米国のドナルド・トランプ大統領は、インドがロシア産原油の輸入を停止すれば、同国に対する関税を見直すと約束した。ロシア産原油の世界第2位の輸入国であるインドを標的にすれば、ウクライナ侵攻を続けるロシア政府の財政上の弱点を突くことができる。米国が仲介するロシアとウクライナの和平交渉が停滞する中、この影響力は重大な結果をもたらす可能性がある一方、米政府の一部では、インドへの圧力を強めれば、スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相ら同国政府で「戦略的自律性」を主張する勢力が強化されることを懸念する向きもある。
同外相は先月中旬にドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で記者の取材に応じた際、インドがロシア産原油の輸入を削減しているかとの問いに対し、明確な回答を避けた。一方、インド国民会議派が主導する野党がナレンドラ・モディ政権を「圧力に屈した」と非難したことで、同国では政治的な論争が勃発した。米政府が手札を過度に使い過ぎれば、インドの支援を得て、東南アジアや中東で中国を封じ込めるための将来の協力の道筋を狭める恐れがある。
米露の間で揺れるインド
米ホワイトハウスは先月上旬、インドとの貿易協定を発表した。これにより、インドは日本と並び、米国の主要なアジアの同盟国となる可能性がある。トランプ大統領は昨年4月2日に「解放記念日」を宣言した際、相互関税引き上げの一環としてインドに50%の関税を課した。トランプ政権は後に、同国がロシア産原油の輸入を継続しているとして、関税率をさらに引き上げた。
インドはかつて、ソビエト連邦によるハンガリーやチェコスロバキア(現在のチェコおよびスロバキア)への弾圧を見過ごしてきたように、ロシアのウクライナ侵攻にも目をつぶっている。インドはロシアから割引価格で原油を購入することで利益を得たが、同時にロシアに戦争資金を提供することにもなった。インド政府の観点からは、中国とロシアの「限界なき友好」を背景に、中国に対抗する戦略的生命線を構築する上でも有益だった。
インドによるロシア産原油の輸入を阻止するため、米国のジョー・バイデン前大統領は口頭での圧力に頼ったが、効果はなかった。モディ首相は丁寧に耳を傾けたが、同大統領の要請を受け入れることはなかった。一方、トランプ大統領は優位に立つ方法を見出した。インドは米国との貿易に深く依存している。同大統領が設定した50%の関税率は、インド政府も目をそらすことはできなかった。これほど高い関税率では、インドの輸出品は中国やベトナムの製品に対する競争力を失い、ダイヤモンドや宝石といった高付加価値製品が脅威にさらされることになるからだ。
インドには、最大の輸出先である米国を失う恐れがあった。この圧力により、インド政府は従来からの保護主義的な貿易姿勢を見直すだけでなく、ロシアとのエネルギー協定についても再考を迫られた。



