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2026.03.02 09:30

石油の陰に隠れた危機──ホルムズ海峡と天然ガス・窒素肥料、世界の食料リスク

「ホルムズ海峡」のインフォグラフィック。中東の石油・LNGは、アラビア海とインド洋を経由して世界市場に運ばれている(Photo by Murat Usubali/Anadolu via Getty Images)

タイミングがリスクを増幅する理由

農業は生物学と天候に支配されている。

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北半球では、春の作付けに先立って肥料調達が加速する。その期間中に出荷が遅延すれば、農業生産者は困難な選択を迫られる。窒素の散布量を下げるか、作物を変更するか、より高いコストを受け入れるかだ。

窒素の散布量の減少は、一般に収量の低下につながる。散布量をわずかに減らすだけでも、世界のカロリー供給を支えるトウモロコシ、小麦、コメといった主食の生産量は減少する可能性がある。

世界は2022年、ロシアによるウクライナ侵攻後にこの力学の一端を目の当たりにした。肥料価格が急騰し、複数の地域で農業生産者が使用量を削減した。一部の地域では収穫量は堅調だったが、この出来事は食料システムが肥料の入手可能性と価格にいかに敏感であるかを浮き彫りにした。

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湾岸地域からの年間1000万〜2000万トンの輸出能力を代替することは容易ではない。新たなアンモニアプラントには、許認可と建設に何年も要する。域外の既存施設は通常、ほぼフル稼働に近い状態で運転されている。作付けシーズンの真っ最中に、追加供給を即座に増やすことは不可能だ。

世界規模で深く浸透する依存

湾岸地域の窒素への依存は広範囲に及んでいる。

インドは、国内の尿素生産を支えるために輸入LNGに大きく依存しており、その多くはカタールから来る。ガスの流れが途絶すれば、作付けサイクルが近づくまさにその時期に、インドの肥料生産は逼迫する。

世界最大級の農産物輸出国であるブラジルは、中東産の尿素を大量に輸入している。マットグロッソ州などの地域における大豆・トウモロコシ生産は、安定した肥料供給に依存している。供給の遮断が長期化すれば、世界の穀物需給を急速に悪化させるだろう。

米国は主要な肥料生産国だが、影響を免れるわけではない。米国の尿素輸入のかなりの部分がホルムズ海峡を通過している。米国内の肥料生産者が、途絶した輸入を補うために数百万トン規模の新規供給を急速に追加することはできない。

これは地域的な供給問題ではない。世界の農業システムに埋め込まれた、構造的な脆弱性である。

見過ごされている波及経路

石油価格の急騰は即座に目に見える形で現れる。ガソリン価格はリアルタイムで調整され、金融市場は数分以内に反応する。

一方、肥料の混乱はより緩やかだが、潜在的にはより深刻な影響をもたらすタイムラインで進行する。今日の窒素供給減は、数カ月後の作物収量の低下へとつながりうる。それが最終的に在庫の逼迫、飼料コストの上昇、食料価格の高騰として表面化する。

現代農業は本質的にエネルギー変換システムである。天然ガスがアンモニアになり、アンモニアが窒素肥料になり、肥料がカロリーになる。

もしホルムズ海峡が持続的な混乱に直面した場合、注視すべき最重要価格はブレント原油ではないかもしれない。注視すべきは、尿素の指標価格とアンモニアの輸出フローとなりうる。

エネルギー安全保障と食料安全保障は密接に絡み合っている。単一のチョークポイントが、石油と窒素肥料の貿易の大きな割合を担うとき、その影響は燃料市場をはるかに超えて広がる。

さまざまなニュースはタンカーと原油価格に焦点を当てるかもしれない。だが、より長く尾を引く物語は、食料供給の側で展開する可能性がある。

forbes.com 原文

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