本連載では、エンゲージメント戦略分野を得意とする戦略コンサルティング・ファーム、ブランズウィック・グループが発行する国際的な知見誌Brunswick Reviewから、グローバルの最前線でマルチステークホルダー・エンゲージメントを実践するヒントを探っていく。
第5回はBrunswick Social Value ReviewのIssue 6「AI Impact」に掲載されたエレン・マッカーサー財団(EMF)CEO、ジョンクイル・ハッケンバーグ氏との対談「AIとサーキュラーエコノミー」をご紹介したい。
第1章|サーキュラーエコノミーは「環境政策」から「供給網戦略」へ
サーキュラーエコノミーは、もはや廃棄物削減の取り組みではない。重要鉱物の確保、エネルギー転換、産業競争力の再構築を含む供給網戦略へと進化している。
EUはESPR(Ecodesign for Sustainable Products Regulation、持続可能な製品のためのエコデザイン規則)やデジタル製品パスポート(Digital Product Passport、DPP)を通じて、製品設計段階から循環を組み込む制度を整え、ルールメイカーとしての地位を確立しつつある。米国はIRA(Inflation Reduction Act、インフレ抑制法)を軸に、重要鉱物・電池サプライチェーンへの大規模投資を進める。中国は「循環経済促進法」や第14次5カ年計画、さらに中国資源循環集団有限公司(CRRG)の設立などにより、国家主導で資源循環プラットフォームを構築し、資源安全保障を前面に押し出す。
EMFのハッケンバーグ氏は対談の中で、AIは複雑なシステムを横断的に捉え、循環・気候・イノベーションを統合する力を持つと指摘する。サーキュラーエコノミーは個別最適ではなく、システム全体の再設計であるという前提に立った議論である。
第2章|日本は「リサイクル先進国」だが「循環構造」は未完である
日本はしばしば「リサイクル大国」と評される。実際、制度整備の早さと現場の運用力は国際的に見ても高い水準にある。たとえば、日本の廃棄物リサイクルも、再生材がどれだけ一次資源を代替できているか(=投入側の循環)を示す再生材使用率も日本とEUは同水準と言われる。どの先進地域でも“投入側の循環”は依然として低位である。



