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2026.03.11 10:15

まちを「和える」──バウンダリー・スパナーとして生きた10年の実践

インターネットで「八尾 変態」と検索すると、私の顔が出てきます。かつて八尾市役所の公務員として「変態な行政マン」と呼ばれた私は、現在、民間企業・友安製作所の執行役員として、立場を変えながらもまちづくりに奔走しています。

私がまちづくりで一貫して追求しているのは、単なる箱モノ整備といったハードなまちづくりではなく、そこに住む人や働く人の人生のストーリーが重なり合い、混ざり合う「まちのCONTEXT(文脈)」を編み上げることです。本稿では、地域活性化においてなぜ「緩やかなつながり」が最強の武器になるのか、そしてこれからのリーダーに求められる「境界を超える力」について、私の経験とソーシャルデザインの観点を交えて紐解いていきます。


「ちょっとした知り合い」が世界を変える。弱い紐帯の力

地域コミュニティを語る際、多くの人は「家族」や「親友」のような強固な結束をイメージしがちです。しかし、まちづくりに真の変化をもたらすのは、実は「弱い紐帯(Weak Ties)」──つまり「ちょっとした知り合い」という緩やかな人間関係であることが多いです。

「弱い紐帯」とは、アメリカの社会学者マーク・グラノヴェッターが提唱した理論です。親しい間柄の閉鎖的なネットワークよりも、緩やかなつながりを持つネットワークの方が、新しく価値の高い情報をもたらす可能性が高いとされています。地方のまちでは特に「うちの地域には何も資源がない」と嘆く声をよく耳にします。しかし実際には眠っている資源が存在しており、見慣れすぎて価値に気づけないか、そもそも目を向けていないだけのケースが少なくありません。「弱い紐帯」が持ち込む外からの視点こそ、その眠れる資源を掘り起こす鍵になります。

「バウンダリー・スパナー」という生き方

経営学の世界には、異なるネットワークのハブ(結節点)に位置する人が最も成功しやすいという「ストラクチュアル・ホール(構造的空隙)」の理論があります。異なる二つの世界をつなぐ架け橋となる存在を、経営学では「バウンダリー・スパナー(境界を超える人)」と呼びます。

私自身がそのバウンダリー・スパナーとして動き始めたのは、市役所入庁直後に始めた「食べ歩きブログ」がきっかけです。まちの広報を志望しながら秘書課に配属された私は、その落胆をバネにプライベートでまちの飲食店を巡り始めました。仕事とは無関係な場所で店主や常連客と出会い、そこで生まれた「弱い紐帯」が、後に飲食店同士の横のつながり「80会」を生み、公園を貸し切った地域活性化イベント「八尾グルMESSE」へと発展していきました。

その後も行政マン時代を通じて、私は意図的に「境界」を越え続けました。経営学の世界には、異なるネットワークのハブ(結節点)に位置する人が最も成功しやすいという「ストラクチュアル・ホール(構造的空隙)」の理論があります。異なる二つの世界をつなぐ架け橋となる存在を、経営学では「バウンダリー・スパナー(境界を超える人)」と呼びます。私自身がそのバウンダリー・スパナーとして動き始めたのは、市役所入庁直後に始めた「食べ歩きブログ」がきっかけです。

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