことの実行を遅らせ、スケジュールを後ろ倒しにし、貴重なリソースを消耗させる。
私からの助言
私の助言はシンプルだ。とりわけ自己資金で進める創業初期のスタートアップならなおさらである。1つのことに徹せよ。それを定義し、その問題を解決することをフォーカスに据え、そのフォーカスを徹底的に守り抜け。問題を1つ選び、その問題を解くための最良のプロダクト/ソリューションを開発せよ。誰であれ、どんな状況であれ、その目標を追う過程でフォーカスを失わせてはならない。結論はこうだ。将来の成功は、おそらく「ノー」と言う力にかかっている。



