リーダーシップにおけるレジリエンスは、しばしば「耐久」と混同される。リーダー、投資家、チームにとって、この誤解は計画が破綻したときに誤った意思決定を招きかねない。
2026年冬季オリンピックを通じ、逆境を乗り越えて卓越した成果を上げたアスリートたちの、数々のレジリエンスの物語が世界中の観衆を魅了した。レジリエンスという概念は今日より多く語られるようになったかもしれないが、古くから存在してきた。私は人、チーム、組織におけるレジリエンスについて執筆してきた。レジリエンスはスタートアップ投資家にとっても重要である。多くの投資家は通常、市場機会、プロダクトマーケットフィット、ビジネスモデルのスケーラビリティ、タイミング、創業者の力量と経験を見る。投資家は計画を評価するが、計画がうまくいかない局面の意思決定にこそレジリエンスは表れる。
私は、リーダーのレジリエンスと、チームの組織的レジリエンスを考慮することが同様に重要だと考える。これらの要素は成功を達成するために不可欠である。不確実性のなかを進むリーダー、投資家、組織にとって、耐久とレジリエンスの違いを理解できるかどうかが、成功が持続するのか、失われるのかを左右しうる。
リーダーシップにおける個人のレジリエンス
私はスポーツから教訓を得るのが好きだ。スポーツには決着があり、学習が加速し、フィードバックループも圧縮されるからである。短い時間で勝負は終わり、勝者が決まり、そこには常に学びがある。スポーツは適応のための加速された実験室をつくり出す。そうした適応の学びの一部は、私たち全員に、そして何らかの形でビジネスにも当てはまる。
直近の冬季オリンピックにおける数多くのレジリエンスの物語のなかで、私にとって際立っていたのがブリージー・ジョンソンのストーリーである。以前にも書いたとおり、レジリエンスとは4つのフェーズからなる設計されたシステムだ。すなわち、混乱(ディスラプション)を想定して計画すること、壊れずに吸収すること、回復すること、そして適応すること。適応の部分が鍵であり、適切に行われれば、個人や組織の機能は混乱以前よりも高い水準に到達しうる。ブリージー・ジョンソンが示したのはまさにそれだった。
ブリージー・ジョンソンのケースは、卓越したパフォーマーが成功を得るために、一直線の道筋や線形の進歩に頼ることは稀であることを示している。状況が変われば、成功の定義を絶えず素早く更新しなければならない。ブリージーは一流の滑降スキーヤーだが、2022年オリンピックでは計画が狂った。のちに2026年オリンピックで金メダルを獲得することになる同じ滑降コースで、重大なクラッシュと負傷に見舞われたためである。同様に、創業者が線形にスケールすることは稀であり、市場の変化、競合の出現、資本の枯渇などにより後退を経験する。こうしたリーダーは、素早く適応し、前進するうえでの「成功する道筋」を再定義しなければならない。創業者のなかには、よりレジリエンスが高い者もいる。レジリエンスとは、アイデンティティを失わずに軌道を再設計できる力である。
リーダーシップにおけるレジリエンス:成功を先回りして捉え直す
ブリージーのケースでは、競争者として、そして勝利への強い欲求を持つ一流アスリートとしてのアイデンティティを維持していた。回復手法とトレーニングのアプローチを通じて適応したのだ。しかし、NBCのオリンピックアスリートQ&Aの大会前インタビューで、彼女はこう語っている。「起きないでほしいけれど、もしメダルが取れなかったら、失敗の中に成功を見つけなければならない」。この場合、彼女は結果が出る前に、先回りして成功の捉え方を再構築していた。すなわち、前もって精神的に適応していたのである。多くの人は混乱の後に捉え直す。ブリージーは、結果が出る前に捉え直せることを示し、それがオリンピックで何が起きても心理的により自覚的で、受け入れやすい状態をもたらした可能性がある。
この心理的な自覚は、創業者が備えるべき認知的適応の一例である。卓越した創業者は目標を早期に再調整し、事業の崩壊なしに適応できるようにする。一流アスリートと創業者の双方に共通するのは、不確実性をより受け入れ、居心地よく感じられるようになることだ。投資家は、どのような逆境に直面しても、その後にチームの進む道を素早く再定義できる創業者を見極めるべきである。そうしたリーダーが勝てるチームを鼓舞する。CEOのリード・ヘイスティングスは、NetflixをDVD配送企業からデジタル配信プラットフォームへ、さらに世界的なコンテンツクリエイターへと捉え直した。
