2. イノベーターは、共感力で真の顧客ニーズに焦点を当てる
イノベーションにおける人間的側面のもう一つの重要な要素は、共感がもたらす価値だ。AIがメンタルヘルスの分野にさえ活用され始めている現在でも(結果はまちまちだが)、機械は、本当の意味で人間の共感力に取って代わることはできない。共感力は、他者の欲求やニーズ、不安を理解する上で極めて重要なものだ。
顧客向けのイノベーションにおいては、特にそれが不可欠となる。イノベーターは、顧客が真に必要としているものに焦点を当てることで、意味のある解決策を見いだすのだ。
例えば、コールセンターのアウトソーシングを手がける企業ROI CX Solutions(ROI CXソリューションズ)が実施したケーススタディを見てみよう。米国西部のある医療システムは、膨大な通話量をさばききれず、待ち時間の長期化や、待ちきれなかった顧客がコールを切ってしまうこと、未処理案件の蓄積、予約の無断キャンセル率の高さなどに直面していた。これらの問題はいずれも、顧客体験の質の低下につながり、患者のニーズを満たすことができていなかった。
そこで同社は、問題解決に際して、患者と、既存のコンタクトセンタースタッフの支援に焦点を当てた。追加人員を配置する、データ分析によって応対者の説明責任を強化する(特に、初回応答での解決率向上)、留守番電話の活用といった解決策の提案は、患者の速やかな支援に劇的な改善をもたらした。実際、待ち時間は、平均40分からわずか7秒に短縮され(99.7%の減少)、予約の無断キャンセルも75%減少した。
3. 感情知性によって、長期的な目標を維持する
感情知性(EQ)の高いリーダーは、プレッシャーがかかる局面はあくまで一時的なものにすぎないことを理解している。その間はストレスや不安が増大するものの、長期的な目標から注意をそらしてはならない。長期的な目標は、あらゆるイノベーションの取り組みにおいて最も重視すべきものだ。
高い感情知性を持つリーダーは、チームが最も重要なことに集中し続けられるよう支援する。これによりチームメンバーは、自身の不安を処理しやすくなるが、さらに重要なのは、こうした支援が、各自が安全なかたちでリスクを取ることを促し、レジリエンス(回復力)を高める環境をつくる上で役立つことだ。
長期的な視点を持った人間の導きがあれば、チームメンバーは、失敗を学習経験として捉えやすくなり、イノベーションの取り組みが計画どおりに進まない場合の影響を恐れにくくなる。代わりに、継続的な改善と、個々のイノベーションにおける長所短所の特定に焦点が当てられる。そうすることで、良い点は維持し、悪い点から学ぶことが可能となる。


