テクノロジーを使って生み出す表現で、アートからエンタメ、商業案件までこなす。それぞれのシーンを柔軟に行き来しながら接続し、経済圏を拡張させていく存在だ。
「自分の肩書を一言で言うなら、ビジュアルアーティストです」そう語るwatakemiは、映像制作とメディアアートの領域を横断しながら新しい“シーン”をつくるクリエイターだ。YOASOBIやNewJeans、野田洋次郎といったアーティストのMV制作をはじめ、ライブ演出、VJ、グラフィック制作、さらには人工生命をテーマにしたメディアアートまでクリエイションの拡張性が高い。それらは「テクノロジーを用いて感覚をどう実装するか」という一点でつながる。
キャリアの起点は大学院時代にある。エンジニア志望だったwatakemiは、プログラミングを用いたオーディオリアクティブ映像とVJ文化に出合い、映像表現へと舵を切った。テクノロジーとビジュアルの両立は当初からの関心事であり、当時Perfumeのライブ演出などで注目を浴び始めていたライゾマティクスの存在は「技術と表現が同時に成立するモデル」として強い影響を受けたという。大学院修了後は制作会社にエンジニアとして就職。リアルタイムCGやゲームエンジンを用いた映像制作に携わりながら、並行して自主制作も続けた。商業制作の現場で技術を磨く一方、「既存のアセットを組み合わせるだけでは、IPとしての独自性は立ち上がらない」と感じ、CGモデルやシステムそのものを自作する方向へと進んでいく。
2019年に佐藤海里と結成したクリエイティブユニットtsuchifumazuは、その象徴的なアウトプットだ。パソコン音楽クラブやlilbesh ramkoなど、ダンスミュージック/ハイパーポップ領域のアーティストを中心に、ライブ演出や映像制作を継続的に手がけ、シーン形成の一端を担ってきた。ライブでは、決められた映像を再生するだけでなく、演奏や会場の空気、観客の反応を取り込みながらリアルタイムで演出を更新する。映像が音楽の背景にとどまらず、ライブ体験そのものを構成する要素として機能している点が独創的だ。
個人ではメディアアートの文脈でも作品を発表してきた。例えば、人工生命やロボットといったモチーフを通じて、「生きているようで、生きていない存在」の不気味さを可視化する試み。代表作の「tap of emptiness」は、16台のロボットハンドがスマホをタップしてテキストを入力、現実のSNS上で対話を繰り返す。現代の虚無的コミュニケーションをモチーフに、その虚無性をモーター音と共に視覚化した。
新作作品を展示したtsuchifumazu初の個展(25年6月)では、オープニングパーティで8組のアーティストがライブなどを行い、250人規模の会場が満杯になった。映像表現とメディアアートが混ざり合う場所で形成してきたコミュニティだ。ただ、「音楽の現場は、圧倒的に開かれている。対してメディアアートはとても強い問いをもっているのに、届く範囲がまだまだ狭い」という課題も。アートを展示だけで完結させるのではなく、そこに込められた問題提起をより多くの人が出合えるエンターテインメントの場へ広げていくこと。彼が見据えているのは、単なる表現としての更新だけではなく、それが新たな回路を生み、経済として循環する構造そのものだ。
わたぬき・たけみ/わたけみ◎1993年生まれ。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)出身。うごめくものや人工生命をモチーフに作品を制作する。2022年には欧州でのヨーロピアン・メディア・アート・プラットフォーム(EMAP)にチームで参加。マネジメントはCANTEEN。



