経済・社会

2026.03.03 08:15

金与正氏の党総務部長就任は栄転か転落か 謎が深まるロイヤルファミリーの動静

Richie Chan - stock.adobe.com

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朝鮮中央通信が2月28日、何とも悩ましい報道を流した。「金正恩総書記が主要幹部と軍指揮官に新型狙撃銃を授与した」という報道で、そのなかで、金正恩氏の実妹、金与正氏を党総務部長の肩書で紹介した。金与正氏はこれまで、党宣伝扇動部の副部長を務めていたとみられていた。

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かつてロイヤルファミリーの資金を扱う党39号室幹部だった李正浩氏は「党総務部長の権限は、党文書の管理・保管だけ。ほとんど権限のない閑職だ」と語る。これに対して最高指導者以外のすべての幹部や市民の思想強化を担当する宣伝扇動部は組織指導部と並ぶ党の核心部署だ。職域や地域ごとの宣伝扇動隊、各地にある歴代最高指導者の壁画や銅像の管理、芸術文化部門などを担当するため、全国に多数の関係者と資金を抱える。普通に考えれば、宣伝扇動部副部長から総務部長ヘの転身は、昇格ではなく左遷にあたる。

朝鮮中央通信はこの報道とともに計40枚の写真を配信した。そこには、キム・ジュエ氏と呼ばれる金正恩氏の娘が狙撃銃の授与式に参加した様子や、狙撃銃の試射を他の幹部と一緒に楽しむ姿などの写真が含まれていた。金与正氏も授与式や試射に参加していた。ただ、キム・ジュエ氏が他の幹部と交流している写真は何枚もあるのに、金与正氏と一緒の写真は、全員で撮った記念撮影ただ1枚だけだった。2006年から2008年まで平壌で勤務したジョン・エバラード元駐北朝鮮英国大使は「一緒の写真がないことは、2人がライバル関係にあることを思わせる」と指摘する。

現在、金日成主席の血筋を引く白頭血統で、公職に就いている人物は金正恩氏と金与正氏しかいない。一方、キム・ジュエ氏は現在13歳とみられている。18歳以上に認められる朝鮮労働党員には当分なれない。ましてや党の要職を占め、権力を持つまでには10年以上の歳月が必要だろう。キム・ジュエ氏は2月19日から25日まで開かれた党大会には当然、出席できず、エキシビションの軍事パレードにだけ参加した。

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文=牧野愛博

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