リーダーシップの課題はしばしば、パフォーマンスの問題として扱われる。学ぶべきスキルがもっとある、投入すべき戦術がもっとある、より緊急性を高めるべきだ──という具合だ。だがミュリエル・ウィルキンスによれば、多くのリーダーシップの苦戦は能力とはあまり関係がなく、むしろ「信念」に大きく左右されている。
ウィルキンスは、経営幹部のアドバイザーおよびエグゼクティブコーチとして引く手あまたの存在だ。20年にわたり、シニアリーダーたちが複雑な状況を乗り越え、影響力を拡大し、最高レベルのリーダーシップが求められる役割へと成長する支援を行ってきた。Harvard Business ReviewのポッドキャストCoaching Real Leadersのホストも務め、Appleのマネジメント系ポッドキャストで常に上位にランクインしている。著書にLeadership Unblocked: Break Through the Beliefs That Limit Your Potentialがある。彼女の仕事が焦点を当てるのは、リーダーが「何をするか」だけではない。思考のあり方を静かに形づくるものが何か、である。
ウィルキンスが語る「ブロックされたリーダーシップ」とは、失敗や無能さを指すものではない。もっと一般的で、もっと人間的なものを指している。
「私が『ブロックされたリーダーシップ』について考えたり話したりするとき、実際に言及しているのは、リーダーとして、あるいは個人として、いま経験していることや得られている結果と、望む成果との間に、何らかの不協和やギャップがあると感じる瞬間のことだ。ギャップや不協和があるなら、それは、もしかするとあなたがブロックされているのかもしれない、という合図であるべきだ」
そのブロックは、目に見える場合もあれば、完全に隠れている場合もある。リーダーはしばしば行動上の盲点に意識を向けるが、ウィルキンスが指摘するのは、そのさらに下にあるものだ。
「ブロッカーについて考えるとき、それは行動にとどまらない。行動の背後にある信念であり、それはさらに見えにくい場合がある。人は、自分があるやり方で動いていて、それが自分の行動を規定し、最終的に得られる結果を規定していることに、気づいてすらいない」
長年にわたりシニアリーダーをコーチングするなかで、ウィルキンスは同じような制限的信念が繰り返し表面化するのを見てきた。変動が大きく不確実な環境では、とりわけ2つが頻繁に現れるという。
「最も一般的なブロッカーの1つは、『自分がたいていのことに関与しなければならない』という思い込みだ。これにより、リーダーは規模の大きいリードができなくなる。身をかがめて細部に入り込み、枝葉末節に埋もれてしまうからだ」
もう1つは、文脈を欠いた緊急性である。「リーダーの邪魔になるブロッカーの1つは、『いま終わらせなければならない』という思い込みだ。状況的に、望むタイミングどおりに物事を完了できないかもしれないことが示唆されており、多くの人がフラストレーションを感じている」
これらの信念をとりわけ厄介にするのは、リーダーが自分の行動について自分に語るストーリーである。ウィルキンスは、リスクは出来事そのものではなく、それに付随する物語にあると警告する。
「危険な領域に入り込むのは、自分にとって良くない物語を作り始めるときだ。『翌日に回したのは、自分に能力がないからだ』という物語なら、自己疑念の領域に入ってしまう。目標が自信を持つことなら、それは助けにならないかもしれない」
同じパターンは、リーダーが無意識の偏見と向き合うときにも現れる。ウィルキンスはまず、現実的な見方から始める。
「私たちは皆、何らかの形で無意識の偏見を持っていると思う。『いや、私は無意識の偏見はない』と言う人がいたら、私はむしろ、そこには確かに何かしらの無意識があるのだろうと確信する」
必要な取り組みは好奇心から始まる、と彼女は言う。自分を知ろうとする意思を固め、自分の内なる物語に疑問を投げかけることを学ばなければならない。そうして初めて、致命的になり得る偏見を特定し、向き合うことができる。
彼女のコーチング手法の重要な部分は、リーダーがしばしば忘れていることを思い出させる点にある。
「私は、彼らをただ人間として捉え直すようにしている。彼らは、自分が人間ではないかのような思い込みを飲み込んでしまう。ただ、リーダーという器の中でそれが起きているだけだ」
そこから先の取り組みは、きわめて実践的になる。「スキルがないことが問題ではない。24時間365日、自由に使える組織システムの第1番、つまり自分自身に対して、そのスキルを適用していないことが問題なのだ」
ウィルキンスが教える最も強力な戦略の1つが、リフレーミング(捉え直し)である。
「自分を妨げているかもしれない信念を見て、『よし、これは今の自分には役に立たない』と言える必要がある。『自分が望む結果を得るために取るべき行動に、より合致する前提は何だろう』と自分に問いかけてもいい」
そのリフレーミングは、カルチャー変革にも不可欠である。「リーダーは、自分自身を変革できる力を超えて、組織を変革することはできない。まずは自分から始めよ」
.彼女は、見えないものを見えるようにすることを促す。「暗黙のものを明示し、内面のものを、テーブルの上に置く。問うべき問いを知っていればいい。『私たちはいま何を前提にしているのか』そして『その前提は、私たちが望むと言っているものへと導く前提なのか』だ」
同じ原理はマイクロマネジメントにも当てはまる。ウィルキンスは、この行動が誤解されがちだと見る。
「マイクロマネジメントは行動である。私たちが何をするかは、何を考えているかによって動かされる。そして私たちの思考は、多くの場合、別の目的に資する。安心感や価値、つながりを感じられるようにしてくれるのだ」
その根底にある信念に対処しなければ、戦術は定着しない。「人が本当にエンジンルームの中に入り、背後にある『なぜ』を理解しない限り、持続可能な形では機能しない」
最終的に、ウィルキンスがシニアリーダーに最もよく見かける誤解の1つは、リーダーシップは時間とともに楽になるはずだ、という信念である。
「彼らは、これほど難しいはずがないと思っている。規模が大きくなるにつれ、より複雑になる。そのとき本当に求められるのは、緊張をなくすことではなく、緊張を抱え続けることだ」
その現実を受け入れるリーダーは、仕事への抵抗をやめるという。「それを仕事の一部として捉えるようになる。『よし、かかってこい。それが自分の役割だから』という感じだ」
ウィルキンスの見立てでは、リーダーシップがブロックされるのは、能力が欠けているからではない。信念が検討されないままになっているからである。そして、自分の行動を静かに形づくっている前提に疑問を投げかける意思を持つとき、リーダーはリードの仕方を変えるだけではない。可能性そのものを変えていく。



