食&酒

2026.03.03 10:04

「体にいい」食品ブランドを立ち上げるために本当に必要なこと

2020年以前、米国の消費財(CPG)市場では年間およそ3万点の新製品が発売された。平均的な食料品店の棚をそれだけで埋められるほどの数である。とはいえ、新しさと持続力は別物だ。発売後の最初の2年間に売上を維持または伸ばせるのは全体の約30%にとどまると推計されている。新規雇用を伴う事業所のうち約3分の2が2年目を越え、5年目まで生き残るのは約半数だという。

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そうした環境の中で、「体にいい(better-for-you)」ブームは機会であると同時に、圧力鍋でもある。2024年には、機能性飲料などのカテゴリーで数百もの新商品が投入された。投資家も起業家も買い物客も「体にいい」食品のイノベーションを注視している一方で、店頭の現実は依然として熾烈で不確実だ。2024年のデータによると、同年に北米で発売された新商品のうち、真に新しい消費財はわずか約29%にすぎず、大半は既存製品の派生版、配合変更、パッケージ刷新によるものだった。さらに2024年初頭の食品・飲料の新規投入でも、「改良(renovations)」ではなく真の新商品だったのは26%にとどまり、20年前と比べて大幅に低下している。

これは、生存率を考慮する以前の段階から、突破を狙う食品起業家にとって競争環境がいかに厳しく難しくなっているかを示している。では、混み合い変化の速い市場で、意図してスケールさせていくには実際に何が必要なのか。

ここでは、「体にいい」食品ブランドを立ち上げた3人の女性共同創業者が、その経験を語る。

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マダリナ・デフタ(Kaizen Food Company CEO兼共同創業者)

Kaizen(カイゼン)は「継続的改善」という考え方を核にした食品ブランドである。主原料にルピナス豆を用い、低糖質・高タンパクのパスタ、ライス、マカロニ&チーズの代替品を提供している。製品は植物由来でグルテンフリー、ケトジェニックダイエットにも対応し、従来のパスタより炭水化物を抑えつつ、タンパク質と食物繊維を大幅に多く摂れるよう設計されている。慣れ親しんだ食を楽しみながら、より健康的な食生活の目標を支えることを狙う。

Kaizenの着想は何だったのか。

マダリナ・デフタ:Kaizenは、夫が健康を取り戻した個人的な歩みから着想を得た。100ポンド以上減量し、その変化をオンラインで共有したところ、大好きな食べ物と健康目標の間で妥協を迫られている人たちに深く響いていることがわかった。私たちは食いしん坊で、健康的な生活を続けるには、制限だけではうまくいかないと考えた。まずは自分たちのために、パスタから始めて機能性のある料理をつくった。高性能な栄養というレンズを通してコンフォートフードを再構築したのだ。高タンパク、低糖質、高食物繊維である。

コミュニティの反応が大きくなるにつれ、個人的な解決策として始まったものが、より大きなミッションへと変わった。Kaizenはコンフォートと機能を両立させる。好きな食べ物に、必要なタンパク質と栄養を備えさせる。現在、私たちの製品は、人々の健康の旅を後押ししている。コンフォートとウェルビーイングは両立でき、妥協は不要だということを示すために。

そのアイデアを実際の製品にするための最初のステップは何だったのか。

デフタ:アイデアを現実の製品に変えることは、わくわくする一方で圧倒される感覚でもあった。大企業の環境で働いていた私たちは、最終的にスケールさせるには何が必要かを理解していた。強いブランドとパッケージ、商業生産ライン、強靭なサプライチェーン、適切な物流パートナー。大きなアイデアはあるが資本の乏しい2人にとっては、とりわけ気の遠くなるリストだった。だが完璧なタイミングを待つのではなく、とにかく始めることを選んだ。地元のインターナショナルマーケットに行き、高タンパクで低糖質な粉を見つける限り買い集め、キッチンを実験場にした。最初のパスタの「試作品」は、空のワインボトルで伸ばし、ナイフで手切りした。商業的に成立するものにはまだ程遠かったが、違いのあるもの、追いかける価値のあるものを生み出したと気づけるだけの手応えはあった。

ブランド立ち上げの経験で意外だったことは何か。

デフタ:最も意外だったのは、ブランドづくりが優れた製品をつくることをはるかに超えるという点だ。それは挑戦的であると同時に、深く力を与えてくれる旅でもある。財務とオペレーションの経験は強固な基盤づくりに役立ったが、起業の現実に本当に備えることはできない。レジリエンス、適応力、そして信念を絶えず試される。

