リーダーシップ

2026.03.02 11:18

独自の個性──リーダーシップにとってそれが意味するもの

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ロンドン・ビジネス・スクール 組織行動論名誉教授 ナイジェル・ニコルソン

リーダーシップ開発は、よくある状況を乗り切るためにどの戦略が導きになるのか、経営幹部に多くの一般論を手渡す。もちろん、それ自体は悪くない。だが実務でどれほど機能するのか──そもそも機能するのかどうか──は個人によって異なる。なぜか。生まれつきの体質と心理の両面で、私たちは皆、例外的で、唯一無二で、二度と繰り返されない存在だからだ。より効果的で充実した関係性、チームワーク、コミュニケーションへと向かうには、一人ひとりが自分自身の道を見いださねばならない。組織という宇宙のなかで、自分にとって最良の居場所を見つけるために。独自の個性(Unique Individuality:UI)は、私たち全員にとっての生の事実である。それがリーダーであるあなたにとって何を意味するのかを示そう。

独自の個性の本質

あなたについて逃れられない4つの事実──「独自の個性の4つの法則」がある。

  1. あなたとまったく同じ人間は、この地球上でこれまで一度も生きたことがなく、将来も生きることはない。あなたは、生まれつきの体質として唯一無二であり、あなただけに仕立てられた人間の心身という乗り物を持っている。あなたには独自の個性がある。
  2. あなたは意識という窓を通して、独自の個性の全体のうち一部しか見ていない。残りは視界から隠れているが、あなたという人間の重要な側面は、光の当たる場所へ引き出すことができる。
  3. 他者を完全に知ることはできない。相手の独自の個性は、自分自身のそれ以上に不可知だからだ。私たちはそれぞれ、umwelt(環世界)という私的な世界を携え、不完全なかたちでそこを航行している。同様に、誰もあなたを本当の意味で知ることはできない。
  4. 他者とのつながりは、必要不可欠で、人生を支え、喜びをもたらす事実である。私たちは自らの存在を真に共有することはできないが、並行する体験を持ち、共鳴を感じ、理解し合うことはできる。

「頂点は孤独だ」と言われる。だがこの3つの法則が示すのは、人であること自体が孤独な営みだということだ。幸いにも、私たちは第4の法則によって部分的に救われる。

独自の個性は非常に大きな概念である。私たちは真剣に受け止めるよりも、当たり前のこととして見過ごしがちだ。「人それぞれ」「十人十色」と口にしながら、他者を不器用で生産性のない分類に押し込めてしまう。

あなたはDNAに刻まれた気質と身体的アイデンティティを携えて生まれた。親は生きるための物語や道具を与えるが、子どもの性格もまた親を形づくる。子どもは常に私たちを驚かせる。あなたは経験から学んだが、それを自分のものにするために、独自のやり方でふるいにかけ、形づくった。

リーダーがどんな状況にいるかだけを問うのではなく、その状況がどんなリーダーのもとにあるのかを問うべきだ。

同じ経験にさらされても、2人の人間はそれをそれぞれの方法で処理し、独自の心、記憶、アイデンティティのマトリクスのなかで、その経験に固有の意味を与える。

個性は栄光に値するものだが、同時に恐ろしくもある。独自の個性には暗い側面があり、それは人によって異なる。それを理解すればするほど、私たちはそれを飼いならし、ともに生き、さらには統合することで豊かさを得ることさえできる。これこそが「本物であること(オーセンティシティ)」の真の意味である。

リーダーシップ開発に欠けているもの

リーダーシップ開発の多くは、私たちが訓練によって書き込まれる「白紙」だと想定しすぎている。私は経営幹部が、有用なレシピ、経験則、鼓舞するケーススタディ、見事なアイデアを与えられているのを目にする。そこには知恵も洞察も実用性も満ちている。だがなお、リーダーシップ開発が、負傷者をつぎはぎして常態化したビジネスの容赦ない戦場へ送り返す「野戦病院」にすぎないというリスクは残る。

リーダーを支援できるのは、彼らが独自の個性をもつ個人として誰であるのか、そしてここに至る道筋を理解するところから始めたときだけである。発達を助けるのは、伝記的アプローチだけなのだ。これによってこそ、潜在力を実現できる。

