景気後退、アクティビスト投資家、破壊的な競合相手、サイバーセキュリティインシデント、サプライチェーンの崩壊、AIによる急激な変化など、大きなプレッシャーがかかる局面において、真っ先に試されるのは自社の技術基盤ではない。試されるのは「人材」だ。すなわち、彼らの判断力、互いへの信頼、そしてストレス下でも創造性を保つ能力がカギを握る。
優れた競争者は、プレッシャーのなかで頂点に立つ。例えば、1997年にNBAファイナルで、マイケル・ジョーダンが体調不良を押して出場し、チームの勝利に貢献した伝説的な試合「インフルエンザ・ゲーム」。あるいは、ネットフリックスが2000年にBlockbuster(ブロックバスター)から買収提案を拒否されたのち、ストリーミング優先モデルへ転換した事例。最も記憶に残る成功やイノベーションの多くは、大きなプレッシャーがかかる局面から生まれている。
技術的なスキルや専門知識、リソースといった要素はいずれも、成功するイノベーションの開発に間違いなく寄与するが、だからといって、イノベーションにおける人間的な側面が「二次的」な要素というわけではない。むしろそれは、戦略的な優位性だ。プレッシャーが最高潮に達した局面において、人間的な側面が最も重視される4つの理由と、それについてリーダーが取るべき対応を以下に挙げる。
1. イノベーターは、リスクを「賢く」取る価値を知っている
人間のイノベーターが優位性を維持している分野の一つは、リスクを取るべきタイミングを理解していることだ。AIシステムは高度に発達した今もなお、しばしば一定の「自信過剰」を示し、それが深刻な誤りを引き起こすことが研究で示唆されている。対する人間は、当然ながら逆の傾向を示して失敗することが多い。大きなプレッシャーのかかる状況でリスク回避的になりすぎ、かえってイノベーションを阻害するのだ。
イノベーションの成功にはリスクを取ることが不可欠だが、その際には、潜在的なメリットと落とし穴を理解し、リスクを最小化するよう計算した上で実行しなくてはならない。例えば、ジェフ・ベゾスが1994年、オンライン書店としてアマゾンを立ち上げた時、オンラインで何かを売ることはリスクとみられていた。
書籍に特化したことは、賢明なイノベーションとなった。書籍は耐久性があり、比較的安価で、何百万ものタイトルが存在する商品だったからだ。これは、比較的リスクの低い概念実証となり、のちにアマゾンを「オンラインで何でも売る店舗」へと導いた。



