経営・戦略

2026.03.03 09:28

AI導入で成果を出す企業が「人」を優先する理由

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コスト上昇、高齢化する労働力、熾烈な競争という「パーフェクトストーム」に直面し、企業は人材がより賢く働けるようにする方法を探している。AIと自動化は救命艇になり得る。誰もやりたがらない単調な仕事を取り除き、ルーティンを簡素化してより愉快なものにし、従業員がより意味があり、刺激的な仕事に集中できるようにするからだ。

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しかし、そう単純ではない。多くのAIプログラムは港を出ない。広範な変革ではなく、多くの企業が得ているのはレポート作成の高速化、手作業のコーディングの削減、そして小幅な生産性向上にとどまっている。

問題はテクノロジーではない。会話である。あまりに多くの役員会議で、テクノロジーの議論が人的資本の議論をかき消している。リーダーがテクノロジーに特定の成果を出させることに固執すると、人は後回しになる。ワークフローの近代化──プロセス再設計、簡素化、狙いを定めた技術適用──が先行し、スマートなチーミング、戦略的人員計画、動的なリスキリングと再配置に依拠する労働力の近代化が置き去りにされる。軽視されていると感じた従業員は導入の歩みを緩め、懐疑心を強める。

私の経験では、これを理解している企業もある。彼らは仕事労働力を同時に変えている。人を中心に据え、役割とルーティンがAIとともに進化するよう、継続的なワークフロー改善のためのテクノロジーとHRの筋力を鍛えている。さらに、自動化の前にプロセスの混乱を整理し、従業員価値提案を強化して、優秀な人材が次の段階に向けて残るようにする。結果として、領域によって異なるが10〜15%の生産性向上が得られ、プログラムが拡大するにつれて伸び続ける10〜25%のEBITDA増へとつながっている。

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その水準のROIを達成するには、テクノロジー、HR、オペレーションを横断した統合的アプローチで、労働力とワークフローの近代化を同期させる必要がある。5つのステップが助けになる。

1. リーダーとチームを整える

AI変革では、リーダーがボトルネックになることが多い。解決策は、ビジョン、プロセス、技術リテラシー、人員計画を一度に管理できるスーパーヒーローのようなリーダーを見つけることではない。テクノロジー、業務プロセスのオーナー、財務、HRを結集する、部門横断チームという形で真の変革エンジンを構築することだ。

2. ワークフロー負債を自動化しない

技術リーダーは「技術負債」について語る。複雑なレガシーシステムがもたらす遅延のことだ。組織にはワークフロー負債もある。過剰な会議、承認、引き継ぎ、例外対応、その場しのぎの方針である。「簡単」な依頼が、数週間にわたる複数チームのリレーに変わる負担を、誰もが経験したことがあるだろう。

AIは投入されたシステムを、良くも悪くも増幅する。チームがまずワークフロー負債に対処しなければ、自動化は複雑さを上乗せしてしまう。成功しているチームは代わりに、最も重要なワークフローを白紙から見直す。顧客体験、サービス品質、コスト、スピードについて、大胆で統合された目標を設定する。そして、そのワークフローが確実に成果を届けられるよう、逆算して設計する。

3. ハイブリッド労働力に備える

将来の労働力は、用途別に設計されたAIツールや既製のAIツールを使う人間、自律型および半自律型のエージェント、そして環境によってはヒューマノイドロボットで構成される。

統合されたワークフローは、これらの集団を、最も価値を付加できる領域へと集中させる。人間は「事業を変える(change the business)」意思決定と、イノベーションと成長を持続させるためのガバナンスを担う。一方、機械は日々の「事業を回す(run the business)」活動を実行する。最適な組み合わせは変化し続けるため、運用面と戦略面の人員計画システム、学習・能力開発の機能、そして継続的な変革管理のアプローチと体制の高度化が必要になる。

4. 信頼を構築する

AIの導入は、テクノロジー、リーダーシップ、雇用主の意図に対する信頼に左右される。推論を見えず、影響も与えられないブラックボックスのシステムに、人は依存しない。また、「AI変革」が置き換えの婉曲表現だと信じているなら、人は試行もしない。

先進企業は、相互作用が信頼を築くことを理解している。ユーザーが操縦し、テストし、検証できるシステムに注力する。エージェント型システムに対しては、可観測性、トレーサビリティ、評価(evals)に投資する。さらに、AIは人を補完するためのものだと透明性をもって伝え、その言葉をリスキリングと再配置への投資という行動で裏付ける。

5. 価値を回収し、新たなパフォーマンス基準を設定する

新しいワークフローは、一度の展開で終わるものではない。多くの企業は、永続的な生産性エンジンをつくるために、ワークフローに何度も手を入れる必要がある。最も価値の高いワークフローを簡素化した後、組織は学習ループによって継続的改善を確実にできる。人間は機械のデータ駆動の示唆から学ぶ。機械は人間の実験と文脈から学ぶ。相互作用のたびに双方のパフォーマンスが改善される。新たなベストプラクティスは取り込まれ、ワークフローとマネジメントのルーティンに組み込まれていく。時間の経過とともに、継続的改善はパフォーマンスと効率の基準を引き上げる。

テクノロジーは常に仕事を作り替えてきた。しかしAIは、歴史上のどのテクノロジーよりも速いペースでそれを進めている。仮に、過去の自動化の波の一部しか代替しないとしても、戦略、プロセス、人材への含意は深い。

過去3年間で、AIは単に展開するツールではないことが分かってきた。設計するべき全体システムなのである。

forbes.com 原文

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