アジア

2026.03.03 08:30

インドのロシア産原油輸入量が激減 米国やベネズエラからの調達が拡大

米首都ワシントンのホワイトハウスで会談する同国のドナルド・トランプ米大統領(右)とインドのナレンドラ・モディ首相。2025年2月13日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

インドの貿易に現れ始めた変化

モディ首相がロシア産原油の輸入を完全に停止する意向かどうか憶測が飛び交う中、貿易の流れには既に具体的な変化が表れている。トランプ政権がロシアの大手石油企業ロスネフチとルクオイルに科した制裁は、インドの計算を変え始めた。同国の昨年12月のロシア産原油の輸入量は前月の日量190万バレルから激減し、同80万バレルにとどまった。さらに、当初インド向けだった少なくとも5つの貨物が中国行きに振り替えられた。

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インドの製油所へのロシア産原油の到着量は1月に減少した一方で、ロシア以外からの原油の流入量は増加した。インドの大手石油精製会社マンガロール石油精製化学は同月中旬、ロシアからの原油の輸入を停止し、ベネズエラからの調達の可能性を探り始めた。インドの石油精製部門の中核を担うインディアン・オイル、バーラト・ペトロリアム、リライアンス・インダストリーズも、3月と4月のロシア産原油の積荷供給に関するトレーダーからの提案を受け付けなくなった。

インドは先月、貿易再編の一環として、米国産エネルギー資源の輸入拡大を発表した。同国の外務省がエネルギー資源調達の多様化を強調する中、石油精製業者は米国だけでなくベネズエラにも目を向けている。先月中旬までに、インド国営インディアン・オイルとヒンドゥスタン・ペトロリアムは合わせて200万バレルのベネズエラ産原油を輸入した。一方、リライアンス・インダストリーズは単独で200万バレルの原油をベネズエラから調達した。

それでもなお、インド政府は歴史的な友好国であるロシアとの関係を完全に断ち切ることは慎重に避けている。同政府は自国で開催された「人工知能(AI)インパクトサミット」にロシアを招待することで、両国間の戦略的対話の継続性を示した。ロシアは過去4年間でデジタル開発で後れを取っており、AI分野で実際に提供できるものはほとんどない。

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ロシア政府の頭痛の種

インドがロシア産原油の輸入を完全に停止する可能性は依然として低い。とはいえ、輸入量の持続的な削減も、ロシアにとっては痛手となる。インドが拒否した原油の大部分は、既にロシアからの海上原油輸入を拡大している中国が吸収する可能性が高い。中国の昨年12月のロシア産原油輸入量は日量150万バレルに達し、過去11カ月間の平均値である同120万バレルを上回った。米国の圧力により中国がベネズエラに対する姿勢の見直しを迫られた場合、ロシア産原油輸入量はさらに増加する可能性がある。

だが、地政学的に見ると、ロシアはこれを快く思っていない。欧米市場を失ったロシアは、中国への非対称的な依存にさらに深く陥る恐れがあるためだ。買い手を失うことで、ロシアは中国の価格決定力と戦略的軌道に一層強く縛られることになる。ロシアの対応の余地は限られている。

同国の大手石油企業ロスネフチ、スルグトネフチェガス、ガスプロムネフチ、ルクオイルの選択肢は急速に尽きようとしている。ジョージアやインドネシアといった小規模市場には制約がある。両国とも欧州連合(EU)からの監視が強化されており、インドの輸入量を相殺できる輸入能力をいずれも有していない。例えば、インドネシアの原油輸入量はこれまで日量40万バレルを超えたことがない。選択肢が狭まり、国際社会から孤立する中、ロシアはスーダンや南スーダン、コンゴ、エチオピア、タンザニアといったアフリカ諸国に目を向け、2030年を目標にこれらの国々への輸出拡大を図ろうとしている。しかし、これらの市場はごく小規模であり、インドの消費水準を代替することはできない。

インドとロシアの関係が損なわれるにつれ、ロシアの経済的な立場は弱まり、中国への依存度が高まっている。皮肉なことに、これはトランプ政権が掲げる「ロシアを中国から切り離す」という目標に逆行している。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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