リーダーシップ

2026.03.03 08:31

「信頼の輪」が縮む時代、リーダーに求められる橋渡しの力

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多様で、公正で、インクルーシブな職場づくりへのコミットメントが薄れていくことの弊害は、ある根本的な領域で鮮明になりつつある。信頼である。Edelmanの「2026 Trust Barometer」によれば、世界の人々の70%が「自分と異なる人を信頼することに消極的、またはためらいがある」と回答した。同調査は2025年10〜11月に、28カ国を代表する33,398人を対象に実施された。

こうした感情が放置されれば、多様なチームにとって生産性のリスクとなる。互いに信頼していないメンバーは、自分から接点をつくることがほとんどない。Edelmanの調査では、42%が「自分と価値観の異なる上司のもとで働くくらいなら部署を異動したい」と答え、34%は「政治的信条の異なるチームリーダーのためには、仕事の努力量を減らす」と回答している。

このような状況では、信頼を仲介する能力が、重要なリーダーシップ能力として浮上する可能性が高い。以下では、信頼を育み、分断を橋渡しするためにリーダーが取れる、エビデンスに基づく3つの戦略を紹介する。

共有目標をめぐる対話を促進する

人は、自分が「他者」とみなしている相手と目標を共有しているとわかると、違いを脇に置きやすくなる。特に、その目標が「協力しなければ達成できない」類のものである場合、その傾向は強まる。

分断されたチームが共有目標を認識できるようにするには、リーダーがその目標をめぐる対話を促進すべきだと、INSEAD、オハイオ州立大学、香港理工大学、ノースウェスタン大学の研究者らは指摘している。目標をめぐる対話は、派閥間の信頼を促進し、より協力的な行動を引き起こす。

研究者らは一連の4つの対面チーム実験で、この手法の有効性を実証した。実験では、複数の論点と競合する利害を含む現実的な交渉シミュレーションに入る前に、チームをランダムに振り分け、共有する成果に焦点を当てた5分間の会話(例:「すべての当事者にとって重要なことは何か?」)を行わせた。

学部生とMBAの参加者を用い、交渉課題を段階的に複雑化させた一連の研究を通じて、目標対話を行ったチームは、互いに関わらなかったグループや雑談をしただけのグループに比べて、より強い信頼を築き、より高い共同成果を達成した。

信頼を示して規範をつくる

人は信頼されていると感じると、信頼してくれた相手に信頼で返すだけではない。関係のない別の相手に対しても、より信頼するようになる。シアトル大学の研究者が、Amazon Mechanical Turkで募集した420人の成人サンプルを用いて行った実験で示された結果である。

参加者はまず、標準的な信頼ゲームを行い、一部の参加者は匿名のパートナーから明確に「信頼される」経験をした。その後、別の新しいパートナーと、独立した第2のゲームに入った。先に信頼された参加者は、最初のパートナーに対してより多くの信頼を返しただけでなく、新しいパートナーに対しても有意に多くの信頼を示した。研究者らは、最初の相互作用で開始された信頼が、他者にとっての手本になると論じている。

各派閥への信頼を示すために、リーダーは各派閥がチームの目標にコミットしていることを公に認めることができる。これにより信頼の規範が確立され、ある派閥のメンバーが別の派閥のメンバーに対してとるべき適切な行動が示される。また、リーダーがどちらの側にもつかないというシグナルにもなり、これはリーダー自身がいずれかの派閥に属していると見なされる場合にはさらに重要となる。

双方への信頼を伝えることは、すでに違いを越えて協働しようとしている人々の動機づけも高める。リーダーがメンバーを信頼している姿勢を示すことで、チームにとっての多様性の価値をすでに認めている人々の協働的な態度と行動が強化される。

チームの「関係的アイデンティティ」を育む

価値観や背景、世界観が異なるメンバーがいる場合でも、集合的なチーム・アイデンティティを育むことの利点は多く語られてきた。しかし、独自のアイデンティティを強く重視する人が多い場合や、アイデンティティ同士が相いれない場合には、集合的アイデンティティの醸成が裏目に出ることがある。そうした取り組みが、メンバーのアイデンティティの独自性を消し去ろうとする試みだと受け止められかねないためだ。

その代わりにリーダーは、チームが「関係的アイデンティティ」を発達させるのを支援すべきである。これは、チームがメンバーそれぞれの多様なアイデンティティを生かしながら、より大きなチーム目標に集団として貢献していることを共に評価することを中心に据えたアイデンティティである。アルバータ大学、クレアモント大学院大学、ドレクセル大学による研究がこれを示唆している。同じ研究チームによる2つ目の研究によれば、リーダーがチーム内のいずれかの派閥に属すると見なされる場合でも、こうした取り組みは有効に機能する。

チームの関係的アイデンティティを育むには、リーダーが各サブグループがチームにもたらす利点を言語化する、異なる派閥のメンバー同士を業務アサインでペアにする、各派閥を代表する共同リーダーを指名する、といった方法がある。

以上の戦略が示すように、分極化と集団間の反感が人々の「信頼の輪」を狭めてきた世界において、リーダーは、違いを越えてチームと組織が繁栄できるようにするための「信頼を仲介する能力」を身につけなければならない。職場の多様性がかつてなく高まっている一方で、その多様性を効果的にマネジメントしようとする取り組みは、逆説的にも、より論争的で不均一になっている今、この重要性は一層増している。

forbes.com 原文

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