ロンドン・ビジネス・スクールのスローン・フェローと20年にわたり仕事をしてきたなかで、私はこの目的のために「4Dフレームワーク」が動的で、シンプルで、強力なツールであることを見いだした。あらゆるリーダー候補に、次の問いを投げかける。

  • Destiny(宿命):人生を通して変えられない所与の条件とは何か──性格、出生の時と場所、家族の文脈など。
  • Drama(ドラマ):ここに至る道のりを区切った出来事は何であり、それはあなたをどう変えたか。
  • Deliberation(熟慮):どの時点で立ち止まり、考え、決断し、それが人生の方向転換を動かし始めたのか。
  • Development(発達):人生はあなたに何を教えたのか──主要な洞察、信念、目的という観点から。

この出発点から、目的意識を伴った現実主義に基づき、自らの未来の軌跡を描くことが可能になる。

リーダーとしてのあなたにとって、独自の個性が意味すること

私たちの独自の個性という事実を受け入れることは、広範な含意をもつ。重要なものを挙げよう。

  1. リーダーシップとは、人間の努力を調整し、方向づけるプロセスである。リードしようとする個人の数だけ、さまざまなやり方で発揮されうる。優れたやり方もあれば、そうでないものもある。
  2. リードすることは、誰にとっても向いているわけではない。社会や組織には、ほかにも有用な役割が数多く必要だ。創造、助言、仲介、奉仕、さまざまな専門機能などである。
  3. リーダーとして、他者との比較に無益な感情エネルギーを浪費してはならない。ただし、学び、役立つ具体を実践するための比較は別である。
  4. タイプ分けの言語を信じすぎてはならない。人をラベル化するカテゴリーは、単純化し、歪め、非人間化する。唯一無二で多面体であるという贈り物を尊重すべきだ。
  5. インポスター症候群は非常に広く存在するが、多くは隠されている。他者(そして自分自身)が本来の自分でいられるよう手を差し伸べよ。
  6. 心の絡まりが大きい人ほど、オーセンティシティは難しい。違い、風変わりさ、個人的困難についての率直さへの寛容を育てよ。
  7. あなたのリーダーシップの物語は唯一無二である。それを語れ。人々にも、批判ではなく理解の空気のなかで、自分の物語を共有してもらえ。
  8. あらゆる人生の物語は、移行によって区切られた章から成る──生物学的、社会的、職業的な移行である。次の章が過去の章と同じようになると期待してはならない。私たちは未来へ後ずさりしながら歩き、見えるのは歩んできた道だけだ。
  9. あらゆる関係性は唯一無二であり、それ自体の4本の足で立っている。上司と部下の関係は、それぞれ相互の発見と適応の関係であるべきだ。
  10. どれほど強い相互作用の後であっても、あなたが人生で最も重要な会話を交わす相手は自分自身であることを忘れてはならない。
  11. 安全と資源という本質的欲求を超えて、私たちには実存的欲求がある。Savour(味わう)──経験の流れを楽しむこと。Signify(意味する)──自分が違いを生んでいると知ること。Seen(見られる)──唯一の人として承認されること。
  12. 文化は強力である。人々と共創し、誰もが所属し、役に立っていると感じられる価値観を体現するものにせよ。
  13. AIを恐れてはならない──AIは模倣しかできない。あなたの独自の個性は再現不可能である。それをもって最終判断を下せ。

独自性の視点は、現代の呪いから私たちを解放する。すなわち、無意味な社会的比較と偽りの集団アイデンティティがもたらす妄想である。私たちには互いの独自の個性を祝福し、活用する権利があるだけでなく、それを自由に、そして安全に花開かせられる文脈をつくる道徳的義務がある。

ナイジェル・ニコルソンはロンドン・ビジネス・スクールの組織行動論名誉教授である。主な研究関心は、ファミリービジネスの心理学、伝記とリーダーシップ、金融意思決定、マネジメントにおけるピープルスキルである。これらの領域に加え、イノベーション、組織変革、経営幹部のキャリア開発などのテーマでも、20冊以上の著書と200本の論文を発表している。

最新刊はUnique You: How Individuality Works and Why it Mattersである。

forbes.com 原文

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