Renee YeagerはYeagerの共同創業者兼CEO。革新的なテクノロジー企業が差別化を図り、成長を加速させることを支援するB2Bエージェンシーを率いる。
筆者は成長期にあるB2Bテクノロジー企業と長年仕事をしてきたが、経営陣が「マーケティングをスケールさせる時だ」と判断するたびに、ほぼ必ず目にするパターンが1つある。予算を薄く広く配分してしまうことだ。
それは判断ミスの結果であることはまれである。多くの場合、成長に伴う自然なプレッシャーがそうさせる。期待は高まり、注目度も増す。マーケティングには、以前よりはるかに多くのことが突然求められる。経営陣は勢いを欲し、そうした野心が最初に表れやすいのがマーケティングだ。リードの増加、ブランド認知の向上、コンテンツの増量、チャネルの拡大、そして営業支援の強化。
意図は前進である。しかし、結果はしばしば希薄化になる。
企業が成長するにつれてマーケティング予算はたいてい増えるが、焦点と戦略がそれと同時に研ぎ澄まされるとは限らない。より明確な選択をする代わりに、チームはカバー範囲を広げようとする。新たなキャンペーンを立ち上げる一方で、ウェブサイトの刷新も始まる。有料メディア、イベント、営業支援の取り組みと並行して、コンテンツ制作も加速する。すべてが重要に見えるため、すべてが前に進む。
外から見れば加速しているように映るかもしれない。だが組織の内側では、手応えのない動きになりがちである。活動量は増えるが、成果は安定しない。マーケティングチームは何が実際に機能しているのか説明しづらくなる。営業チームは懐疑的になり、経営陣は「マーケティングが成長に意味のある形で寄与している証拠」を求め始める。
これは人材の問題ではない。焦点の問題であり、それはすぐに表面化する。
「やることを増やす」ほど静かに信頼が損なわれる
見落とされがちなのは、やり過ぎのコストが非効率にとどまらないという点である。損なわれるのは信頼性だ。
マーケティング施策が散漫になると、成果の解釈が難しくなる。勝ち筋は小さく、片づけられやすい。チームはインパクトを示すよりも、活動の説明に多くの時間を費やす。時間がたつにつれ、マーケティングへの信頼は静かに目減りしていく。
成長期の企業にとって、その目減りは致命的になり得る。この段階では、マーケティングも事業と歩調を合わせて成熟することが期待される。そうならなければ忍耐は薄れ、組織再編、資金配分、あるいはリーダー交代といった話が始まりがちである。
筆者が関わってきた成長期のチームで最も効果的だったのは、異なるアプローチを取るチームだ。あらゆる方向に拡張するのではなく、焦点を絞る。いま最も重要な事業目標を明確にし、それに向けてマーケティングを断固として整列させる。メッセージ、チャネル、投資水準、測定はすべて、その優先事項を支える。他のアイデアを永遠に捨てるのではない。意図的に優先順位を付けるのである。
こうした抑制は、変化の速い組織では居心地の悪いものに感じられるかもしれない。だが、勢いを生むのは往々にして抑制である。
マーケティングチームが取り組みを集中させると、前進は見えやすくなる。試す場所が少なくなるため、メッセージは研ぎ澄まされる。学習は速くなる。成果が明確で説明しやすくなるため、信頼が積み上がる。意思決定は、勘ではなくエビデンスに根差すことで質が上がる。
勢いはレバレッジを生む。そして一度それが生まれれば、スケールははるかに効果的になる。なぜならそれは、実体のあるものの上に築かれるからだ。
拡張よりも「集中」のほうが速くスケールする理由
集中したマーケティングは、最初から見栄えがするとは限らない。特に、成長を「可視性」や「量」と結び付けがちな組織では、経営陣の期待より静かに映ることがある。
しかし実際には、集中は「コミットメント」として現れる。一貫性をもって単一の物語を通す。別のものを足す前に、1つの成長の型を規律をもって実行する。正しいアイデアが機能する余地をつくるために、良いアイデアであっても一度引っ込める。
このアプローチは当初、遅く感じられるかもしれない。だがそうではない。摩擦を取り除くため、より速く動く。
多くの成長期企業にとって最も難しい変化は、広く浅い網羅から、絞り込んだ確信へと移行することだ。マーケティングをスケールさせるとは、あらゆる場所でメッセージを発信することではない。最も重要な場所で、効果的なメッセージを発信することである。
経営陣が問うべき最も有用な問いは、「予算でいくつの施策を支えられるか」ではない。組織として、どの程度の集中にコミットできるのか、である。マーケティングにリソースだけでなく明確さを与えれば、ようやく本来果たすべき役割を担える。そうしてマーケティングは事業とともに効果的にスケールする。明確さが先導すれば、成長が後に続く。



