2025年、製造業にとってサプライチェーンの安定は、もはや前提条件ではなくなった。株式会社Resilireが実施した調査によれば、従業員500名以上の製造業において、事業に影響が出るレベルの「供給混乱・供給廃止」を経験した企業は過半数にのぼったことがわかった。供給の遅延や停止といった実害があった企業だけでなく、綱渡りの調整を迫られた企業も少なくない。なぜ混乱は防げないのか。
■調査概要
調査名称:製造業におけるサプライチェーン強靭化の取り組みに関する調査
調査方法:インターネット調査(調査協力:株式会社クロス・マーケティング)
調査期間:2025年12月23日(火)~12月26日(金)
調査対象者:従業員500名以上の製造業の「調達/購買/資材」の業務に関する意思決定に関与する役員および管理職層の方
回答者数:479名

リスクは複合化、想定外は日常化
混乱の要因としてもっとも多かったのは品質・コスト問題だったが、それに続いて地政学リスク、自然災害、サプライヤーの倒産リスク、事故などが並んだ。いずれも一定の割合を占めており、特定の一因に収れんする状況ではないことがわかる。

かつては「部品不足」や「物流遅延」といった個別のトラブルとして語られていた問題が、いまは複数の要因が同時に絡み合う複合的なリスクへと変化している。自然災害や紛争、輸出規制、サイバー攻撃など、国境を越えた事象が瞬時に供給網へ波及する時代となったのだ。
2025年にも、半導体の供給制限や出荷停止が報じられ、自動車業界などに影響が及ぶ可能性が指摘された。また、地政学リスクの高まりや貿易規制の変動は、調達に関わるものの見直しを迫る要因となっている。さらに、生産管理システムへのサイバー攻撃によって工場の操業が停止する事例も報じられ、供給網の脆弱性は物理的な物流だけでなく、情報インフラにも広がっている。
最大のネックは「初期の状況把握」
では、混乱が起きた際に何がもっとも難しかったのか。調査で多く挙げられた課題が「サプライヤーとの連絡・連携」、次いで「リスク情報の検知および影響範囲の特定」だった。回答の多くが、情報の集約や共有に関する項目に集中していた。

これは、供給網の可視化が十分でないことを示している。製造業のサプライチェーンは多層構造になっており、一次サプライヤーの先にある二次、三次サプライヤーまで完全に把握することは容易ではない。どこで何が起きているのかを迅速に把握できなければ、自社の生産にどの程度の影響が及ぶのか判断できない。
サプライチェーンは「鎖」だ。一部が切れれば、連鎖的に全体へ波及する。その一方で、その全体像は企業単独では見えにくい。ここに構造的な難しさがある。
変化しつつある調達・購買部門の役割
こうした状況のなか、調達・購買部門において「経営トップから戦略部門として期待が高まっている」と回答した人は半数を超えた。調達・購買部門は、コスト削減を調整する役割はもちろんだが、平時よりリスク管理や他社との関係性の強化など「経営を支える戦略部門」へと位置づけが変化していることがうかがえる。

今回の調査結果について、Resilireの津田裕大CEOは、混乱時の課題の核心は単なる事象の検知ではなく、「判断の根拠となる情報の集約・連携の遅れ」にあると指摘する。一次サプライヤーの先まで含めた情報を平時から把握していれば、有事の際に自社生産への影響を即座に紐づけ、的確な判断が可能になるという。
2025年の混乱は、特別な一年だったのではない。むしろ、サプライチェーンが常に揺らぐ時代に入ったことを示した。供給網の安定は、もはや現場の問題ではなく、経営そのものに直結するテーマとなっている。



