家の購入をゴールにしてはならない
北野:この先に想定されるシナリオは?
のらえもん:建てられるマンションの数は減っていくし、今後は修繕がハードモードに突入します。これからのタワマンで大事なのは、人の手をかけずどこまで維持管理できるか。普通の勤労者は都市の中心には住めなくなるから、まず消えていくのはエッセンシャルワーカーです。警備や清掃、介護に携わる仕事の人が遠距離通勤になってしまう。AIが中古販売をあっせんするより、窓ガラスを拭いてくれるロボットを投入できるかのほうが重要です。
それから、布の真ん中をひもで引っ張り上げるみたいに高騰するエリアがはっきり分かれます。中心は上がり続けるけれど、外側はむしろ下がる。だから「港区にマンションをもっておけ」といった話は、身もふたもないですが正論です。結局のところ都市の中心部は金融市場ですから。
北野:海外投資家が東京のマンションを買い占めているという話も耳にします。
のらえもん:「購入者を国籍で規制すべき」と言っても、みんな法人を使うから実際は規制が難しい。25年10月に経営管理ビザの資本金要件が500万円から3000万円に引き上げられたので、短期的には買い手が落ち着いた面もあります。しかし中長期に見ると東京の都市力は基本的に変わらないから、外国法人の購入を止めるのは現実的ではないですね。
北野:マンション評論のどこがいちばん魅力ですか?
のらえもん:購入心理が好きなんです。いろんな選択肢があるなか、なぜタワマンを選ぶのか。住んだ後、どう暮らすのか。そこに人の欲望や合理性がすべて出ると思うんです。
北野:匿名マンションアナリストに必要な能力とは。
のらえもん:ひとつ目は「ジャーナリズムと観察眼」。この業界は話が面白くないアナリストも多いから(笑)、自分なりの観点を加えることを心がけます。
ふたつ目は「メタ認知能力と言語化能力」。例えば、「東京湾岸って日本でどんな立ち位置?」とか「勝どきをほかにたとえると?」など視点や視座を上げ下げして語れると話が面白くなります。
最後は「暮らしと住まうことへの共感力」。あるエリアをもち上げると別のエリアをけなしがちだけど、どの土地にもそこに暮らしている人がいるのだから、絶対にディスる(けなす)のみにしてはいけません。
北野:価格高騰やライフスタイルの多様化を経た現代の私たちにとって、「家」って何でしょう。
のらえもん:これまでは買うことが「ゴール」だったのが家ですが、これからは「ベース(基地、基盤)」にすべき存在なのかな、と感じています。テレワークも普及したことで、家は単なる「寝に帰る場所」から、生産活動の拠点、子育ての場、休息の場に役割を拡張しています。
だから都市居住をもっと意義のあるものにしたいし、高密度に居住するタワマンは人のネットワーク効果を発揮したほうが豊かなマンションライフになるはず。街に個性がなくなっていく昨今においても、集まって住まうことで得られるコミュニティのメリットをマンションが高められるといいですね。

のらえもん◎マンションアナリスト、ブロガー、インフルエンサー。2011年に発生した東日本大震災を機に、イラストのアバターを用いて活動を始める。東京湾岸エリアのタワーマンションとそこでの生活をこよなく愛する、自称“湾岸の妖精”。ブロガープラットフォーム「スムログ」発起人。21年より大規模マンション向けイベント供給サービス「新都市生活研究所」アンバサダー。23年、住み替え支援サービス「すみかえもん」プロデュース。著書『絶対に満足するマンション購入術不動産のプロ達は大事なことを隠している』など3冊。


