ベテランビジネスパーソン復活の時代になるのか?
「1人社長&AI企業」の社長に求められるスキルは他社にない価値創造を生み出す事ができる知見と経験、判断力と実行力、価値を説明できるコミュニケーション能力となるでしょう。
昨今のAIの様に自然言語対話で、所望の結果を得る為には人間とのコミュニケーション能力のみならず、AIとのコミュニケーション能力が必要とされます。少し前にプロンプトエンジニアリングという名称で、AIに出す「指示」技術が喧伝されていましたが、AIが使っている人物をより理解するようになってきている事で、単純な「指示」以上の伝達力の巧拙が結果の可否に影響する様になりました。
その意味で、幅広く多様な事業経験や時には失敗も経験しているベテランのビジネスパーソンは、その「結晶性知能」を多く蓄えている故に、AIとの対話により新たな価値やアイディアを生み出し、それを実行していく可能性が高い人材ともいえるでしょう。
有機的・動的な「1人社長&AI企業」となるために?
一方で業務を実行するのにAIと対話できる事業領域の言語をもっていない人材には、AIに期待する成果を提示できない為、AIが出してくる成果もそれなりなレベルに止まるばかりで無く、他の「一人社長&AI企業」とのAIを介した協業も容易でなくなります。これはベテラン人材においても、事業運営をするための知見・経験を持っている必要があり、今後の人材育成のあり方に大きな影響を与えるものになるはずです。
新たな価値創造は、複数の価値を組み合わせて生み出したり、かけ合わせたりする事が重要となります。こういった価値創造を行う際にAIに実施してもらう領域についてあるレベルの知識と経験を持っていないと、AIが出してくる結果を鵜呑みにせざるを得なくなります。将来は解決に向かうと思われる「ハルシネーション」の問題も現時点では存在し、まったくの誤答をAIが返してくる可能性も残っており、それらの誤答に対して、間違いではないかという直観が働くレベルの知見・経験を有する事が必要となるでしょう。
そのうえで複数の領域を深く知っておくことで、既存のプロダクトやサービスにない新しい価値創造を生みやすくなります。上であげた例である弁護士さんを社長とする「1人社長&AI企業」がエンジニアを社長とする「1人社長&AI企業」や著名なマーケターを社長とする「1人社長&AI企業」と組んで、弁護士AIエージェントを作る事例においては、弁護士の方がエンジニア的考え方や知識、そしてマーケティングの知見を合わせ持つことで、それぞれの「1人社長&AI企業」との協業をよりうまく実施できるはずです。
「1人社長&AI企業」が普通になる未来像
今から5年後・10年後を考えるとき、技術の進化がもたらす「秩序の崩壊」は、さらに加速するでしょう。従来の組織構造は解体され、経営者がAIと共に意思決定を行う新たな形態が主流となるはずです。この時点で、既存の価値観や成功法則は完全に昔のものと化しています。人間の意思決定や対人能力、そして高度な身体的技能が頭脳的AIにはない価値として生き残ります。
この変化には不都合な未来も見えてきます。例えば、AI導入による生産性の向上は、一見すると企業にとって有利に見えます。しかし、それが雇用の減少や社会的不安を引き起こしているという構造的矛盾を無視することはできません。この矛盾が、企業や社会の未来像をさらに不透明にしています。
現代社会において、効率化だけを追求する事はもはや時代遅れの価値観となり、単なる効率向上ではなく、「生存のためのパラダイム転換」が求められる事になるでしょう。 例えば、労働市場においては、AIと自動化が人間の仕事を奪い続けている。これは効率の観点から見れば歓迎すべき進歩ですが、人間の「生存」を脅かす要因にもなりかねません。
人口減時代においては、こういったAIによる労働力の代替は歓迎すべき方向性ではあるものの、人口増時代に作り上げた様々な制度や仕組みがうまく稼働しない時代にもなり、人口減時代における新たな制度や仕組みをこの「1人社長&AI企業」の興隆と合わせて検討すべき時期にきています。