顧客がそれぞれの健康の旅の中でKaizenの影響を感じている様子が見え始めると、報われる以上のものになった。想像もしなかったことを成し遂げようと突き動かされる。第一世代の移民として、他者を力づけるものをつくりながら自分たちの夢を追うことは、この経験の中でも最も意味のある部分の1つである。

食品商品のアイデアがある人に、どんな助言をするか。

デフタ:まず、自分が本当に解決したいと思える問題から始めるべきだ。食品ブランドづくりは、予想しきれない形であなたを試すからである。小さく始め、速く学び、コミュニティに導いてもらうこと。勢いと生のフィードバックは、どんな計画よりも多くを教えてくれる。事業のあらゆる部分を学ぶ準備をし、早い段階から強い基盤づくりに集中する。しかし、前に進む前に完璧を待ってはならない。目的意識を手放さず、道が不確かに感じられても進み続ければ、その旅は単に製品を生むだけではない。ミッションを前に運び、実際のインパクトを生み出すものを築くことになる。

付け加えるなら、Kaizenを築くことは、女性CEOとして自分の声を持つことを学ぶ機会でもあった。長い間、真剣に受け止めてもらうには一定の型に合わせなければならないと感じていた。しかしこの旅は、リーダーシップは決断力と共感、分析性と深い人間性を両立できるのだと教えてくれた。製品やミッションを超えて、私たちの物語が示したいのは、意味あるものを築くために自分を変える必要はないということだ。

レイチェル・マンスフィールド(Cadootz共同創業者兼共同CEO)

Cadootz(カドゥーツ)は子ども向けスナックのブランドである。認証オーガニックのホールフードクラッカーを製造し、グルテンフリーで、種子油と人工成分を使用せず、1食あたり適度なタンパク質も摂れる。子どもにも大人にも気持ちよく食べられるスナックを家族に提供する。

Cadootzの着想は何だったのか。

レイチェル・マンスフィールド:私は3人の子どもの母親で、すべての条件を満たす子ども向けスナックの選択肢が限られていることに本当にうんざりしていた。学校に持っていけて、タンパク質が摂れ、しかもオーガニックなものが欲しかった。夫のジョーダンと私はベンチャーキャピタルファンドを運営しており、8年以上この分野に投資してきた。投資できる、より健康的な子ども向けスナックブランドを探したが、見つからなかった。だから夫に「私たち自身でやるしかないと思う」と言った。やりたかったわけではないが、誰かがやらなければと感じたのだ。実際に立ち上げる3年前から、配合と重要な柱を見極めるプロセスを始めた。これはミッションドリブンなブランドである。

そのアイデアを実際の製品にするための最初のステップは何だったのか。

マンスフィールド:Selva Venturesのキーバ・ディッケンソンに電話をした。彼は共同投資家で、この領域で何度も一緒に仕事をしてきた協力者である。5年前に初めて会ったとき、もし製品をつくりたくなったら電話してくれと言っていた。そこで私は「子ども向けスナックブランドを始めたい」と伝えた。

最初のステップは、小さくても強いチームをつくることだった。私、キーバ、そして夫のジョーダンである。次に、私がキッチンでつくったレシピをスケールアップできる適切なR&Dパートナーを見つける段階に入った。Cadootzの配合を完成させるまでに3年かかった。つくるのが難しい製品だったが、私たちのチームはやり遂げた。

食品商品を立ち上げる経験で意外だったことは何か。

マンスフィールド:とにかく時間がかかることだ。ここまで来るのにとても長い時間がかかった。立ち上げるまでに3年である。他の創業者への見方も変わった。待ち時間が非常に多い。私たちは多くの認証を取得しているし、適切な原材料を調達しなければならない。欲しい名称が使えるかどうかを待つ必要もある。時間とエネルギーと忍耐が要る。そして発売したら、誰かが買ってくれるのかと不安になる。だが2026年1月の発売当日、数時間で完売した。素晴らしい感覚だったし、とても報われた。世に出た今、リテーラーやブローカーから連絡が来ており、2026年6月の初の全米小売ローンチに向けて準備を進めている。

