以下はスウェーデン在住で、『スマホ脳』『多動脳』(ともにアンデシュ・ハンセン著、新潮社刊)をはじめ多くのベストセラー書籍の翻訳者として知られる久山葉子氏による寄稿である。
日本の磁器照明作家、飛松弘隆氏のランプシェードがヨーロッパで注目を浴びている。ストックホルム家具見本市やコペンハーゲンのデザインイベントに出展したのを機に、レストランやセレクトショップ、個人の高級住宅などに採用されてきた。
いずれもデザイン性の高いヨーロッパ各国で注目を浴びた理由を、飛松氏の作品をヨーロッパに紹介するJAPAN FORMの机玲子氏はこう語る。
「飛松氏のランプシェードは、1点ずつ手作りで制作されています。長年の素材研究と高い技術の積み重ねによって生まれた作品で、陶芸をよく知る人ほど、その難しさや技術の高さに気づくようです」
日本がはぐくんだ西洋の伝統が、海外で再注目
飛松氏は1980年佐賀県生まれ。多摩美術大学で陶芸を学び、鋳込みによる彫刻的な造形表現を探求してきた。現在は東京を拠点に「飛松灯器」のブランド名で磁器照明の制作を行っている。
その作品は20世紀初頭に西洋および日本で広く親しまれ、蛍光灯の普及により衰退したオパールガラス(乳白色ガラス)のランプシェードに着想を得ており、本来持っていた文化的価値を現代の暮らしの中で再解釈し、よみがえらせる試みでもある。
磁器が持つ透光性に着目し、光の透け方を緻密に調整するための素材研究と制作技術に10年以上をかけてきた。そうやって生み出されたランプシェードは、わずか2、3ミリの薄さながらも強度を保ち、彫刻的で静謐だ。やわらかく繊細な光のニュアンスを放ち、空間にほのかな温もりと穏やかな存在感をもたらす。1点1点、素材への深い理解と繊細な感覚のもと、手作業で鋳込み仕上げられており、詩的な造形と確かな技術は、日本国内のみならず海外でも高く評価されるようになった。



