テクノロジー

2026.03.08 09:00

グーグルとAIが、1990年代ナレッジ・マネジメントの「常識」を覆した

ブリン(向かって左)とペイジ(JOKER/Martin Magunia/ullstein bild via Getty Images)

ブリン(向かって左)とペイジ(JOKER/Martin Magunia/ullstein bild via Getty Images)

1990年代のビジネス界では、社内のノウハウや文書をデータベースに囲い込む「ナレッジ・マネジメント(KM。Knowledge Management)」が競争力の源泉とされていた。大企業は社内の知見を収集し、従業員の頭の中にある情報を共有可能な形にしようと試みた。知的財産や独自のノウハウを“自社の中”だけで抱え込むことが、ビジネスの優位性を保つための常識だった。

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しかし、1998年に誕生したグーグルは、この常識を根本から覆した。内部の知識を管理するのではなく、“世界中の外部情報”をアルゴリズムで整理したのである。さらに2020年代に入ると、生成AIが台頭した。AIが扱う情報の規模や鮮度、巨額の投資額は、かつての企業内KMとは桁違いの次元に突入している。もはや企業の競争力は、自前主義を捨て、AIという巨人と「建設的に協働」する道をいかに探るかにかかっている。

知識を管理する「ナレッジ・マネジメント」

知識を管理する「ナレッジ・マネジメント」という発想は新しいものではない。古代文明は、アレクサンドリア図書館(紀元前3世紀、エジプト)のような図書館や文書館を通じて、知識を整理し、保存し、広めるために多大な努力を払った。同図書館では推計50万巻の巻物が目録化され、要約されていたという伝承もある。こうした先駆的な取り組みは、キュレーション(選別・整理)を重視しており、のちの現代的な知識共有システムの到来を先取りしていた。

1990年代、組織内部で活用するためのナレッジ・マネジメントが爆発的に広がった

1990年代初頭、インターネットの到来が「知識を管理する」可能性への関心を新たに呼び起こした。マッキンゼー、アーンスト・アンド・ヤング、アクセンチュアなどの米国先進企業や、スウェーデンの保険会社スカンディア(Skandia)のような早期に導入した企業は、組織内部から知識を集め、蓄積し始めた。当時の支配的な考え方(パラダイム)は、次のとおりである。

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・組織内部の明示知(形式知)の捕捉:マニュアル、報告書、ベストプラクティス、教訓など、成文化・文書化された情報を、社内リポジトリ、イントラネット、データベース、初期のKM(ナレッジ・マネジメント)システムに取り込む

暗黙知の外在化:従業員の頭の中にある暗黙知(個人的・経験的なノウハウ)を、実践コミュニティ(コミュニティ・オブ・プラクティス)、インタビュー、ストーリーテリングを通じて外化し、共有可能な形式へ落とし込む

リスク軽減システムの構築:従業員の離職、退職による知識流出、成長・グローバル化する企業でのサイロ化(縦割り)といったリスクを抑える仕組みを構築する

一部の枠組み(例:マイヤー&ザック[Meyer & Zack]のサイクル)は外部ソースにも言及していたが、重点はあくまで内部にあった。すなわち、組織がすでに知っていることを特定し、獲得し、保管し、共有することが中心であり、外部からの調達は二次的・補完的で、出発点ではなかった。世界銀行も1996年に知識イニシアチブを打ち出した。

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翻訳=酒匂寛

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