食品商品のアイデアがある人に、どんな助言をするか。

マンスフィールド:まず、譲れない条件を整理することだ。必ずやるべきことを明確にし、すべてはできないと理解する。自分のブランドで絶対に譲らない重要属性は何か。3〜5個に絞るとよい。私たちの場合は、オーガニック、種子油不使用、タンパク質、主要アレルゲン不使用、「ナチュラルフレーバー」不使用である。その譲れない条件を守り、現実的であること。誰かに「無理だ」と言われたら、自分の直感に従うべきだ。複数の人からグルテンやナチュラルフレーバーを加える必要があると言われたが、私は譲らなかった。それでも実現できた。

ポーラ・ライマー(Crepini共同創業者兼CEO)


Crepini(クレピーニ)は当初「Naked Crêpe」で立ち上げ、その後、ネット炭水化物ゼロでケトジェニックダイエット対応の「Egg Wraps」で市場を革新した。現在はパンケーキ、ラップ、クレープ、すぐ食べられる具入りラップなど多様な製品を展開している。ファミリービジネスであり、ポーラは夫のエリックとともにCrepiniを運営する。息子のサムとその妻リサも事業に関わっている。小規模な事業であるため、全員が多くの役割を担っている。

Crepiniの着想は何だったのか。

ポーラ・ライマー:私たちはITコンサルティングで非常に成功していたが、中年の危機に直面した。その危機は、人生で最も刺激的な時期の1つへと変わった。そこで学んだ最も大きなことの1つは、私たちの起業の試みに欠けていたのは、自分たち自身の製品を持つことだったという点である。私たちは、育ってきた中で親しんだクレープとブリニを、米国のあらゆる家庭に届けたいというビジョンを抱いた。家族のレシピをベースに、健康的でバランスがよく、米国の消費者に評価されるレシピをつくりたかった。

それは本当に瞬時に生まれたアイデアだった。40代半ばでIT事業が買収されたとき、私は美しいキッチンにいて、ようやく自由に探求し、料理し、子どもたちの世話をよりできるようになった。頂点となる瞬間は、私たちがこのクレープ、このブリニを楽しんでいるが、それをアメリカナイズできると気づいたときだった。バターや余分な材料を多用する東欧風ではなくなる。軽く、フランスのクレープと東欧のブリニの中間のようなものになる。ほうれん草とフェタチーズなど、さまざまな面白い具材で巻ける。古い家族のスタイルでつくりつつ、新しい消費者のためのものにしよう、というのがビジョンだった。

そのアイデアを実際の製品にするための最初のステップは何だったのか。

ライマー:北米には、私たちの望む形でこれをつくれるメーカーがなかった。私たちはメーカーになることになった。食品安全と品質、生産とレシピのスケール方法、人員の採用について学ぶ必要があった。驚きは多かったが、どれも本質的にネガティブではなかった。私たちは常に課題に向き合い、やり抜いてきた。起業家は壁にぶつかる。だが一歩引いて扉を見つけるのである。

いくつかのアイデア検討を経たが、2018年に出したクレープとエッグラップは非常に人気だった。そのとき、グルテンフリーにしてクレープを変革する必要があるとわかった。そこから生まれた最新製品が、プロテインパンケーキである。本物の原材料、カッテージチーズ、卵白、オート粉を使っている。SNSで栄養面の利点が語られているのを見ると、とても幸せな気持ちになる。

2024年、Crepiniは米国最大級の卵生産者の1つであるCal-Maine Foodsと合併し、合弁事業を設立した。そのパートナーシップにより、私たちはスケールと垂直統合を進められている。

Crepini立ち上げの経験で意外だったことは何か。

ライマー:始めた当初、私たちは食品業界のことを何も知らず、学ぶべきことが多かった。また、以前の顧客は金融会社やウォール街の企業だったため、消費者と直接向き合うことは新鮮だった。苦情を受けたときの私たちの反応は「どう改善すべきか」だった。

もう1つの驚きは、消費者が求めるものをつくるために必要な粘り強さと資本の大きさ、そして製品の栄養品質を損ないうる原材料を加えたい誘惑に負けないことの難しさである。私たちには15年かかった。どんな事業でもそうだが、浮き沈みはある。利益が出た年もあれば、出なかった年もある。それでも続けた。今では約9300平方メートルの生産施設があり、約100人が働いている。品質は犠牲にしない。それが製品がこれほど好調な理由だと思う。

食品商品のアイデアがある人に、どんな助言をするか。

ライマー:強いサポート体制を持つことだ。明確なビジョンを持ち、そのビジョンから決してぶれないこと。ちょうどよい地点を見つける。遅くてもよいが遅すぎてはならない。速くてもよいが速すぎてはならない。ビジョンを信じ続け、粘り強く進むことだ。

forbes.com 原文

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