私はこの10年、SaaSプロダクトを作り続けてきた。その中で学んだことが1つある。本物のテクノロジーは本物の課題を解決するということだ。AIはそれを見事にやってのける。年を追うごとに、手作業の仕事をまたひとかたまり飲み込んでいく。もしAIにLinkedInのプロフィールがあったなら、「3億件のタスクを自動化」と書き込むだろう。そして今回に限っては、その自慢も正確かもしれない。
一方の暗号資産は、より騒々しく、劇的な道のりを歩んできた。そして誰に聞くかによって、「金融の未来」と呼ばれることもあれば、「世界でもっとも熱心にマーケティングされるスプレッドシート」と呼ばれることも多い。
取締役会で泣きそうになるのを必死にこらえる創業者のように、いったん落ち着いて状況を見てみよう。
AIは「価値ある技術」が実際にスケールする仕方を変えている
AIは、電気やインターネット、クラウドコンピューティングがそうだったように、静かに、そして容赦なく成長している。Stanford AI Indexによれば、AIへの世界の民間投資は2022年に900億ドルを超えた。だが、マッキンゼーの2025年データでは、企業の78%がワークフローでAIを活用している一方で、全社規模での導入を達成している企業は少数派にとどまる。つまり、まだ引き出されていない効率化の余地が大いに残っているということだ。
知識人はしばしば、こうした技術の成長を、歴史の流れを変えるほどの実質的な生産性ブームと結び付ける。産業革命が機械への移行によって効率性を高めたように、AIは摩擦を減らし調整コストを削ることで、企業をよりスリムに、より速くしている。
すべてのテクノロジーの波が成果をもたらすわけではない
暗号資産は分散型革命を約束した。ところが実際にもたらしたのは、変動性、スキャンダル、ハッキング、そして健全な市場が必要とする以上のYouTube解説動画に満ちた10年だった。15年が経っても、暗号資産はAIが日々生み出しているような、信頼できて再現性のある価値を示せていない。
ステーブルコインを例に取ろう。理論上は、変動の激しいエコシステムに安定性をもたらすことが目的とされる。だが実際には、暗号資産市場の流動性の多くが、裏付けや透明性、ガバナンスをリアルタイムで検証することが難しい手段に依存している。
取引量の相当部分がこうした資産を通じて流れ、伝統的な金融システムで期待される継続的な開示ではなく、不透明な「保証」によって支えられていることも多い。もしAIが同様の前提で動くなら、デモ以上の用途を任せることはできないだろう。
そして暗号資産の投機は脚注ではない。主役である。ビットコインの2017年の上昇の半分を単一の主体が押し上げたことを示したテキサス大学オースティン校による2017年の学術研究は、キンドルバーガーなら丸々1章を割いて書きそうな話だ。
暗号資産は、熱狂(マニア)の歴史的パターンに当てはまる。大きな約束、素早い金儲け、インサイダー主導の流動性、そして「誰かがより高値で自分の資産を買ってくれる」という信念である。
長く続く技術と、そうでない技術を分けるもの
数十年にわたり存続するあらゆるシステムでは、常に真の価値創造が中心にある。企業は課題を解決するから成長する。経済は、人々が実際に必要とするものを生産するから繁栄する。実体的な価値が下支えしないまま何かが成長すると、いずれ崩壊する。
しかし暗号資産は、主としてマーケティングと誇大宣伝によって成長してきた。誇大宣伝が効くのは、人間が常に合理的とは限らないからだ。単純な話でそれは明らかになる。
ある村で、誰かが「魔法の種」を売り始めたと想像してほしい。それが実際に何をするのか誰も知らない。だが初期の購入者がこう言う。「見ろ。10枚のコインで1つ買ったら、いまは20枚で買いたい人がいる」
やがて皆が魔法の種を買い始める。「みんなが買っている」からだ。誰も問わない。この種は何に育つのか。実際の用途は何か。最終的に、ある村人がその疑問を口にした瞬間、人々は一斉にパニックに陥る。価格は一夜にして崩壊する。
これはチューリップ・バブルの話である。今日の暗号資産への熱狂の多くも同じ仕組みで動いている。暗号資産に深く投資する人々と話すと、会話はほとんどの場合こう締めくくられる。「それが何だ? 私の金は毎年倍になっている。それが重要だ」
残念ながら、この考え方は、知的に設計された未来のエコシステムでは生き残れないだろう。というのも、多くの暗号資産トークンは、本源的(内在的)な経済価値と結び付いていないからだ。これを簡単な例で理解しよう。
企業の株式を買えば、事業の一部を所有することになる。事業が成長すれば配当を得るか、保有株式の価値が上がる。
暗号資産トークンを買うと、多くの場合あなたが所有するのはトークンである。その価値が上がるのは、より多くの人がそれを欲しいと決めた場合に限られる。AIの本源的価値は、時間短縮やコスト削減といった要素にある。
結局、誰かが必ず問う。「これは一体、背後にどんな本当の本源的価値があるのか?」AIファーストの未来では、この問いがより早い段階で投げかけられると私は考えている。
限界を認識することの重要性
暗号資産の限界は、現実のプロダクトで実際に使おうとした瞬間にすぐ露呈すると私は思う。ユーザーがただ動いてほしいだけの場所に、複雑さを上乗せしてしまう。規制当局は、どの枠に当てはめればよいのか判断できない。「信頼の最小化」を掲げて構築されたシステムが、結局はその場でもっとも心もとないステーブルコインに依存することになる。
分散化は約束である。だが私が見る限り、権力の多くは依然として少数のクジラと取引所の周りを回っている。
そして最大の成功例であるビットコインでさえ、多くの国家(有料記事)を上回る電力を消費する。申し訳ないが、それはイノベーションではない。高くつく趣味である。
一方、AIは大規模言語モデル、創薬、適応型ロジスティクス、ワークフロー自動化をもたらす。ジェットエンジンと爆竹の違いだ。どちらも音は出るが、どこかへ連れて行ってくれるのは片方だけである。
誇大宣伝のサイクルは終わる。複利で積み上がる価値は終わらない
私は「暗号資産は全面的に禁止すべきだ」という陣営でもなければ、「暗号資産が銀行に取って代わる」という陣営でもない。私は断固として「暗号資産は、本来あるべき規模まで縮小する」という陣営にいる。ドットコム・バブル崩壊で起きたことと似ている。
事業者として、誇大宣伝に基づいて陣営を選ぶわけにはいかない。そうではなく、摩擦を減らし、スケールし、顧客の生活を楽にするものを選ぶ。AIはそれらすべてのテストを優秀な成績で通過する。暗号資産は、多くの場合その逆である。
測定可能で、複利で積み上がる恩恵によってAIが見出しを支配する未来において、トークンは真に価値を付加する場所では生き残り、そうでない場所では消えていくだろう。



