ナタリア・シャフメトワ氏は、世界有数の犬のしつけアプリ「Woofz」を手がけるアプリ開発企業nove8の創業者兼CEOである。
従来のペットの飼い方はシンプルだった。餌を与え、散歩に連れ出し、グルーミングをして、具合が悪くなったら獣医に連れていく。多くの場合、問題を予防するのではなく、問題が起きてから対処する「事後対応型」のスタイルだった。
しかしZ世代の多くにとって、ペットの親としての責任とは、単に動物を生かしておくことではない。積極的にウェルビーイングを支え、より長く、より健康で、より幸せに生きられるよう手助けすることだ。
意識的なペットオーナーシップの台頭
Z世代の多くにとって、動物はアクセサリーでも遊び道具でもない。実際、ある調査では48%が「ペットと実の人間の子どもに違いを感じない」と回答した。
ペットは家族の一員であり、若い飼い主たちはペットをできるだけ長く健康に保つためにあらゆる努力を惜しまない。ハリス・ポールの調査によると、Z世代のペットオーナーの3分の1が、ペットとあと1年長く一緒にいられるなら10万ドル(約1500万円)を手放すと回答し、51%は自分の寿命を1年縮めてもいいと答えている。
それが実現可能とは限らないが、彼らは実現に向けてできることはすべてやろうとする。感情面のウェルビーイングを支えるトレーニングアプリやサウンドセラピー、エンリッチメントツールに時間を投じ、年齢や犬種、食事要件に合わせたフードに投資し、睡眠・活動・行動を追跡して深刻な問題へ発展する前に微細な変化を見つけるためのスマート首輪も購入する。
そして、真に効果のある製品には惜しみなくお金を使う。ハリス・ポールによると、平均するとZ世代のペットオーナーは、それ以前のどの世代よりもペット関連で多く支出している。フード、獣医療、薬、トレーニングなど、ほぼあらゆるカテゴリーに及び、29%はペット関連の支出が原因で負債を抱えている。
過剰に聞こえるかもしれないが、Z世代にとって、ペットの健康と長寿に値段はつけられないのだ。
Z世代のウェルネス志向を映す
上の世代から見ると、Z世代のペットケアへのアプローチ──絶え間ないモニタリングと際限のないトラッキング──は過保護に映るかもしれない。しかし、この細やかな配慮は多くの場合、深い愛情から生まれている。
57%のZ世代が「自分は100歳まで生きられると思う」と答えており、長寿が彼らにとって重要であることは明らかだ。また、飲酒量を減らし、運動を増やし、メンタルヘルスを以前の世代以上に真剣に受け止めるなど、自身の健康とウェルビーイングに強い誇りを持つ者も多い。
また、真のデジタルネイティブ第1世代として、自己トラッキングと自分の健康を精緻に管理する能力とともに育った最初の世代でもある。睡眠から歩数、栄養摂取、活動量、排卵、水分補給、感情に至るまで、あらゆるものをモニターする。そしてそのすべてをスマートフォンで、数回のタップと最小限の労力で行う。このデータを使ってパターンを見つけ、健康を改善するために変化を加えられる。
ペットを家族の一員、あるいは自分の子どもの1人として捉えるなら、同じ水準のケアをペットにも広げるのは自然なことだ。とはいえ、ペットの人間化が新たな標準となった一方で、残念ながら人間と同じ寿命を与えることはできない。時間が限られていることを認識しているZ世代のペット親たちは、愛する仲間とできるだけ多くの良い年月を過ごせるよう、時間とお金と労力を惜しまないのだ。
Z世代に向けたペットテックの構築
Z世代はペットケア領域で最大の支出層であり、ペットテックブランドはそれを当然視してはならない。信頼を勝ち取った企業には強いロイヤルティを示す一方で、Z世代消費者の81%は、ブランドの行動や評判を理由に購入を見直したことがある。製品や価格は問題ではない。ブランドの価値観が自分と合わなければ、Z世代はためらいなく離れる。
明らかに、ペットケア事業者が存在感を保ちたいなら、Z世代がペットをどう見て、どう扱っているかという考え方に本気で向き合い、次のような提供が必要である。
1. 全方位のサポート
Z世代は健康に対して全体論的なアプローチを取ることが多く、同じことをペットにもできる製品を望む人が多いと私は気づいている。動きを追跡するだけの首輪、分量を測るだけの給餌器、ペットを個として捉えないトレーニングツールではなく、栄養、行動、活動、メンタルヘルスなど、ウェルビーイング全般を支えるよう統合された製品を企業はつくるべきだと考える。
2. 事後対応ではなく先手
事後対応型のケアでは、もはや十分ではない。Z世代は、何かが起きてから手を打つことを望まない。初期のサインを検知し、トレンドに基づく示唆を提供するソリューションの創出に注力し、飼い主がより早く介入し、そもそも問題を未然に防げるようにすることが重要だ。
3. 徹底したパーソナライゼーション
Z世代は、データによって生活のほぼあらゆる側面がパーソナライズされることに慣れている。ペットを個として捉える彼らの多くは、同等のケアを期待する。ペットテック企業は各ペットのデータを収集し、犬種、年齢、体重、健康状態、性格、行動に基づいてサービスを適応させる必要がある。
4. 人間に近い扱い
だが最も重要なのは、企業がペットを商品として扱うことをやめることだ。Z世代は動物を、人間と同格の家族の一員として見ている。その事実を理解できず、製品提案やマーケティングの姿勢に反映できないブランドは、この世代にとっての重要性をあっという間に失いかねない。
ブランドが「深くケアする」べき時
Z世代は、歩けるようになったかどうかという頃から変化を求め、サステナビリティやインクルージョンといったテーマを各産業に押し広げてきた。いま彼らが年齢を重ね、自らペットの親となりつつある中で、次に注意を向けるべき番がペット業界に回ってきたのである。
動物に最高のものを期待する世代にとって、良い製品だけではもはや十分ではない。Z世代の信頼──そして支出余力──を勝ち取るために、ブランドはペットの長期的なウェルビーイングに対する真摯な関心を示さなければならない。



