1998年、グーグルはまったく異なる形で知識を管理し始めた
これら1990年代KMの取り組みは、主として内部利用のための内部知識に焦点を当てていた。1998年、スタンフォード大学で博士課程に在籍していた大学院生のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、グーグル(Google)というスタートアップを立ち上げ、正反対のアプローチを採用した。彼らが狙ったのは、外部の知識を取り込み、外部の利用者のために役立てることである。グーグルのスタッフが「自分たち固有の知識」を持っていたわけではない。強みは、情報や知識がどこにあっても見つけ出し、整理し、使える形にすることにあった。したがってグーグルは、「マネジメント」「知識」「知識を管理するとは何か」について、1990年代KMとは大きく異なる考え方を持っていた。
外部志向に加えて、1990年代KMとは次の10点で根本的に異なっていた。
(1)驚くほど壮大な目標: グーグルは、単一の組織内の知識だけでなく、「世界中のあらゆる情報を整理し、有用なものにすること」を目指した
(2)一途な使命: グーグルは情報の整理という単一の使命を持つ企業であり、コンサルティング会社や銀行の付属事業ではなかった
(3)アルゴリズムの活用: アルゴリズムの活用により、どの情報が有用であるかを発見・評価することが可能になった
(4)ユーザーへの注意深さ:ユーザーに対する高い注意力により、受け取った問い合わせに対する回答を継続的に調整することができた
(5)若く革新的なスタッフ: KM企業のような経験豊富な専門家ではなく、若く革新的なスタッフが採用された
(6)優れたビジネスモデル: 1990年代型KMを追求する企業に比べ、指数関数的に多くの資源を生み出す卓越したビジネスモデルを構築した
(7)外部知識のリアルタイム発見能力: ウェブ検索、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)、インデックス、パートナーシップを通じて、外部の知識をリアルタイムで発見する能力を備えていた
(8)知識の即時検証:発見した知識について、鮮度チェック、情報源の信頼性評価、検証シグナル、グラウンディング(実データに基づく裏付け)メカニズムによる即時認証を行った
(9)対話型の知識提供:発見した知識を対話的な形式で提供した
(10)異なるマネジメント手法:1990年代KMは、短期的な財務目標に焦点を当てた階層型組織に組み込まれ、硬直的なプロセスと保護されたIP(知的財産)に依存していた。一方、グーグルは「マネージャーなきマネジメント」を試みた存在であり、これは21世紀のビジネスを支配することになる手法であった。それは顧客への価値提供に対する執着、垂直型のサイロではなくフラットで双方向的なネットワーク、そして固定的なプロセスではなく適応的なマインドセットを特徴としていた
※編注:グーグルは、マネージャー排除の試み自体は短期間で断念している。「Project Oxygen」「Project Aristotle」による検証の結果、従来の命令・統制型の官僚的マネジメントから脱し、マネージャーを“コーチ”(支援者)のような存在として位置付け重視する企業となった。