スポーツは、圧縮された時間のなかでレジリエンスを示してくれる。一流アスリートが認知的に行うことを、リーダーは組織レジリエンスを高めるため、チーム全体に対して構造的かつ体系的に、スケールさせて実行しなければならない。また、ビジネスやスタートアップで見られるような、長期にわたる不確実性のもとでのレジリエンスは、スポーツで見られるものとは異なる。歴史には、長期の不確実性のもとで行動したリーダーの例があり、企業はそこから学べる。
リーダーシップにおけるレジリエンスには適応が必要だ
極限の組織条件と不確実性のもとで行動するという同じ原理の、私が特に好む例の1つが、アーネスト・シャクルトンである。彼は1914年、南極大陸の完全横断を初めて成し遂げることを目指して出航した。しかし探検隊は南極に到達しなかった。彼の船「エンデュアランス号」は氷に閉じ込められ、やがて破壊され、当初のミッションは不可能になった。シャクルトンは組織の適応的リーダーシップを示した。シャクルトンは、ブリージーがオリンピック前に個人レベルで成功の捉え方を変えたのと同様に、また市場の混乱後にスタートアップで創業者が成功を再定義しなければならないのと同様に、組織レベルで進む方向を再定義する必要があった。
シャクルトンの新たなミッションは乗組員の生存となり、彼が下したすべての意思決定は、全員を生きて帰還させるという目的に結び付けられた。この極限状況は、組織が直面する別の課題、すなわち変化を浮き彫りにする。シャクルトンのチームは前に進むため、迅速な意思決定を必要とした。不確実性に直面するスタートアップは、変化そのものに抵抗するのではなく、不確実性に反応している。こうした状況では、リーダーの自信、継続的なコミュニケーション、迅速な意思決定が、チームに変化へ抵抗するのではなく従うことを促す。
チームは明確さに従う。シャクルトンが示したのは、まさにこれらの資質である。全員がミッションを理解し、次のステップに関するコミュニケーションは明確で、不確実性は減った。彼は、明確な目的のもとで自分たちが制御できる行動に集中することで、曖昧さを構造に置き換え、その集中が心理的な不確実性を低減した。これらの行動は、不確実性を管理可能な構造へと変換した。成功は、新たなミッションに照らして測定され、制約下でシステムを再設計することで達成された。同様にビジネスでは、コミュニケーションが増えるほど不確実性は減る。強い創業者はキャッシュフロー、プロダクトの反復、コミュニケーション、説明責任に集中する。
リーダーシップにおけるレジリエンス:不確実性の時代に成功を実現する
シャクルトンは、南極横断という当初の目的を達成しなかった。混乱とミッションの失敗を経て、彼はミッションを素早く再定義し、すべての意思決定を生存に整合させた。不確実性を下げ、乗組員に従う意欲を与えた。探検開始から約2年後、27人全員が生きて帰還した。
リーダーシップにおけるレジリエンスは耐久ではなく、人格特性でもない。それは、目標の捉え直し、実行の再構築、戦略の適応、変化する条件下でのパフォーマンスの安定化からなる、規律あるプロセスである。ブリージー・ジョンソンは結果が出る前に成功を再定義し、シャクルトンは失敗後にミッションを再定義し、創業者は混乱のさなかに戦略を再定義しなければならない。レジリエンスとは、目的を保ちながら成功を再定義できる力である。
オリンピックであれ、南極探検であれ、不確実性のなかを進むスタートアップであれ、方向性を維持できるほど十分に素早く適応するリーダーは、混乱をより高い機能性と進歩へと転換できる。以前から一流の成功を収めていたにもかかわらず、ブリージー・ジョンソンはオリンピック金メダルを獲得するまで、ワールドカップの滑降レースで優勝したことがなかった。これは、ブレークスルーのパフォーマンスが線形であることは稀であることを示している。重大な事故の後に見せた彼女のパフォーマンスは、より高い機能水準へ適応する例である。
投資家は企業の初期戦略の強さに注目するが、その戦略が通用しなくなったときのリーダーシップにおけるレジリエンスも評価すべきである。企業の戦略とリーダーシップを評価する際、投資家は次の問いを投げかけるべきだ。
- 創業者は初期の挫折にどう反応するか?
- 素早く再調整できるか?
- 不確実性のなかで、どのようにコミュニケーションし、鼓舞するか?
- 実行を変えながらも目的を維持できるか?



