ロシアによるウクライナ侵攻は、交戦国いずれにとっても現実的に戦闘を継続することができる限界に達している。主要当事者である米国、ロシア、ウクライナ、欧州は、紛争の根底にある地政学的現実により、最終的には交渉による解決を迫られるであろうことをかねてより理解していた。問題はもはや外交が主導権を握るかどうかではなく、関係各国が国内の制約と要請を調整し、いつ合意を成立させられるかだ。しかし、戦闘が停止したとしても、戦争によって露呈し、その結末によって変化するであろう、欧州の長期的な安全保障体制という根深い問題は未解決のまま残るだろう。
ウクライナ侵攻を巡る交渉がどこに向かっているのかを理解するには、まず戦場の状況を把握する必要がある。4年に及ぶ戦闘の末、ロシア軍が占領できたウクライナの領土はわずか20%程度に過ぎない。この限界はロシア軍の構造的弱点を露呈した。ウクライナ侵攻によって、ロシアはもはやソビエト時代の超大国ではなく、著しく衰退した国家であるという根本的な点が浮き彫りになった。
米国の観点からすれば、ロシアはもはや直接的な脅威ではない。さらに重要なのは、ロシアが欧州に及ぼすいかなる脅威に対しても、米国の同盟国が自力で対処できる能力を高めているということだ。ユーラシア大陸の勢力均衡が欧州側に有利に移行しているため、米国は第二次世界大戦以来担ってきた欧州の主要な盾としての役割を果たす必要がなくなった。これにより、米国は欧州で支援的な役割に後退し、長期的な戦略的利益にとってより重要な西太平洋をはじめとする海洋空間に注意と資源を再配分する余地が生まれた。
この転換は、米国のドナルド・トランプ政権が構想から実践に移そうとしている、新たな地政学戦略と一致している。この新たな枠組みの下、米国は同盟国が自国の安全保障の主たる責任を負うことを期待している。米国は自らを最前線の執行者ではなく、再編成された世界秩序の設計者かつ監督者として位置付けている。しかし、そのような引き継ぎが可能になる前に、米国はまずウクライナと中東での戦争を終結させ、昨年5月にインドとパキスタンの間で短期間ながら不安定化をもたらした87時間の衝突のような新たな紛争の勃発を防がなければならない。



