AIは日本の循環経済を加速できるか━━「リサイクル大国」の次なる構造転換

エレン・マッカーサー財団(EMF)CEO ジョンクイル・ハッケンバーグ氏(提供:エレン・マッカーサー財団)

但し、日本にはさらに大きな構造課題が存在する。日本の循環産業は小規模分散で、循環事業を担う企業の9割が中小企業であるという指摘がある。欧州にはVeoliaのように、循環領域で大規模に投資・統合できるプレーヤーであるメガリサイクラーが存在し、制度と市場が噛み合って取り組みが進む環境が整っている。一方、日本は自治体が回収の主体で、民間が自治体境界を越えて統合しにくい。結果として、技術はあるのに、データ・物流・投資が全国最適に集約されにくい構造が残る。

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加えて、日本には法令が存在するにもかかわらず、循環を立ち上げにくいという制度上の限界がある。

日本は、循環型社会形成推進基本法や資源有効利用促進法といった品目横断の枠組みを持ち、さらに容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、自動車リサイクル法などの個別法で回収・再資源化を制度化してきた。これらは分別・回収の運用を社会に定着させる上で重要な役割を果たしてきた。近年では、プラスチック資源循環促進法(2022年施行)のように、設計・製造・販売・回収・再資源化までを一体で捉える比較的横断的な法制も整備されつつある。プラスチック分野においては、設計段階からの配慮義務や自主回収の促進など、循環を前提とした制度設計が進み始めている点は評価すべきである。

しかし、こうした取り組みは依然として原則素材別・品目別の枠組みにとどまる。循環型社会形成推進基本法は理念法として方向性を示すが、素材横断でのデータ標準化や、自治体境界を越えた広域最適の実装主体、再生材の需給を全国規模で統合する市場設計までは規定していない。結果として、回収や処理は機能しても、再生材が安定的に投入側へ戻り、設計段階へフィードバックされ、事業としてスケールするという循環が十分に完成しない。

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だからこそ、AIが介在する余地は、分別技術の高度化にとどまらない。縦割りの制度で分断された情報を素材横断で接続し、広域最適の設計図を描き、需給と投資の見通しを与えることにこそ、本質的な可能性がある。

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文=唐木明子

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