「合意の方が重要だ」というシグナルを、リーダーが無意識のうちに出してしまう時
リーダーは、自分で思っている以上に、対話の規範を形作っている。人々が率直に発言するようになるか、それとも、支配的な意見にただ同調するようになるかは、ちょっとした手がかりが影響する。
質問や疑問が出た際に、リーダーが守りの姿勢を見せると、異議申し立てにはリスクが伴うということを、周囲はすぐさま学んでいく。リーダーが結論を急げば、掘り下げる姿勢は歓迎されない、と周囲は思い込む。熟考よりスピードを評価すれば、対話の幅は狭まっていく。
たとえ良識ある誠実なリーダーであっても、「速やかな決断は、迷いのなさの表れだ」と考えていれば、知らず知らずのうちに異論を抑え込んでしまいかねない。そうなると、チームはやがて、深く考えて本質を見抜くよりも、承認を得ることを優先するようになる。その結果として生まれるのは、足並みが揃っているように見えても深みのない意思決定が下される文化だ。
意思決定を急がず、あえてスピードを落とそう。深く掘り下げる段階と、最終決定を下す段階を切り離せば、すぐさま考えをまとめなければならないというプレッシャーを感じることなく、人々はアイデアを検証できるようになる。
異なる見解を、意図して奨励しよう。何が欠けているのか、失敗し得るリスクは何か、と問いかけるようにすると、建設的な異論を出すことが、ごく当たり前となり、視野が広くなっていく。
結果だけでなく、そこに至った思考プロセスを整理しよう。決断した理由を明確に説明すれば、チームは、単に方向性を受け入れるのではなく、論理に沿って足並みを揃えることができる。
成功の形を明確に示そう。共通の目標を掲げていれば、達成までの道のりについて意見が異なっていても、足並みが揃う。
意思決定について、オープンな形で再検討しよう。状況の変化に応じて以前の仮説を再検討するようにすれば、アラインメントは固定したものではなく、継続して作り上げていくものだという認識が強くなる。こうしたことを繰り返すことで、意見の一致を強制しなくても、明確さが生まれるだろう。
重大な決断を下した後は、チームに次の2つを問いかけよう。「自分たちは何をするのか?」「なぜそうするのか?」という問いだ。
返ってきた答えに大きなばらつきがある場合は、合意だけができていて足並みが揃っていない可能性がある。チームの面々は、意思決定を受け入れてはいるが、解釈が異なっているわけだ。そうした食い違いはたいてい、実行面での不一致という形で表れてくる。
これに対して、問いかけに対する答えが、行動の面でもその根拠の面でも一致していれば、足並みがさらに揃ったと言えるだろう。方向性だけでなく、その背景にあるロジックについても共通理解が得られたということだ。
調和よりも「共通理解」へ
組織は、調和を追い求めるものだ。調和している方が、効率的だし安心感が得られるからだ。しかし、理解を伴わない調和は、脆く壊れやすい。プレッシャーがかかって食い違いがあらわになると、持ちこたえられない。
合意より明確さに重きを置くリーダーは、適応力があって、疑義を唱え、自信を持って実行できるチームを構築する。たとえ意見の相違があっても、建設的に対処すれば、意思決定を弱めるどころか強めることを理解している。
アラインメントは、摩擦がない状態ではない。「共有された意味」が存在する状態を指す。
そして、リーダーシップの目標とは、全員に合意してもらうことではない。全員に理解してもらうことなのだ。


