欧州

2026.03.02 07:00

NATOとEUに求められる戦略転換 米国が欧州防衛から手を引く中

イタリア南部シチリア島で実施された北大西洋条約機構(NATO)主催の軍事演習。2026年2月23日撮影(Baris Seckin/Anadolu via Getty Images)

ドイツ、フランス、イタリアのEU主要3カ国は影響力を共有しつつも、戦略的優先事項や能力、地政学的展望が大きく異なっており、根本的に異なる国家の軌跡と脅威認識を反映している。5年前にEUを離脱した英国は、米国と大陸欧州との間で戦略的な均衡を図り続けている。英国のEU離脱(ブレグジット)により、フランスはEU加盟国の中で唯一の核保有国となった。一方、欧州最大の経済大国であるドイツは歴史的な軍の近代化を進めている。軍事予算を増額し、あらゆる領域で軍隊を近代化するなど、同国はフリードリヒ・メルツ首相の指揮下で自国軍を欧州の安全保障の中心的支柱として位置付けている。

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ドイツがリトアニアに機械化歩兵や装甲車両、防空部隊を含む旅団規模の部隊を派遣したことは、ドイツにとって第二次世界大戦後初の恒久的な海外軍事駐留となる。この動きはドイツ政府の軍事体制の歴史的な再編を意味し、NATO東側の最前線の責任を担う意思を示している。他方で、こうした動きは深い歴史的不安をよみがえらせ、憲法上の規範に挑戦し、積極的なドイツ軍に対する市民の寛容の限界を試すものでもある。この展開は、ドイツが歩まなければならない戦略的な綱渡りを浮き彫りにしている。すなわち、ロシアに対する確実な抑止力を示しつつ、ドイツの支配に対する周辺諸国の根強い懸念に対処しなければならないことだ。

米国が戦略的縮小の姿勢を示す中、欧州諸国は自国の国益を守るため、単独での安全保障への取り組みを追求するようになっている。この反応は当然だ。なぜなら、真に集団的な枠組みを構築するにはNATOとEUの双方を大幅に改革する必要があるが、それよりも単独で行動する方がはるかに容易だからだ。さらに重要なのは、こうした各国の単独の取り組みが、ロシアを抑止できる欧州の協調的な防衛体制を損なう可能性があることだ。結局のところ、争いが激化する環境で、欧州が確実な強さと安定性を示そうとするならば、こうした一方的な動きを一貫した集団安全保障体制へと統合する必要がある。

トランプ政権は、欧州の同盟国を、自国に対する責任を二次的なものから一次的なものへと移行させる新たな安全保障体制を築くための慎重な作業に巻き込む必要があるだろう。米国は単に後退するわけにはいかない。この役割の転換が実際に何を意味するのか、すなわち指揮系統や部隊の投入、情報共有、迅速な対応の仕組みを明確に定義しなければならない。米国の任務は、同盟国がより大きな作戦上の自主性を持つことを認めながら、指導、監督、調整することだ。成功の鍵は、概念の転換を、欧州の信頼性と大西洋両岸の継続的な結束の双方を保証する具体的かつ実行可能な取り決めに落とし込むことができるかどうかに懸かっている。

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forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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